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イチジ九

すべからくどうしようもない日常のあれこれ。 ネタバレ盛り沢山ですので注意!

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芹沢×かなで小話

夏休みが明けた九月一日。かなでは改めて転校生して神南高校のクラスメイトへと自己紹介をしていた。休みの間に学校内には部活の練習のために頻繁に来ていたし、神南の制服もほぼ毎日着ていたのもあってなんだか妙な気持ちだった。さらに同じクラスに芹沢がいたものだから、その妙な気持ちに拍車が掛かるというものだ。ほんの二か月弱の間で、芹沢と自分の関係は大きく変わっていた。所謂恋人同士というものになっていて、かなではうれしいやら恥ずかしいやらで芹沢の顔をまともに見ることができなかったのだが、そんなこちらの気持ちやら何やらにはお構いなしに、なぜか彼との関係がクラスメイトたちに周知されていた。
 芹沢くんと付き合ってるんだよね? と疑問形ではなく断定系で問われて、かなでは思わず素っ頓狂な声を上げそうになってしまった。寸でのところでそれは堪えることに成功したけれども、そんな彼女の反応に他の数名の女子が集まってきてはかなでを取り囲んでは矢継ぎ早に言葉を投げかけてきた。
「いいなー! あんな素敵な彼氏がいて」
「芹沢くんが恋人って憧れるよねー。執事みたいだし!」
「そうそう! スマートに色々気遣ってくれるんでしょう?」
 悪気のない彼女たちの好機の視線と言葉にええと口の中で小さく呻いて、ひとまずに曖昧な笑みを浮かべる。どうしようと内心で困っていれば、小日向さん、と輪の少し離れた場所から声が掛けられた。
 その場にいた全員がその声へと視線を向ければ、そこには噂の張本人である芹沢睦の姿があった。
「芹沢、くん」
「皆さん申し訳ありません。これから俺と彼女は部活がありますので、失礼してもよろしいでしょうか?」
 まさに鶴の一声のように、彼が言ったあとはかなでを取り巻く女子たちはそれぞれに軽い謝罪やまた明日ね等の別れの言葉を残して教室から去って行った。思わずほっと胸を撫で下ろすと、気遣わしげな芹沢の目と目が合った。
「大丈夫ですか?」
「えっと、まあ、そこそこ」
「ならいいんですが。何かあったらすぐにおっしゃってください」
「うん」
 頷いて、かなでは芹沢の隣に並んだ。部室へ向かう廊下を歩きながら、あの、とかなでは控えめに声を掛けた。芹沢は足を止めると、かなでへと視線を向ける。
「わ、わたし、その」
「はい」
「芹沢くんのこと、執事だなんて思ったことないから!」
「……」
「……」
「……ップ」
 目の前で噴出す芹沢を目の当たりにして、かなでは「あれ?」と小首を傾げた。今、自分はものすごく真剣に真面目なことを訴えたはずだったのに、どうして芹沢は肩を震わせて笑いを堪えているのか。気合の意味も込めてぐっと握った拳を緩めれば、まだ笑いを引きずった彼の手が伸びてきた。その手がぽんぽんとかなでの頭を撫でて、けれどまたくつくつと笑いを再開してしまう。
「も、もう! 芹沢くん!」
「……ホンマ、かなわんなあ」
 一頻り笑い終わったあと、芹沢はかなでの手に触れた。軽く引かれて、互いの距離が詰められればどき、と心臓が高く鳴る。
「俺は、そんなあなただから好きになったんですよ」
「……それは、どうも、ありがとうございます」
「どういたしまして」
 にこり、と今度はからかうのではなく余裕の笑みが返されて、かなではそれ以上何も言うことができず部室へと向かうことになった。
 当然、真っ赤になった顔を東金と土岐が見逃すことはなく、小一時間ほどからかいのネタになったのも言うまでもない。



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芹かなかわいすぎてカッとなって書いたけれど難しいですね!

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