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イチジ九

すべからくどうしようもない日常のあれこれ。 ネタバレ盛り沢山ですので注意!

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荒ハム小話

荒垣×ハム子のノマカプです。
我が家のハム子の名前は「中原律子(ナカハラリツコ)」です。
いつか順平辺りに「律ー、りっちゃーん、律子さーん」と三段活用で呼ばせたい。


------------------

「先輩、散歩に行きませんか?」

 にっこりと屈託のない笑顔を浮かべて言う律子に、荒垣は一瞬言葉に詰まる。それと同時に顔を顰めてみせるものの、相手にはまったく通じてはいない。なので何かしら反論の言葉を口にしようとするその前に、「ワン!」と彼女の足下にいたコロマルが一吠えしたのでそちらを見たのがまずかった。コロマルか寄せられる期待の眼差しと、大きく左右に振られている尻尾を見てしまって後に「行かない」などとどうして言えようか。

「……わぁったよ。行けばいいんだろーが」
「わあ、よかったね! コロマル!」

 と。
 再び足下に駆け寄ってきたコロマルの頭を撫でてやりながら言う律子を見て、ふと。一瞬彼女にも犬と同じ尻尾が生えているような、そんな錯覚を覚えた。当然人間の律子にはそんなものは生えていないので(生えていたらそれはそれで大問題だ)(特に順平辺りが)、単なる荒垣の想像でしかないがあながち間違いでもないのではないかと思う。きっと律子を動物で表すのなら犬だ。見た目は猫っぽくはあるが、食べ物に誘われてほいほいとついていってしまいそうになるその動きはまさに犬そのものではないか。

「……」

 そこまで考えてから、今度は先ほどとは違う意味合いで荒垣は顔を顰めた。そうだ。いくらペルソナ使いだからといって律子が一介の女であることには変わらない。何かあれば手遅れになることは多分にあるというのに、この女の警戒心は低い。
 荒垣はため息と共に前髪をかきあげる。呑気にコロマルの頭を撫でている律子に一歩近づき、口を開いた。

「…おまえな」
「なんです?」
「知らないやつに菓子もらって、ついてったりしてねえだろうな?」
「な、何いってんですか! いくらわたしだってそんなこと…!」
「そんなこと?」
「な…い、ですよ?」
「目ぇ逸らすな」

 うろうろと彷徨う視線が下に落ちたのを見逃さず、荒垣は律子の顎を掴んで自分の方に向ける。じっと無言で見つめてやれば、ううう、と彼女の口からちいさな呻き声のようなものが漏れる。

「えと…そう! 知り合いです! ちゃんと知り合いの人からもらいましたからいいですよね!?」
「どこの誰だ?」
「し、商店街にある古本屋のおじいちゃんから」
「何もらった?」
「…かにパンです」
「それだけか?」
「……四谷さいだぁももらいました」
「礼は?」
「ちゃんと言いました!」
「よし」

 そこまでいって、ようやく荒垣は律子から手を離した。一方、解放された律子は掴まれた箇所をさすりながら、大きく息を吐いているところだ。

「つーか、おまえ、簡単に餌付けされたりすんなよ」
「されないですよ!」
「どうだか」

 と、荒垣が苦笑を浮かべて肩を竦めてみせれば、律子はむっと目をつりあげた。そうして唇を突き出し、続ける。

「わたしを餌付けできるのは古本屋のおじいさんたちと、荒垣先輩のご飯ですから!」
「……は?」
「ほら! 散歩に行きましょう!」

 ぐいぐいと強引に背中を押され、うっかり反論の言葉を見失う。ついでにいつの間にかコロマルのリードまで渡されていたから、今度は前方から引っ張られ、ほんの少しだけたたらを踏む。
 そんな荒垣の隣に並んだ律子は、先程の不機嫌さなどすっかり忘れたように鼻歌をうたっている。荒垣は半眼で彼女を見、独りごちるように呟いた。

「…俺だけにしとけっての」
「え? なんですか?」
「なんでもねえよ」


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幸せな荒ハムを目指したはずなのにどうしてこうなった。

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