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イチジ九

すべからくどうしようもない日常のあれこれ。 ネタバレ盛り沢山ですので注意!

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天童小話

GS3世界の天童と1主を妄想したらなんか楽しくなってしまった小話。
琉夏バン前提な天主です。高校生カップルな琉夏バンを見てあーかわいいなーあんな初々しい時期があったよなーとか感慨にふけるものの第三者からしたらおまえらだったあんまり変わってないよ!はやく結婚しろよ!って言いたいだけの話。


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 待ち合わせのすぐ近くで見つけた喫茶店は、それなりに混み合っていた。美奈子はぐるりと店内を見て、外の様子が確認できるカウンター席を選ぶと空いている席に腰を下ろした。バッグから携帯電話を開き、メール画面を開く。先ほど待ち人からの「ワリィ、遅れる!」と書かれたメールに対して「近くの喫茶店にいるね」と簡単な返事を打って送信完了。するとそのタイミングで水の入ったグラスを手に、店員が現れた。コーヒーを一つだけ注文して、美奈子は視線を前に向けた。ほどなくしてコーヒーは美奈子の元に運ばれてきた。黒い液体に砂糖とミルクの両方を入れようかしばし悩んで、結局ミルクだけにする。スプーンでくるくるとミルクを混ぜて一口コーヒーを口に運べば、独特の苦みが口の中に広がった。
 休日のショッピングモール広場には、自分と同じように待ち合わせをしている人たちが目立つ。男友達や女友達、そうして恋人同士。そんな様々な待ち合わせをする人たちを何となく眺めていれば、ふいに目立つ金色の髪が目に飛び込んできた。髪を金髪に染めている人など珍しくもないのだが、なぜか「彼」に目が引かれた美奈子はそのまま目線でその姿を追いかけた。
 金髪の彼が走って向かった先には、ボブカットの少女が待っていた。おそらくデートの待ち合わせにでも遅刻したのだろう。彼女の元に辿りついた彼が、言い訳か謝罪の言葉を言ってるのがわかる。少女の方はツンとした表情で少しだけ怒ったような仕草を見せるも、すぐに相手に向き直った。そうして少し困ったような表情は、次第に笑顔になっていった。
 ああ、かわいいなあなんて。
 美奈子は高校時代よりうんと長くなった髪の毛先を指に絡めながら思った。くるくると意味もなく指先に巻いてみる。そういえばあの彼女の髪型は高校時代の自分と同じくらいの長さだったなと考えたところで、「ワリィ」と聞き慣れた声と共にこちらの待ち人もやってきた。メールと同じ謝罪の言葉に少しだけ口角が上がる。天童は美奈子座るカウンターの席までやってくると、すまなそうな顔でこちらを見ていた。美奈子は先ほど見ていた彼女と同じように、ちょっとだけツンとした態度を心がけて、言う。
「遅刻です」
「だから、悪かったって」
 そう天童が言うと、すっかり黒で定着した髪の前髪がさらりと揺れた。思わず美奈子は彼の前髪に指先を伸ばし、触れる。
「いいよ。ちょっと意地悪言いたくなっちゃって」
「…ゴメン」
「だから、いいってば」
 くすくすと美奈子が笑うと、ようやく天童もほっとしたように表情を緩めた。そうして空いているカウンター席の隣に腰を下ろす。先ほどと同じ店員がメニューを聞きにきたので、彼もコーヒーを一つ注文した。
「ケーキ食う?」
「ご機嫌取り?」
「そ」
「ふふ、じゃあショートケーキ」
「オッケー。じゃあコーヒーとショートケーキ」
 天童の注文に店員は「畏まりました」と言って店の奥へと消えていった。美奈子は天童から再び外へと視線を向ければ、先ほどのカップルはすでに移動してしまったらしい。デートなのだから当然と言えば当然だが、もう少しあの二人の姿を見ていたかったなあとちょっとだけ残念な気持ちで嘆息を吐いた。すると、ぐっと天童が顔を近づけてきた。
「俺以外によそ見?」
「まーたそういうこと言う」
「俺はいつでも本気だけど?」
「ショートケーキでご機嫌取るくらいだもんねー」
「だから悪かったって」
「わたしもね、そういうんじゃないの」
「じゃあ、何?」
 うーんと美奈子は言って、再び長い髪の毛の先を指先に絡めた。先ほどの彼女のボブカットと、高校時代の自分を思い出す。言う。 
「髪、切ろうかなって思って」
「どれくらい?」
「高校生のときくらまでばっさりと」
「じゃあ俺も金髪に戻すか」
「それはダメでしょ」
「だよなー」
 大げさにため息を吐く天童に笑うと、タイミングよくコーヒーとケーキが運ばれてきた。美奈子は真っ赤なイチゴが乗ったショートケーキを目の当たりにして素直にテンションを上げて喜んだ。備え付けのフォークを手にし、一口ケーキを口に運ぶ。うん、おいしい。
「なあ」
 つと、ケーキに夢中になっていたところに聞こえた天童の声に顔を上げると、彼が先ほど美奈子がしたように前髪に触れてきた。
「好きだぜ」
「…なに、いきなり」
「いきなりってか、ずっとそうなんだけど。何かすげー言いたくなった」
「今言わなくても」
「照れてる?」
 なおも何か言い募ろうとする天童の口へ、ショートケーキのてっぺんを彩っていたイチゴを押し付けた。もぐもぐと咀嚼する彼を睨みつけてみるも、彼の顔はさらに機嫌よく笑うだけだ。
 さっきまでの形成は完全に逆転されてしまい、今日これからのデートプランの行く末にちょっとだけ不安を覚えた。

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