微妙に間が空いてしまったテルプラスはこれで終わりです!
あと微妙ないかがわしさがすぐさま始まるので畳みます!ので!苦手な方は回れ右してください!!
は、と瑛が息を吐くと、唇がより深く重ねられた。むしろ重ねるというより食べられているような感覚に近い。何度かキスはしてきたけれど、こうした荒々しいキスをされたことがないので、どうしていいかわからない。結果、流されるままに唇を食べられ続けていると、ぬるんと舌が差しこまれたところで、びくっ! と身体を跳ねさせた。
「んっ」
咄嗟に喉の奥が閉まって、くぐもった声が漏れる。その間に相手の舌はあかりの口咥内へと侵入を続け、奥に逃げ込もうしていたこちらの舌に接触を試みてきた。舌先が突かれて、どうしたらいいかわからない。すると舌裏を舐められてしまい、もう一度身体を跳ねさせた。
「は、ふ」
キスの合間にどうにか呼吸を整えようとするも、つと、瑛の手が浴衣の上から自身の胸に置かれたのがわかった。
意図的に置かれているその手の意味に、思わず息を止める。
「……」
「……」
お互いに言うべき言葉が見つからず、ただ沈黙だけがあった。置かれた手は、数秒そのままの状態で制止する。けれど、あかりの反応を伺うように、ぎこちなく瑛の手はあかりの胸の上を撫で始めた。
ゆるゆると往復する手は、乳房の膨らみを確かめるようにゆっくりと指を沈める。瑛はその動作を数回繰り返したあと、今度は手のひらを使って押し揉むように胸を揺すってきた。すると当然彼の手の動きに応じて胸は形を変えるのだが、自分で触ったときや、女友達に冗談や冷やかしで触られたときとは違う感覚にどんな反応をしていいのか困惑してしまう。決して気持ちいいわけではなく、率直に例えるならば「変な感じ」だ。自分以外の人間がこんなにもまじまじと真剣に胸に触れているというのは、ひどく現実離れしてるような、そんな感じ。
けれど悠長に構えていたあかりだったけれども、瑛の手が浴衣の合わせ目にするりと入ってきたときには、思わず身を起こしそうになってしまった。
「て、てる、くん」
「なに」
「…えっと、…ええと」
咄嗟に制止するように名前を呼んでしまったものの、それ以上続けられずに結局押し黙る。数秒の沈黙をのあと、触るぞ、と瑛は宣告してきた。
「ん…」
いつもより少し熱い彼の手が、あかりの素肌に直接触れる。しかし浴衣の下に着ていたブラジャーという防御を前にして、困ったように動きが止まった。カップの隙間へ侵入を試みるものの、けれどすぐに行き詰って撤退する。そうして今度はアンダーワイヤーをなぞるように辿ってみるも、布団というガードに阻まれて再び動きを止めた。
「……ちょっと、背中あげて」
「は、はい」
妙に神妙な面持ちで言われてしまい、あかりは言われた通りに背中を浮かせた。たどたどしい手つきが背中にまわれば、多少の手間取りを経てホックが外される。途端下着の締め付けがなくなり、胸元に緩みが生じた。瑛はそのままあかりの浴衣を肌蹴させれば、開けた胸元に一瞬だけ動きを止めた。
しんと静まり返った部屋に、瑛の喉が鳴る音が、いやに耳につく。ふに、と直接胸が掴まれると、先ほどと同じように揉まれ始めた。だが、今度はただ揉むだけではなく、露わになった彼女の胸の突起をきゅっと摘まんできた。
「ぁッ」
思わず、小さな声が上がる。
瑛はそのまま親指の腹を使って、くにくにとそこを弄り始めた。じんと鈍い感覚が生まれて、じわじわと先端が硬くなっていくのが自分でもわかる。それがひどく恥ずかしくて、あかりは顔を背けるように横に逸らし、声を抑えるように右手の甲を口元に当てた。その間にも瑛の右手は乳首を弄り、左手は乳房を揉みしだく。
と、
「え!?」
