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イチジ九

すべからくどうしようもない日常のあれこれ。 ネタバレ盛り沢山ですので注意!

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書けば出るっていうので【じじい×女審神者】

個性豊か(表現をすごくポジティブに表現)な刀たちとの暮らしは、それなりに順応してきたと思っていた。
 新しい刀が加わるたび、四苦八苦しつつも何とか今日までやってこれたし、困ったときは清光や薬研や光忠がさり気なくサポートしてくれていた――けれど。
(……どうしよう)
 新しくやってきた三日月宗近という刀に対しては、どう接していいのかわからずに頭を抱えていた。しかもよりにもよって頼りになる薬研と光忠は遠征中で、清光も出陣中だ。ついさきほど送り出したところなので、三人とも早々帰って来ないだろう。
(こ、困った)
 縁側で絶賛日向ぼっこ中の三日月の背中を見やりつつ、わたしは頭を抱える。どうしよう。仕事のためにと歴史と刀たちのことを勉強していたからこそ、あの刀がとんでもないレア物なのがわかっているだけにどうしよう!どう扱うのが正しいのかわからない!
「主よ」
「は、はい!」
 不意打ちで声を掛けられてしまい、わたしはまさに飛び跳ねて返事を返す。というか、わたしがここにいることバレてた!?
「な、なん、なんでしょう?」
「そんなに身構えることもなかろう。俺の主なのだし」
「はあ…」
 こちらを見つつ、三日月はのんびりとした口調で言う。そんな彼に対して、わたしは曖昧な返事を返してみれば、にこにこと機嫌良さそうな三日月が「来い来い」とばかりに手招きをしてきた。特に逆らう理由もないけれど、わたしは数秒戸惑ってから、意を決して彼の傍に歩み寄る。と、今度はぽんぽんと自分隣へ座るように畳を叩いた。
「少し話でもしないか? 皆は今、出払っているのだろう?」
「ま、まあ、そう、です」
 促されるままに三日月の隣に腰を下ろして、けれど彼の顔を見ることができずに目の間に広がる庭へと視線を向ける。天気の良い日の縁側はとても気持ちが良くて、いつもなら短刀の子たちと昼寝をすることもあるというのに、今日はとてもじゃないがそんな気分になれるはずもない。
 どきどきどきどきと無駄に速まる心臓の音が耳にうるさくて、話をしようにも考えが全く浮かばない。というか、話をする内容が浮かばない。
「主よ」
「は、はィ!」
 声が裏返ったかのような素っ頓狂な返事をすれば、くすりと隣で三日月が笑った。その笑い声につられて彼の方を見やると、やはり目を細めて楽しそうに笑っている。その表情というか、佇まいに身体中の温度が一気に上がっていくのがわかる。人の形になった刀たちは皆、どこか浮世離れしたきれいさがあったけれど、その中でもこの刀は段違いだと痛感する。さすが天下五剣と内心で呻いくと、ぽんと頭の上に手が置かれた。その手が三日月の手だということを理解するのに数秒掛かって、けれど認識したあとはぎしりと身体が固まって動けなくなった。
「今日からよろしくな、俺の主」
 低く、囁くような声がさらに体温を高めていくのがわかって、このままわたしは溶けて消えてしまうんじゃないかと思った。
 遠くで誰かの「ただいま」という声が聞こえた気がしたけれど、わたしはその場から動く気力を取り戻せずにただ三日月に頭を撫でられ続けるのであった。


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まだじじいはうちに来てません。

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