天使にしろ小悪魔にしろバンビがアイドルになっちゃったので、アイドルバンビです。
しかし蓮見くん難しい!
彼の性格を掴むのがなんとも・・・・・・・・
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「わ」
「うわァ!」
「えー」
トン、と背中を叩いたのと同時、予想以上の反応を返してくれた相手に、思わず美奈子は困ったような声と表情をしてみせた。振り返った彼――蓮見達也はいつものようにどこか不安げな目でもって、美奈子を見た。
「や、やあ」
「カノジョに対してのその反応、傷つくな」
「ごめん! …というか、君が驚かすから」
「ちょとしたいたずら心なのに、もう」
「そうだよね、うん、わかってたよ!」
必死に取り繕うとする蓮見の様子に、美奈子は耐え切れずに少しだけ噴出してしまった。口元を両手で押さえてくすくすと笑うと、釣られるように蓮見も苦笑を浮かべた。そうして、笑いの波がひと段落すると、ええと彼は周囲を伺いながら口を開いた。
「移動しようか? いつまでもここにいたら、誰かに気づかれちゃうかもしれないし」
「平気だよ。まだわたしなんて無名タレントだもん」
「何言ってるんだよ。この間、スポーツドリンクのCMに大抜擢されたじゃないか」
「そうだけど」
言って、今度は困った表情にになるのは美奈子の番だ。
高校を卒業したあと、美奈子はスカウトされて芸能人の仲間入りをすることになった。最初の内は想像もしていなかった世界に戸惑ってばかりだったが、最近はいろいろなことにチャレンジしていこうと日々奮闘中だ。しかしそうなると、相思相愛である蓮見の存在が心配になった。彼も彼で、映画監督を目指しべく、映画の学校に通っている身なのでお互い中々時間が合わない。仕方がないと頭ではわかっていても、気持ちの方がもやもやしてしまうのだ。
だから、久しぶりに会えた今日みたいな日は、少しでも普通のカップルのように過ごしたい、なんて。出来ないとわかりきっているそれは、ただのワガママだ。美奈子は気持ちを切り替えるように息を吐き出した。
と、
「なあ、あれ」
「え? あ、CMの」
ぼそぼそと小さな声が聞こえたかと思うと、まだ美奈子のことを知らない人間も連鎖反応のようにこちらに注目してきた。そうして、その中の一人が一歩を踏み出した途端、隣にいた蓮見が美奈子の手を取って、駆け出した。
「に、逃げよう!」
ちょっとだけ声が震えているのが気にはなったが、美奈子の手をしっかりと掴んで引っ張ってくれてるそれは、間違いなく男子の特有の力強さがあった。
美奈子はすぐに気持ちを立て直す。ぐっと足に力を入れて、蓮見と一緒にショッピングモールの中へと逃げ込んだ。
「ねえ」
「なに?」
「わたし、やっぱり達也くんが好きだよ」
「え! な、なに!?」
「ほら、追いつかれちゃうよ!」
美奈子の言葉に面食らったのか一瞬動きが止まった彼の手を、今度は美奈子が引っ張るように走り出した。
デートはまだ、始まったばかりだ。
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