ふいに、ぬるりと濡れた感触を胸に感じて、あかりは目を開く。顔を胸元へと向ければ、なんと瑛は赤ん坊がミルクを飲むように片方の乳首を咥えていた。当然あかりの胸からは母乳など出ない上に、瑛もそんなものを必要としてない。そんなことはわかりきってはいるのだが、それでもあかりは恥ずかしさで死んでしまいそうになる。濡れた舌が乳首を捏ねるように動いて、ぞわりと腰に痺れのような感覚が走った。そのまま前歯で軽く噛まれれば、びくびくと身体が勝手に跳ねる。もう片方の胸は先ほどよりも強く揉まれ始めたが、それが逆に煽っているように感じてしまうのだ。
「ぁ、あっ」
声を抑えることなどすっかり忘れて、あかりはちいさく声を零す。そうして執拗に胸を責めていた彼の手が、するすると下へ下へと移動し始めた。腰の帯でどうにか繋ぎ止められているような浴衣をさらに肌蹴させて、瑛はあかりの太ももを撫でる。足の付け根をくすぐるように指先で触れると、ショーツのクロッチ部分を引っかけるようにしてずらし、中指を潜り込ませた。
「…ゃ、ぁ!」
にちゅ、と濡れた音が、微かに聞こえた。
「……良かった」
ぼそりとどこか安堵めいた声で、瑛が呟いた。何のことか問う余裕なんてなく、そのまま瑛の指が濡れた秘所を確認するように往復し始める。
「は、ぁ、ぁ」
くちゅ、くちゅ、と濡れた音を響かせながら、指がゆっくりと溝を這う。そうして彼の両手でもって、あかりのショーツは遠慮がちに脱がされてしまった。待ってなんて言う余裕もなくて、けれど瑛の前に露わにされてしまった恥部を隠そうと身を捩ろうとして失敗する。あかりが両足を閉じるよりもはやく、瑛の指が再び彼女のそこに触れてきたからだ。
「て、る…ゃぁ…!」
恥部を隠すように淡く生えた茂みをかき分け、割れ目に潜む陰核を探り当てられる。ほんの少し突かれただけだというのに、その場所は強い刺激をあかりに与えた。びりり、と電撃のような痺れに思わず目を開いてしまうと、暗闇の中で不安げな表情を浮かべる瑛と、目が合った。
「痛いか…?」
と。
問うてくる声は、表情よりももっと不安げで。
その声を聞いて、あかりは自分と同じくらい瑛も不安なのだと気が付いた。
痛くさせないようにと、瑛は言った。
あかりへの負担をなるべく小さくなるようにと、本気で考えて実行しようとしてくれるのが、わかって。
「……うん」
頷いて、瑛へとあかりは手を伸ばす。頬に触れて、うん、ともう一度頷く。
これからする行為は、一人でするものじゃない。二人で、一緒に行うからこそ意味がある。瑛ばかりが気を使うのではなく、あかりも彼と、そうして自分自身へと向き合わなければいけない。
「大丈夫、ちょっと、びっくりしただけ」
「本当に? もし、実は痛かったりしたら、その……な、舐める、か?」
「それはちょっとまって!」
ようやく落ち着いてきた気持ちに突然高いハードルが掲げられてしまい、さすがのあかりも慌てて制止する。すると、数秒の沈黙のあとに、どちらともなく笑い出してしまった。
「瑛くん」
「なに」
「大好き」
「……知ってるよ、ばか」
瑛は優しすぎる声で悪態を吐いて、けれどチョップではなくあかりの額にキスを落とす。そうして今度は唇同士を重ねてキスをすれば、止まっていた瑛の手の動きが再開された。中指の腹で彼女の陰核をゆっくりゆっくり撫でれば、唇の隙間からあかりの声がたまらずに零れる。瑛は彼女の様子を気に掛けつつ、指の動きを変えていく。ゆっくりを徐々に細かく、はやく動かしてみれば、あかりの声も高く跳ねるように上がる。
「あ、あっ、や、っぁ!」
単音を繰り返し、腰が揺れていく。本人がどこまで自覚しているのかはわからないけれど、溝の奥にある秘所からは確実に愛液が溢れ続けていた。瑛は陰核を責める指を移動させ、濡れた溝から密壺の入り口を探り始める。しっとりと濡れた花弁に触れつつも、その奥に潜む場所は指先だけでも段違いの熱を感じ取れる。ごくりと喉を鳴らし、確かめるように指を潜り込ませ、
