ようやく天使バンビの琉夏限定スチルを見たんですが、その衝撃に頭ぱーんして書きなぐったのにどうしてこうなった小話。
まだ天使バンビ琉夏スチル見てないよ!という方はまわれ右で!
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「いた」
ひょいと覗きこんだ屋上の給水塔の裏。そこに我が物顔で呑気に眠る幼馴染を見つけて、美奈子は足音を忍ばせるでもなく彼の元へと歩み寄る。しかし相手はまったく起きる気配も見せずに、まるで猫のように眠ったままだ。美奈子は琉夏の傍にしゃがみ込むと、琉夏くん、と名前を呼ぶ。それでも琉夏は起きる様子はない。今度は彼の腕に触れて、揺すってみる。それでもやっぱり彼は目覚めることなく、すうすうと寝息を立てていた。
「……もう」
困って、美奈子は眉を寄せる。ちらりと腕時計の時間を確かめれば、もうすぐ休み時間は終わってしまう。はやく起こさなければと思うものの、こうまでぐっすり眠っているところを起こすのは、なんだか罪悪感を覚えてしまうという理不尽さにヤキモキする。そういえばとここ最近のアルバイト先での琉夏を思い出す。いつもよりシフトが多めに入っていたし、時間も長く働いていたように思う。
この間だって、と。
先日理事長宅の薔薇園での出来事を思い出した。怪我をした指先は、絆創膏を貼るまでもないくらいに治っていた。けれど、あのときの琉夏の唇の感触も思い出してしまい、カッと頬に熱が集まる。美奈子は指先に触れて、あの時の琉夏の言葉が脳裏を過る。
「お姫様のキスで、カエルから王子に戻れるんだ」
おどけたように、けれどどこか真剣に言う琉夏。
冗談だとわかっているはずなのに、美奈子は琉夏の唇から目が離せなかった。薄く開いたその唇が、まるで誘っているように見えて、思わず顔を近づけていく。金色の髪が数本頬に掛かっていて、その様が妙に色っぽく見えた。美奈子はその髪を指先で払うと、そのまま耳に触れる。そうして軽く引っ張ると、その耳に向かって言葉を発した。
「起きなさい!」
やや大きめな声でそう言うと、さすがの琉夏もびくりと身体を震えさせた。閉じていた目が開かれて、至近距離で目と目が合う。
「……ちゅーで起こしてくれるのかと思って期待したのに」
「しません。ほら、起きて」
「ちぇ」
ぽん、と琉夏の腕を叩いて、美奈子は立ち上がる。くるりと背を向けたあと、自分の頬に触れて軽く引っ張ったあと、さきほどの、ほんの一瞬だけ湧きあがった衝動を消し去るように息を吐き出した。
(……わたし)
どっどっど、と内心で早く鳴る心臓を落ち着かせるように胸に手を当てれば、背後で琉夏が起き上がる気配がした。
ぽん、と頭に手が置かれて、
「ちゅーは残念だったけど、いいもの見れた」
「え?」
「白」
「…………えっ!?」
琉夏の言葉の意味を理解するまでに数秒の時間を要し、けれどわかった途端、ばっとスカートの裾を抑えた。しかし相手はもう見た後で、さらばだ!
なんてわざとらしい言葉を残して逃げて行った。一人残された美奈子は顔を真っ赤にして、結局予鈴ぎりぎりまでそこにいたのだった。
[5回]
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