稀にカッ!<○><○>と来る天童ブームなんですが、公式のイベントが少なすぎる&違う高校ということでぎりぎりしてたんですが、だったら同じ学校に通わせたらいいじゃない!とパラレルどんとこい設定です。苦手な方はリターンで!
そして書きたい部分だけを書くという書きなぐり戦法です。それはいつものことでした。
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放課後の図書室を利用する生徒は、あまりいない。
一番賑わうのはお昼休みで、HRが終わってからは大体下校か部活へと生徒は流れている。いたとしても借りていた本を返却する程度で、長居をする人は少ない。だから、放課後の図書館はある意味穴場なのだ。元々読書好きなのもるが、テスト前などはよくここで勉強することが多い。自宅にいるとついつい他のことに気が散ってしまって集中できないが、図書室ならば勉強だけに専念できる。ついでに本も借りれるしで一石二鳥だった。
そうして今日は、新しい本を開拓しようとやってきたのだが、なぜか美奈子は図書室の一番奥の棚に追い込まれていた。棚を背にしているのが美奈子の方なので、当然彼女は逃げられない。
そんな美奈子を追いつめているのは、まばらな金髪が特徴的な、同じはね学の男子生徒だ。天童壬という名前の彼は、はね学内外ではちょっとした有名人だ。あまり良くない方向で。しかしこの天童は、美奈子の恋人だったりするのだが。
「て、天童くん…退いて?」
「やだ」
全力で嫌な予感しかしない美奈子は、なるべく平穏に事を済ませようとするも、相手はばっさりとその逃げ道を切ってきた。ひくっと顔が引きつるものの、美奈子はもう一度説得を試みる。
「ほら、ここ、学校だから」
「知ってる」
「図書委員の人もいるし」
「知ってる」
「他にも図書室使ってる人もいるし」
「知ってる」
「だ、だから」
美奈子が何かを言うたびに、天童はどんどん距離を詰めてくる。逃げようと身体を引いてみても、背後に棚がくっつくほど追いつめられている状態ではこれ以上逃げられるはずもなく。最後の抵抗とばかりに手にしていた本を顔の前に翳してみれば、「本、邪魔」と言われてあっさりと奪われてしまった。天童は奪った本を適当な隙間に押しこむと、さらに美奈子との距離を詰めてきた。鼻先がぶつかり、お互いの呼吸が触れるほどに近い。心臓はどきどきなんて生易しい音ではなく、どんどんとドアを叩くようにうるさく鳴り響く。真っ直ぐに見つめられる彼の目から、視線を逸らすことができない。天童の手が、美奈子の腰を抱き寄せる。待ってと制止の言葉を飲み込むように、彼の唇が美奈子の口を塞いだ。
遠くで、野球部かバレー部の掛け声が聞こえる。
図書室のドアが開く音が聞こえて、びくっと肩が跳ねた。すると、それに反応してか、天童の口づけはますます深くなる。ぬるりと舌が唇を割って差し込まれて、くぐもった声が零れる。ぴちゃぴちゃと互いの舌がが絡まるたびに上がる水音に、美奈子は内心で冷や汗を掻く。いくらあまり使う人がいない図書室だとはいっても、誰もいないわけではない。生徒ならまだしも(それはそれで問題はあるが)、教師に見られてしまったらと考えた美奈子はぐっと天童の胸を強く押した。
「て…んっ、だ、ぁめ」
「もう、ちょい」
「だめ、だって」
美奈子の制止を無視して、天童はさらに彼女の身体を棚に押しつけるようにする。顎を固定されてしまい、折角離れた唇は再び押し当てられた。
「…む、んっぅ、んん!」
それでも天童の胸を押して抵抗すると、諦めたように天童が顔を離していった。はあはあと荒い呼吸を繰り返していれば、彼の指先が互いの唾液で濡れた美奈子の唇を拭った。
「なんかえろい」
「ば…っ」
思わず大声が出そうになって、けれどここが図書室だと思い出した。ぐっと喉元で言葉を詰まらせたあと、つんと顔を横に逸らす。そうして天童の腕の中から逃れれば、ごめんと彼の言葉が追いかけてくる。
「美奈子、悪かった」
「知らない」
「だってよ、最近おまえとキス出来なかったから」
「そ、そういうこと言わない!」
「なんで?」
「恥ずかしいから!」
「俺は恥ずかしくないけど?」
「わたしは恥ずかしいの!」
小声で、けれどぴしゃりと言ってやれば、わかりやすく天童はしゅんとした。その様はまるで御主人に怒られた犬のようで、美奈子はうっかり絆されそうになる。天童という男は、見た目に反してこういう表情をするのがずるいと、美奈子は常々思う。そういうところがかわいいだとか、好きだとか考えてしまう時点ですでに色々と負けているのだが、そのことについての自覚はない。ついでに言えば、美奈子自身が割と天童の地雷を踏みまくっていることにも気がついていない。
「…だから」
くい、と。
美奈子は天童の制服の裾を掴んで、引っ張った。顔は俯いたままで、ぽそ、と呟く。
「……二人きりの場所なら、わたしだって嫌じゃないよ」
こうしてまた、彼女は天童の地雷を踏みつけて、爆発させたのだった。
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壁際に追い込む天童と追い込まれる1主が書きたかっただけの話。
[2回]
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