「っ! い、た!」
中指の、ほんの第一関節。そこまでの部分が秘所に侵入しただけで、内側から鋭く痛みが走る。瑛はあかりの声にぴたりと手を止め、そのまま手を引いた。
「痛いか?」
「なん、か、その…ちょっと…でも! 頑張るから!」
「ばか。そこは頑張らなくていんだよ」
「ま、まだ大丈夫! 本当にだめなときはだめって言うから」
「……本当に?」
「本当に」
こっくりと真剣に頷けば、瑛は困ったように眉を寄せた。数秒悩んだように目を伏せて、けれど「わかった」と言うと、もう一度あかりの秘所へと触れる。
「本当の本当に、だめだったら言うんだぞ」
「うん」
もう一度あかりが頷くのを見て、けれど瑛はどうしたものかと渋い表情を浮かべた。が、ふいに何かに気が付いたように顔を上げて、ばっと自分の枕元を見やる。けれど再び視線を落とすと、もう一度枕元を見てからやっぱり俯いてぐしゃりと前髪をかき上げる。
「……挿入れるときは、ちゃんとつけるから」
え? とあかりが何のことかわからずにいれば、瑛は浴衣を肌蹴させてあと、一瞬の躊躇のあとに下着の中から勃起したそれを覗かせた。あかりは暗がりで何が行われているのか理解できないでいる間に、瑛がこちらへと覆いかぶさってきた。そうして腰を掴まれれば指とは違う、もっと太いものの先端がぬりゅり、と溝を撫でてきた。
「ひっ!」
「は、思った以上に、やば…ッ」
そこに充てられているものがナニかなんて、聞くだけ野暮だ。
けれどもどう反応するのが正解なのか解答が出る前に、彼のペニスはゆるゆると動き始めてしまった。
「あっ、あ!」
「痛い?」
「痛く、ッ、な、っ」
ぐちゅ、と彼の先端があかりの陰核に触れるたび、指よりも強い刺激が彼女を襲う。お腹の奥がきゅんと疼き、腰には甘い痺れが走っていく。痛い? と二度目の問いには答える余裕もなく、ただ首を振って意思を伝えるも、ほんの少しだけ楽しそうに、けれど切羽詰った声音で瑛は続ける。
「じゃあ、気持ちいい?」
「わかん、な、ぃ、ぁ、あっ」
「じゃあ、痛い?」
「痛くは、ない、から!」
ブンブンと必死に首を振ってアピールすれば、ぐりぐりとペニスの先端が陰核を執拗に押し潰してきた。あ、と堪らず高い声を上げて首が仰け反れば、露わになった喉元をべろりと瑛が舐めた。そうしてそのままちゅうちゅうと吸い付かれたまま、彼の腰の動きは止まらない。瑛は首から口を離したあとは、はあはあと荒い呼吸をあかりの耳元で繰り返す。互いの性器がふれあい、擦られ、言葉ではない無意味な単音と呼吸だけを繰り返し発していれると、ふいに「やばい」と切羽詰った瑛の声と同時に、ぴたりと動きをも止まる。
「てるくん…?」
こすれ合っていたそこからじんわりと甘い痺れを感じながら、呆然と声を掛ける。すると相手は上半身を起こすと、再び指であかりの秘所へと触れてきた。
「ふぁ!?」
チカチカ、と目の前で小さく火花が散る。さっきまでは第一関節ほどで痛みを訴えてきたそこは、あっさりと第二関節までもを飲み込んだ。しかも痛みは感じず、それどころか秘所の奥が疼くように、誘うようにきゅうと指を締め付ける。
「痛いか?」
瑛の問いに、あかりは首を振って応える。ゆっくりと出し入れされる指の違和感は感じるものの、痛みは伴わない。けれどずっずっと体内へ侵入してくるそれを、どう受け止めていいのかがわからない。むず痒いような感覚に咄嗟に腰が逃げようとしたが、けれどそれは瑛によってできずに終わる。
ついには中指が根本まで埋め込まれると、二本目の指は少しの抵抗を乗り越えれば一本目よりもあっさりと迎え入れることができた。それでも体内にある異物感は健在で、やっぱりどうしていいのかわからない。二本の彼の指が、あかりの様子を見つつ抽出を繰り返す。自分でもおよそ触ったこともない体内を、こうして瑛に弄られるのもなんとも変な感じだ。
