キスを、したい。
ロイ・マスタングは渇望していた。
今、まさに今。
目の前で健やかに眠る少年の薄く開いた唇に目はくぎづけで。
無邪気に人の気も知らないで眠るその寝顔は、はっきり言って理性との戦いを要求される。まあ、つまりは拷問なわけだ。
寝ている当人にとっては言い掛かりの他の何者でもないが。
想いが通じ合って早数カ月。
お互い、とゆうか、どちらかと言えばこの少年――エドワード・エルリックが長い時間ロイの元に留まっていない、というのもあって中々お互いの関係が深まらないのだ。
ロイとしては、できれば二人の関係を深いものにしたい、という欲が出てきた。
玉砕覚悟の告白が成功した時点で、その想いは日増しに強くなる一方で。
抑えられない想いを『自己処理』という形で片付けてはいるが、最近はそれが更に虚しさを煽る。
「…はあ」
知らず、ため息が零れる。
相手は相思相愛の相手なのだ。遠慮などすることはないと、心の内のもう一人がそう囁き掛ける。
確かに、そうなのだ。
現に、ロイは今まで付き合ってきた女性に対してこういう事をしたことはもちろんある。
それならば、何を躊躇う必要がるのか。
(……)
目の前で眠る愛しい少年。
今、少しだけ彼の元へと顔を近づければ、いとも簡単に唇を奪える距離。
少し、ほんの少し距離を縮めるだけなのに。
薄く開く唇から視線がそらせず、思う。このまま口づけられたらどんなにいいだろうか、と。このまま、もっと距離を近づけるだけでそれが叶うのに。
「はがねの」
名前を呼ぶも、子供は起きる気配を見せずに以前眠ったまま。
ロイはそろりとエドワードの頬に触れる。彼の体温に触れ、彼の存在を確かめる。ゆっくり、顔を少年の口許に近づけていく。
と。
「…たい、さ…」
びくっ。
小さく、呟くように自分が呼ばれれば、ロイは驚いて手を引いた。それと同時に身体も離れようとして後ろにあったテーブルに強か腰をぶつけてしまった。無言で痛みに堪えていると、もそりと目の前で動く気配。顔を上げれば、こちらの葛藤などまるで気づいていない眠そうな顔をした子供が大きな欠伸をしているところだった。
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未送信フォルダーにあったので晒しの刑。
増田さんへたれー(´∀`)
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