3月である。
いつもならば月が変わって、まあそこそこ今年一年の残りの日数を気にかけたり気にかけなかったする程度のことだ。季節もまだ寒いとはいえ、真冬の寒さもやわらいできたことだし、昼間なんて春の陽気を感じることもある。――のだが。
本日、この本丸の主たる審神者である彼女は起床し、朝ご飯もそそくさと食べ終えてからすぐさま向かったのは鍛刀部屋である。審神者となった初期の頃は資材、依頼札、手伝い札とカツカツの運営をしてきたけれど、さすがに6年目もなると余裕が出てきた。否、資材に限ってはいつもカツカツなのだが、最近はなぜか余裕がある。むしろ年明けでは依頼札の方が心配になるレベルだったので、こちらを立てればあちらが立たずのような状態だろうか。
「皆、準備はいいか」
そういう彼女の声は、いつにも増して真剣みを帯びている。それもそのはずだ。本日から鬼丸国綱が鍛刀できるチャンスが再びやってきた。前回のチェレンジでは物の見事に顕現できず、当本丸の刀剣男士たちはいつものことではないかと思ったものの、むしろいつものことだからこそなんて声を掛けていいかわからないというややこしいことになったりならなかったりしていた。わりと立ち直るまで数日時間が掛かるものの、審神者としての仕事はするのでそこは安心しているが、鬼丸鍛刀は歴代の中でもダントツと言っていいレベルのひどさだった。特に近侍の薬研からも「もうういい! 大将! 次がある!」と何度も声を掛けたけれど、「薬研の回想が実装されたのに諦められるか!」と言って結果を出せなかったのである。
そのあとに行われた泛塵鍛刀期間も鬼丸に次ぐレベルの悲惨さを見せつけたものの、最後には顕現できたので結果オーライである。何もかもが結果なのだ。
そう、資材は溶かすためにある。
まださわやかな午前中だというのに、目を濁らせて審神者は資材となけなしの札を火にくべる。来る。ぜったいに今回は鬼丸は来る。毎度訳のわからない自信が沸くのは謎だが、そう思わないとやってられないときもあるのかもしれない。
一回、二回と鍛刀を行っては梅札を使い切り、竹札に続いて松札の消費も始まった。いや絶対来る。さすがに今回は来るはず頼む。とそろそろ五十鍛刀になったかならないかで、ふいに知らない声が聞こえた。
「……鬼丸国綱。夢で見たんだ。あんたのもとに鬼が来ると……」
え、と動きが止まる。
え、と小さく声が出る。
え、と後ろを振り向くと、薬研藤四郎が驚いた顔でこちらを見ていた。
「……大将! やったな!」
そう薬研に言われて、もう一度目の前に顕現された鬼丸国綱を見やった。
「……ッシャオラァ!!!!!!!」
あまりにもひどい雄たけびを発して、審神者はガッツポーズを掲げた。
--------
というわけで鬼丸来ましたーーーー!!!!!!やったーーーーーー!!!!!!!長い闘いだった・・・前回の鍛刀ほど心が折れそうになることもなかったので本当によかった・・・助かった・・・薬研他刀剣男士たちの回想はあとでゆっくり見ます!!!!!!!!!!!!!!まずは脱いできてね鬼丸!!!!!!!!!!!!!!(恒例行事)
[0回]
PR