ぼんやりとそんなことを考える余裕が出てきたところで、ふいに体内から指が引き抜かれてしまった。
「……?」
それでもまだぼんやりとした思考で瑛の姿を追えば、彼は再び枕元へと視線を向ける。しかし今度は手を伸ばし、ごそごそと何かを探るようなしぐさを見せる。時折小銭の音が聞こえるところから、彼が財布を開いているのは何となくわかった。それでも「なんで財布?」とやっぱり緩い頭で思っていれば、プラスチック製のビニールが破かれる音が聞こえた。
「瑛くん…?」
視線をそちらへと向ければ、彼がぎこちなく手元を動かしているのがわかる。
うす暗闇の中のそれが何であるのか理解するのと同時に、瑛の手が止まった。
「あかり」
名前を呼ばれて、その声の低さに緊張が走る。
そうして、気が付いた。
気が付いて、しまった。
そうだ、これからが本番だと。
ぼんやりと緩い思考がすぐさま緊張へと切り替わる。忘れていた羞恥心を今更のように思い出されて、顔が赤く、熱くなる。
「……挿入れても、いいか」
「う、うん」
頷いて、けれど相手の目を見ることができない。ぎゅっと目を瞑れば、目じりに柔らかい感触が押し当てられる。それが瑛の唇だと気が付いて思わず目を開くと、至近距離で相手と目が合った。
「て、」
瑛の名前を呼ぼうとして、けれど途中で彼の唇によって塞がれてしまう。
だから心の中で瑛を呼べば、ゴムで覆われたつるつるとしたペニスの先端があかりの秘所へと押し当てられた。ぎくりと一瞬だけ身を固めてしまうと、唇を重ねた状態のまま「あかり」と名前を呼ばれた。そうして、
「んっ!」
ぐ、と先端が潜り込んでくる。それは指とは比較にならない質量で、咄嗟に息を止めてしまう。指で感じたよりも何十倍もの痛みに襲われ、身体全体が拒否するように強張った。
「ッア、や、ぁ!」
「痛いか…?」
不安げに問う、瑛の声。
正直に言えば、痛い。すごく痛い。けれどそれでもやめてほしくないと思っている自分もいるのは事実で。
あかりはどう返していいのか迷って、結局首を振ることしかできない。
「ばか、やっぱ痛いんだろ?」
「痛く、ない」
「嘘つけ」
「ほ、本当は痛いけど、痛くない…から…」
「痛いんだろ」
「だい、じょぶ」
腰を引こうとする瑛の浴衣の襟元を掴んで、あかり。もう一度「大丈夫」を繰り返すも、目の前の相手は納得できずに顔を顰めている。
「……さっきみたいに、ゆっくりやれば、大丈夫…」
「本当だな…?」
完全に疑ったままだが、瑛は譲歩したようにあかりの言葉に従った。そうして自身のペニスを掴むと、再び入口へと宛がった。けれども秘所の浅いところを撫でるように動かすだけで、それ以上の侵入はしてこない。あかりは不審に口を開こうとすれば、もう片方の彼の手が、思い出したように彼女の陰核を指先で弾いた。
「あっん! っ、あ!」
ぐりぐりと親指で刺激されてしまえば、思わず腰が浮く。するとそちらに気が取られたためか、くぷ、とペニスの鬼頭部分が咥内へと入り込んだ。あ、と思っている間にもクリトニスを責める手は止まらず、もはやしわくちゃになってしまった布団のシーツを、まるで藁にでも縋るかのように必死に掴んだ。
「んっ、んんっ」
ぐぷぷ、と空気が抜けるような音と共に、瑛の侵入が続く。内側の圧迫感に苦しくなって口を開くものの、呼吸ができない。ただ無意味にぱくぱくと口を開閉させるだけだ。
「息、しろって」
「…はっ、ふ」
指摘されて、ようやくあかりは息を吸う。そうして、はっと彼女が短く息を吐き出すタイミングと共に、さらにペニスが押し入ってきた。
「あ…っ、あ、ぁあ…! ん!」
