羽ヶ崎学園の王子様こと佐伯瑛は、今日も今日とて女子に囲われていた。
まるで絵に描いたような光景を目の当たりにして、あかりは嘆息を吐く。まったくどうして、あんな屈折王子が人気なのだろうと内心で呟けば、まるでそれが伝わったかのように、数メートル先にいる佐伯がこちらに視線を向けた。それは偶然でも何でもなく、意図的な視線であることにはすぐに気がついてしまい、あかりは改めて息を吐き出す。そうしてすうっと息を吸うと、「佐伯くん!」と大きな声で彼を呼ぶ。すると彼を取り巻く女子たちが一斉にこちらへと振り返った。その勢いに気おされそうになるも、あかりは小走りで彼に駆け寄っていく。
「さっき若王子先生が探してたよ」
「え、若王子先生が? そっか、ありがとう海野さん」
にこりと佐伯は笑う。なんともわざとらしいやり取りにあかりの方は引きつった笑顔を返せば、佐伯は女生徒たちに適当な言葉を残して校舎の中へと消えていく。佐伯がいなくなればそこに留まる理由はないとばかりに、女生徒たちはあっという間に散り散りに去っていく。一人残されたあかりは三度目のため息を吐いた。と、制服のブレザーに入れておいた携帯電話が振動する。学校内なので音を消していたそれを見やれば、先出し人は佐伯からだった。ただ本文に「サンキュー、助かった」とだけ書かれた素っ気ない文章を見て、なんだか妙におかしくなってしまう。
「お礼はケーキでいいよ、お父さん…っと」
カチカチと携帯電話のボタンを操作して、あかりはすぐにメールの返信を送る。すると少しの間をおいてメールマークが点灯した。差出人へやはり佐伯からで、「Re:Re:」と続いたタイトルの内容は「本格的にカピバラになってもしらないぞ」であった。
「もう、せっかく助けてあげたのに」
携帯電話のディスプレイに向かってそう告げれば、怒りの顔文字を入力する。そうして送信ボタンを押そうとして、やめた。メール画面を破棄して、電話帳を開く。その中から佐伯瑛の番号を呼び出し、電話を掛ける。
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さーてこれからどうしようと悩んで悩んで思いつかなくて投げるという体たらく(´・ω・`)
[2回]
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