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イチジ九

すべからくどうしようもない日常のあれこれ。 ネタバレ盛り沢山ですので注意!

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小話。

10年後雲雀さんと現在ツっ君。



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 考えても仕方がないことが、ある。
仕方がないとわかってはいても、それでも。どうしても。考えてしまう。願ってしまう。「もしも」。

 「もしも」あの日、あの時、あの瞬間。
 最後に見送った君を引き止めていれば、未来は変わっていたのだろうか。変えることができたのだろうか。


 君を――失わずに、済んだのだろうか。


 何度考えたところで答えは出ないし、今の現状を変えることはできやしない。わかっている。すべてはもう始まって、終わってしまっていることを。嫌になるほど理解しているんだ。
 けれど、それでも願ってしまうこの想いを止めることなどできはせずに、ただ。ひたすらに。ここにはいない彼を求めることしかできなくて。
 声を上げて泣くことも、ちっぽけなプライドが邪魔をしてできない自分が無力で、虚しくて、腹立たしい。
 そうして目の前にいる過去の『彼』が笑う度、僕の名前を呼ぶ度にずきずきと心臓が疼いて悲鳴を上げる。痛い。

「ひばりさん?」

 初めて抱きしめた彼の身体はひどく小さかった。10年も前の体型ならば当たり前かと思ったが、10年後の彼も決して大柄ではなかったと思い出す。目を閉じて、脳裏に浮かぶ笑顔にまた、ずきりと心臓が痛んだ。「ヒバリさん」と、腕の中の子供がまた僕の名を呼ぶ。まだ未発達の幼い声を聞きながら、記憶の中にある『今』の彼の声を重ねる。そして、

「すきだよ」

 と。
 今更にもほどがある言葉を呟いて、苦笑を漏らす。そう。今更だ。10年前の彼に僕の気持ちを告げたところで今更、どうしようもないのに。
 それでも音にして、言葉にして伝えたかったのは単なる己のエゴ。
 困惑している彼の気配には気づかないふりをして、きつく小さな身体を抱きしめ直す。

 隣にいたいだなんて、贅沢は望まない。
 ただ希うのは、君が。これから歩むであろう10年後でも笑って、生き延びてくれることだけ。


 僕の柄ではないけれど――君が存在する未来を心から、願うよ。




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よくある話でございました。
ビアンキたちが今の世界は変えられないけど、10年前のツナたちのこれからの未来は変えられると思うからという台詞がとても切なかった…

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