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イチジ九

すべからくどうしようもない日常のあれこれ。 ネタバレ盛り沢山ですので注意!

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ときレス小話【やっつけ透】

透きゅんかわいいよ透きゅん


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 きゅぽ、とビンの蓋を外し、透はパスタに粉チーズを掛けるのと同じ要領でオムライスの上に大量のチリソースを振り掛けた。ほんの少しのアクセントとして使う分にはおいしく食べる手助けにはなる調味料だが、透の掛け方は正直尋常ではない。初めて目の当たりにしたときはびっくりして思わずガン見してしまい、彼に怒られたほどだ。
 最近ではようやく慣れてきたので今さら驚くことなんてないのだが、何となく今日はチリソースを掛ける透の姿が目に留まった。一見してチリソースがケチャップと同じ色合いなので、普通のオムライスに見えてしまう。しかも透は平然と頬張っていくものだから、実は辛くないんじゃないかと錯覚してしまうのがまさに罠だ。最近透用にワンランク上の辛さに変えてから、どれほどの辛さなのかと試食してみて盛大に後悔したばかりなので、その辛さは記憶に新しい。なので余計、顔色も変えずに平然と食べ進めてしまう透に感心とも尊敬ともつかない眼差しを向けていれば、ぎろり、と鋭い視線を返されてしまった。
「……何?」
「あ、えーっと、辛くないのかなあと思って」
「まあまあくらいかな」
「まあまあ、なんだ」
「うん、まあまあ」
「そっかー」
 それ以上なんと言っていいのかわからず、美菜子は皿洗いを再開させる。汚れた皿がきれいになるのとは裏腹に、彼女の心の中には何かが引っ掛かるように蟠っていた。透が辛いものを好むのは今さらで、料理に大量のチリソースを掛けるのも今さらだ。いつの間にか透専用のチリソースまで置くようになったものの、最近、ちりっと鈍い痛みのようなものを胸に感じるときがある。痛いような、痛くないような、そんな感覚が徐々に大きくなって、今日は痛い感覚を強く感じた気がした。だからいつもより透のチリソースを掛ける姿が気になって、気にして、気に掛けてしまう。
「言いたいことがあるなら言えば」
 ふいに、カウンターの席から投げやりな声が飛んできた。
 美菜子は皿洗いの手を止めて、少しだけ逡巡する。ちらっと透を見て、ええとと口の中で言葉を言い淀む。
「……その、チリソース掛けたら全部その味にならないかなーって、思って」
「ならないし。そもそも俺、うまい料理にしか掛けないから」
「え?」
「ゴチソウサマ。お会計」
「え、あの、あ、はい」
 透の言葉を聞き返すよりはやく、彼は伝票を手にレジへと向かってしまう。美菜子は慌てて濡れた手を拭いて、カウンターからレジへと回り込んだ。するとすでにオムライスとコーラ代をぴったり足した金額を出している透に、ありがとうございます、と言おうとしたらデコピンが飛んできた。
「いたッ」
「ばーか」
「え、ちょっと、透さん?」
「じゃあな」
「れ、レシート!」
「いらねー」
 ひらひらと手を振り、透はさっさと店を出ていってしまう。
 その場に残された美菜子は「もう」と呟いたあと、透の座っていたカウンターの席へと振り返る。そこにはきれいに平らげられたお皿と空のグラスがあって、そういえば彼が食べ残したことなど一度もないことを思い出す。
「……もう」
 先ほどと同じように呟いて、けれど今度は自然と笑みが浮かんだ。