つと、相手が奥へ侵入すると共に擦られる内壁から、痛みとは別の妙な感覚も生まれてきているのに気が付いた。ら、その感覚を自覚した途端、意識は貪欲にそれを追い求めるようにして、無意識に下半身へと力が入ってしまう。きゅっと体内にある瑛自身を締め付ければ、まざまざと彼の大きさや硬さ熱を思い知らされた。そうして半分ほど入ったところで止まっていたそれが、ず、と動いた。すると一気に根本までがあかりの体内へと入り込んできたため、息苦しさに目を瞑った。
「あかり…」
呼ばれて、瞑っていた目を薄く開く。
目の前には困ったような瑛の顔があって、それがなんだか妙におかしくて少しだけ気持ちに余裕ができた。
そうして瑛の顔がそのままあかりへと寄せられれば、渇いた唇同士を重ねて、啄むようにキスを交わす。
「全部入ったの、わかる?」
「わか、る」
「おまえん中、すごい、熱い」
「い、言わなくていいよ!」
と、咄嗟に言い返せば、勢い余ってナカの瑛を締め付けた。う、と呻く声に、こっちまで慌ててしまう。
「……ばか」
「ご、ごめ」
「……ていうか、正直、あんまり持たない」
はあ、と瑛のため息のような熱い息が、耳に掛かる。そのまま唇を耳にくっつけるようにすると、動いていい? と囁かれてしまう。けれどまともに返事をすることもできず、ただ無言で頷いてみせた。
「あ、っふ、ん」
ぐっぐっ、と浅く突かれて、まだ残っている痛みに顔を顰めてしまう。あかりは痛みを逃すように息を吐けば、ずん、と強めに奥が当てられた。
「やぁっ!」
およそ自分のものと思えないような高い声に、咄嗟に口を抑える。けれどもそんなあかりの努力も空しく、瑛は彼女の反応を伺いながら同じ個所を狙って腰を動かし始めた。
「んっ、んむっ」
口を抑えてはいるとはいっても、手のひらとの間で声が堪え切れずに押し出される。その間にも瑛の突き上げは続き、ぞわぞわと腰付近に蟠る痺れたような感覚が全身へと広がっていった。それは手足の先まで伝わり、口許を覆う手は空しく顔の横に放り出される。
「あぅっ、うっあっ、あっあっあっ」
ぞぞぞ、と痺れが背筋を駆けのぼっていくのがわかって、あかりはぶんぶんと頭を振る。いや、とか、やだ、とか否定的な言葉が無意識に呟く。何がいやで何がダメなのか言ってる自分自身もわかっていない。けれど確かにせり上がってくる「何か」にいいようのない恐怖を覚えてしまう。
「あかり」
「て、る、ぁ、あっ! や!」
「あかり…っ」
「だめ、なんか、や、ッア」
「俺、も…っ」
ぐん、と最奥を狙うように腰が押し付けられる。そのまま小刻みに律動が繰り返されれば、体内のそれが一回り大きくなるのがわかった。
そうして瑛の手が、あかりの身体をきつくきつく抱きしめて。
苦しげに瑛が呻くと、彼女の体内でソレが跳ねた。
あかりは声にならない声を上げると、縋るように瑛の浴衣を握りしめた。目の前で白く火花が散った気がして、ふっと一瞬だけ意識が遠のく。
「平気か…?」
つと、控えめな問いが耳に届いた。
ぼんやりと思考ではその言葉の意味を理解するのに数秒かかってから、うん、とどうにか頷いた。正直、何がどう大丈夫なのかは自分でもよくわかっていないのだが。
「……瑛くん」
掠れた声で、瑛を呼ぶ。乱れた呼吸が落ち着いてくれば、恥ずかしさも一緒になって思い出される。今更と言えば今更だが、否、むしろ「事が済んだ」から余計なのかもしれない。
「あの」
と口火を切ったものの、それ以上何と続けたらいいのか悩んで、言葉に詰まる。あーとかうーとか口の中で呻いて、結局、
「こ、れからも、よろしくお願いします…」
なんて咄嗟に言ってしまった。しん、と互いの間に沈黙が落ちたあと、堪えきれずに瑛が笑い出した。もう! といつものように怒ろうとして、きゅっとまだ体内にいる彼を締め付けてしまう。
