1主が保健委員とかだったら後々俺得っていう設定。
というか、高校のときって委員会とかあったっけ・・・ラブプラスで図書委員とかあったからそういう方向性にしておこう。
【出会い編】
廊下を走ってはいけませんのポスターを横目に、美奈子は足早に廊下を進んでいく。うっかり図書室から借りた本の貸し出し期間を間違えていたため、図書委員より返却の催促を受けてしまったのだ。
しかもよりにもよって昼休みは担任の手伝いで潰れ、放課後は彼女の所属する保健委員会の会議でだいぶ遅くなってしまった。
美奈子は腕時計で時間を確認して、ようやくたどり着いた図書室の前で息を呼吸を整える。ドアをスライドさせて開けば、中はしん、と静まり返っていた。とっくに下校時間も過ぎていることだし、当然といえば当然。美奈子は手近な椅子に腰かけると、鞄からペンケースを取り出して本の裏に挟まれた図書カードに返却日を記入する。そうして返却のカゴへと本を入れようと席を立とうとしたところで、がたん、と奥で物音がした。
突然のことに驚いた美奈子はびくっと身体を震わせて、物音がした方へと視線を向ける。しかしそれ以降物音がしないことが逆に不気味で、図書室の奥へと足を向けた。足音を忍ばせながら、一つひとつの棚に視線を巡らせる。そうして、一番奥の手前の場所に、物音の原因を見つけた。窓際に図書室のものであろう椅子が置かれ、それに座ってうとうとと寝入っている男子生徒がいた。
目立つ金色に染められた髪の彼を、美奈子は知っていた。
羽ヶ崎学園に入学した当時、遠くで教師と揉めている姿を見かけたことがある。そうしてたまたま中学時代の彼を知っているというクラスメイトが、あれこれと教えてくれたのだ。
(名前は…天童、壬)
高校生活が始まって一カ月が過ぎた今では、最初の頃よりも有名になっていた。それはやっぱり良い方ではなく、悪い意味で。遠くで天童の姿を見たことはあったが、こうして間近で見るのは初めてだ。
「あの、天童くん?」
多少躊躇いはあるものの、このままここで眠らせてはいけないと、美奈子は天童の肩を揺すった。見回りの教師か警備員が見つけてくれるとは思うけれど、万が一こんなところに閉じ込められては大変だ。美奈子は遠慮がちに声を掛けると、閉じられた瞼の縁が震えた。そうして薄く目が開いて、数回瞬きをする。
「……あ?」
寝ぼけて掠れた声を発して、天童は頭を掻きながら周囲を見渡す。一度大きくあくびをすると、目の前の美奈子を確認して僅かに首を傾げた。
「えっと…?」
「もう放課後だから、帰らないと」
「げっ、まじで!?」
がたん! と勢いよく天童は立ち上がると、制服のポケットに入れておいたらしい携帯電話を取りだした。そうして改めて時間を確認して、またもや「うげ」と呟く。彼は慌ててかけ出そうとして、けれどふいにその動きを止める。美奈子へと振り返り、言う。
「俺、天童壬。あんたは?」
「え? …こ、小波美奈子ですけど」
「小波サンな。起こしてくれてサンキュ! じゃあな」
「う、うん」
ひらりと手を振りあっという間に去っていく彼を見送り、美奈子は暫く呆然とそこに立ちつくした。
カキィンと野球部がボールを打つ音で、はっと我に帰る。自分もはやく本を返却して帰らなければ。
美奈子は借りていた本を返却用のカゴに本を入れた。そうして鞄を肩に掛けて、廊下に出る。自分以外には誰の姿もない廊下を見つめながら、先ほどの天童とのやり取りを思い出す。
(……意外と悪い人じゃない、かも?)
そんなことを、美奈子は胸中で独りごちた。
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