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ときレス小話【京也ネタバレスチル注意!】

ネタバレを含んでいるので畳みます。





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ときレス小話【剣人】

この話を書いてたら公式で透さんにやられたっていう。
せっかくなのでぺたり。

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 店内に残る最後の客を送り出し、美菜子はようやく一息を吐いた。今日はマスターが私用のため、午後は一人で切り盛りをしていたのだ。休日よりか人の出入りは少ないとはいえ、やはり一人でのやりくりは大変だ。それでも今日を乗り越えた安心感から、忘れていた空腹が訴えるようにきゅうっと鳴いた。咄嗟にお腹を押さえると、さらにもう一声、しかもさきほどりも大きな音が上がる。そう言えば忙しさにかまけて、昼食は朝食に作って余っていたスープを流し込むように食べただけなのを思い出す。
「何か食べよう…」
 美菜子は呟いて、ふらふらとキッチンへと戻ろうとする。
 と、カランカランと鳴るドアノブの音に、反射的に振り返った。いらっしゃいませと言おうとして、もう閉店時間を回っているのを思い出す。けれど「すみません」とこちらが言うより先に、相手はそのままずかずかと店内に入ってきてしまった。その見慣れた常連客の顔に、美菜子は二度瞬きをした。
「あれ、剣人さん?」
「飯、頼む」
「頼むって…すみません、今日はもう閉店です」
「なんでもいい。金は払う」
「もう、だからそうじゃなくて」
 きゅるるるるる。
 二人の会話に口を挟むように、三度目の腹の虫が鳴いた。しん、と二人の間に沈黙が落ちて、美菜子は頬に熱を感じながらそろそろと視線を上げた。
「……あ、の」
「なんだ、おまえも腹減ってんのか」
「そ、そうですよ! 今日はマスターもいなくて忙しくて、スープしか食べてないんです!」
「俺もそんなもんだし、じゃあ二人分で何か食い物」
「へ?」
「俺とおまえの二人分」
「で、作るのはわたし?」
「他に誰が作れるんだ?」
「…閉店だって言ってるのに」
「金は払う」
「わかりました。作ります。でも、材料がもうないから、有り合わせですよ?」
「いい。おまえの料理ならなんでも」
「…うれしいんだか複雑なんだか」
 もう、と美菜子は観念したように呟いて、キッチンへと戻る。殆ど何もない食材と余った残りものに暫く悩んで、結局ピラフを作ることにした。ちょうど牛バラ肉も余っていたことだし、肉類の料理が好きな剣人にはちょうどいいだろうというのもある。
 まずは玉ねぎをスライスし、電子レンジで加熱すしてからバターとサラダ油をひいたフライパンで炒める。玉ねぎが飴色になったところで牛バラ肉を追加し、暫く炒めてから残り物のご飯も投下。塩コショウに醤油を少々、最後にパセリをふりかけて出来上がりの簡単ピラフだ。
「はい、お待たせしました」
「サンキュ」
 カウンターの席に座った剣人に差し出したあと、美菜子は立ったままピラフを食べようとすれば、剣人は不思議そうに小首を傾げてきた。
「隣、座らないのか?」
「え?」
「そこ、座る場所ないだろ?」
「ええ、まあ」
「閉店して他に客いないんだし、隣来いよ」
 言うなり、剣人はぽんぽんと自分の隣の席へと促す。
 美菜子は数秒どうしようか悩んだあと、結局は空腹と今日一日の疲れに負けて、お邪魔しますと彼の隣へと並ぶように腰を下ろした。 
「いただきます」
「召し上がれ」
 意外と律儀な剣人が妙にかわいく見えた。そうして一口、彼の口へとピラフが運ばれ、そのまま無言で食べ進んでいく様にほっと息をつく。美菜子も同じように食べ始めて、けれど時折職業病的に剣人のコップへと水を注ぐ。いつも思うことだけれど、剣人の食べっぷりは豪快だ。そんな見事な食べっぷりを目の当たりにして、少しだけうれしいやら恥ずかしいやら。
 結局剣人の分にが多く盛り付けたのに、美菜子の方が食べ終わるのは遅かった。