「ふぁっ」
代わりに妙な声を上げてしまい、再び二人の間に変な空気が流れる。ええと明らかに誤魔化す瑛の声にあかりも余計な茶々は入れずに押し黙った。
「とりあえず、身体は平気か?」
「う、ん」
「そうか。…じゃあまずは、その…抜くな?」
「お願いします…」
我ながらなんて間の抜けたとは思っても、これ以上の余計な突込みができる余裕などなかった。ゆっくりと瑛ものモノが引き抜かれ、ごそごそと後始末が行われる。そうしてあかりも今更ながらに自身の状態に気が付くと、慌てて乱れた浴衣を強引に引き寄せた。ぐしゃぐしゃになった浴衣でなんとか身体を隠し、いつの間にか脱がされていたショーツの行方を追うべく、部屋を見渡す。そうして暗い室内でぺたぺたと畳の上を手探りで探していれば、先に支度が整ったらしい瑛が遠慮がちに声を掛けてきた。
「…電気、点けるか?」
「それはちょっとまって!」
彼の提案に、あかりはすぐさま反応する。ようやく落ち着いてきたとはいえ、まだ瑛の顔をはっきりと見るには心の準備とかなんか色々なものが必要なのだ。
「あ、あと5分…さ、3分待ってください」
「…いいけど」
頷く瑛の声も、どこかそわそわと落ち着かなくて。
結局布団の中に紛れ込んでしまったショーツは10分以上経過してから見つかった上に、部屋の電気が点けられることはなかった。が、あかりの下着が見つかったところで、今度は別の問題が浮上した。というのも、元々あかりが寝る予定だった布団は当然乱れに乱れてしまい、例え整えようとも寝るには色々な想像力が書きたてられてしまうわけで。
そうなると残る選択肢はもう一組敷かれた瑛の布団だ。
しかし一組の布団に人数は二人。一線を越えて今更と思いつつも、むしろ超えたらからこその戸惑いで、二人は暫く押し黙った。
「……あの、さ」
「……うん」
「これ以上は、その、何もしないから」
「う、うん」
「じゃあ、その」
うん、と三度目の頷きのあと、あかりは瑛の掛け布団を遠慮がちに持ち上げた。お邪魔します、なんて言いながらなるべく端の方で身体を横たえる。
「ばか、ちゃんと被らないと風邪引くだろ」
「だ、大丈夫だよ」
「俺が大丈夫じゃないから。……ほら」
言って、瑛はやや強引にあかりの身体を抱き寄せた。一気に距離が詰められて、先ほどの行為がまざまざと思い出されてしまう。けれどそれは瑛も同じなのか、彼の胸の触れた手のひらから、少しだけはやい鼓動が伝わった。
「と、とりあえず、寝るぞ。明日も、あるんだし」
「お、おやすみなさい」
「あ、ああ」
どうにもぎこちない挨拶を交わし、二人は強引に目を瞑った。眠れたかと言われれば殆ど眠れずに翌日を迎え、改めて明るい室内で目の当たりにしてしまった布団の惨状に無言で目を逸らし、けれどもどちらともなく共犯の証拠隠滅のようにそそくさと畳み始めたのは言うまでもない。
そうして身支度を整え、チェックアウトした熱海旅行の二日目。
少し距離があるからと伊豆山神社を翌日に回したのを、あかりはひどく後悔した。というのも、お参りをするために長い石畳みの階段を登らないといけないからである。
「……えっと」
「……やめとくか?」
「の、登る!」
殆どヤケになって答えれば、苦笑した瑛がほらと手を差し出してきた。あかりはほんの少しだけ不服そうな顔をするものの、結局は瑛の手に捕まって階段を登りはじめた。
そうして自分よりも大きなその手と、繋がった自分の手を見てこっそりと頬を赤く染めた。
階段を登り切って到着した神社で引いたおみくじは、二人揃って大吉で。
それはまるで神様に見透かされているようで、二人揃って黙り込んだのだった。
[9回]
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