ぼんやりお風呂に入っていたらふと思い浮かんだルカバン小ネタ。
オチとかそんなものないよ!!!!!!!!
冬は寒い。
寒いからなるべく厚着をして、服の隙間という隙間から冷気が入ってこないようにと必死になる。
手持ちの服と兄の服を(勝手に)重ね着して、首には去年半額で買い叩いたマフラーをぐるぐる巻きつけた琉夏は、さらに風が入ってこないようにマフラーを引き上げて口元を覆う。そんなことをしたところでやっぱり寒いものは寒い。なんでこんなにも寒いんだ冬。とやや考えが堂々巡りな上に、若干斜め上を目指し始めたところで、ぽん、と背中を叩かれた。振り向くと、ピンク色のマフラーを巻いた幼馴染の笑顔があった。
「おはよ。琉夏くん、琥一くん」
「おう」
「…おはよ」
「琉夏くん、大丈夫? 起きてる?」
「うん、あと少しで冬眠しそうだけど」
「校門すぐそこだよ! がんばって!」
「…うん」
幼馴染の少女の激励に少しだけやる気を回復させつつ、琉夏はちらりと彼女を横目で見た。にこにこと笑う彼女の吐く息は当然のように白くて、自分と同じ空間にいるはずなのに、美奈子の周囲だけなんだか暖かそうに見える。そんな琉夏の視線に気づいたのか、美奈子は笑顔からちょっとだけ不思議そうな表情へと変えて、小首を傾げた。
「どうかした?」
「美奈子さ、寒くないの?」
「え? 寒いよ?」
「嘘だ」
「え」
「だって、俺なんて寒すぎて今にも死にそうなのに!」
「えっと?」
「しかも美奈子はスカートだろ? 太ももとか寒そう」
「え」
ぺた、と琉夏は美奈子の太ももを無造作に触って見せた。暖かそうだと思っていた彼女の肌は、やはり外気にさらされていただけあってか、ひんやりと冷たい。それでもくっついた手のひらと太ももの肌はすぐにじわじわと熱を帯びてきた――と思ったら、後頭部に衝撃が走った。ごん、と鈍い音が聞こえて、視界がぶれる。それから一拍置いて、兄の罵声が飛んできた。
「このバカルカァ!」
「わ、なんだよコウ」
「なんだよじゃねえよ!」
「えー? だって美奈子あったかそうだったから、つい。な、美奈子」
言って、琉夏は彼女の方へと視線を向けた。ら、いつものように「琉夏くん!」と怒られるかと思ったら、そこには予想外の美奈子の表情があった。
顔を真っ赤に染めて、少しだけ口を震わせた美奈子は言葉を発しようしていて、でも言葉にならないらしい言葉を口の中で持て余しているようだった。
そうして、最終的には何も言わずに琉夏たちを置いて校門へと走っていってしまった。
[1回]
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