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ときレス小話【京也】

「これで全部かな」
 言って、美奈子はメモ用紙を片手に、足元に置かれた荷物を確認する。
 今日はレストランの定休日とあって、美奈子は買い出しに来ていた。元々買う予定のものと+αを加えた結果、買いすぎたかなと若干の後悔が過る。それでも買ってしまったものは仕方ないし、多いとはいえ、一人でもなんとかなる量だ。
「よし」
 美奈子は気合いを入れるように呟くと、少し離れた場所で悲鳴が上がった。突然のことに驚いて声の方へと視線を向ければ、そこには広告用電光掲示板に、でかでかと「3M」と「X.I.P.」のメンバーが映し出されていた。そこここで女子高生から社会人らしい女性の悲鳴とも歓声ともつかない声を聞いて、美奈子は改めて彼らがアイドルなのだと痛感する。
 初めて出会ったときこそ「かっこいい」なんてときめいたりしたものだが、今となれば割と自己主張の激しい常連にしか見えなくなっていた。これも所謂「慣れ」というものなのかと、美奈子は暫くその電光掲示板を眺めていれば、近々セカンドシングルが発売すると京也が言っていたこと思い出した。
(常連さん、だし)
 マスターにも彼らを逃がすなとも(店の売上的な意味で)言われているし、今度ランチに来た時におまけの差し入れでも出そうかなどと考えていたところで、ふっと背後に立つ人の気配に気が付いた。え、と思ったときには相手の距離は必要以上に近づき、美奈子の耳元へと唇を寄せてきた。
 そして、
「そっちより、本物の方がもっとイケてるぜ?」
 などと囁いてきた。
 目はサングラスで隠されているが、その声と目立つ金髪ですぐに誰なのかピンときた。まさに今、周囲の女性が釘付けになっている二大アイドルグループの一つ、「X.I.P.」のメンバーの伊達京也だ。しかし美奈子は先ほど聞いた歓声としての悲鳴ではなく、お巡りさんこっちです的な悲鳴が上がる一歩手前なそれを飲み込み、代わりにジト目で相手を見返す。色のついたサングラス越しでは相手の感情は読み取れないけれど、見えている部分の唇は楽しそうに笑っていた。
「……京也さん、何してるんですか」
「何って、ナンパ?」
「アイドルが白昼堂々とナンパしないでください」
「俺と子猫ちゃんの仲だろ」
「どんな仲ですか」
「スキャンダルになるような親密な仲」
「違います。全然違います。というか、本当にここにいるのはまずいんじゃないですか」
「まあな。……だから、行くぞ」
 そう言うなり、京也は当然のように美奈子の足元に置かれた荷物を軽々と持ち上げてみせた。さすが男の人、と感心してから一拍置いて、はっと我に返る。京也さん! と呼びとめようとして、周囲の状況を思い出す。街のど真ん中で彼の正体がバレようものなら、阿鼻叫喚の地獄絵図になるのは目に見えている。美奈子は彼の隣に並ぶように駆け寄ると、小声で彼に声を掛けた。
「京也さん、荷物重いでしょ? 貸してください」
「平気だって。つうか、美奈子ちゃんがこの荷物の量に辟易してたんじゃねえの?」
「……いつから見てたんですか」
「ぱっと見りゃわかるよ。何せ、ただならぬ仲だからな」
「もう」
 茶目っけを含めて言う彼に、美奈子は呆れたような顔を向けた。けれどすぐに笑みを浮かべると、ちらっと彼へ視線を向ける。そうしてすぐに進行方向へと目を戻し、口を開いた。
「でも、ありがとうございます。助かりました」
「どういたしまして」
「今度、ご馳走しますね。センカドシングル発売記念も兼ねて」
「お、いいね。期待してるぜ」
「ふふ、任されました」
「ついでに、今から俺のランチを作ってくれたりしねえ?」
 最後にちゃっかりとしてきた京也の言葉に、美奈子は再び「もう」と言って見せたのだった。

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デートイベント小ネタ【天童】

「あ」
「お」
 まさに「ばったり」という表現がぴったり当てはまるように、二人は真正面からお互いの姿を確認した。
 今日ははばたき学園と羽ヶ崎学園の合同課外授業という名目で、はばたき市最大のアトラクションである遊園地へときていた。課外授業先が遊園地、あまつ私服での参加という時点で、殆どの生徒が全力で遊ぶ気でいるのは明白だった。当然美奈子も皆と同じように私服で来てはいたが、遊園地よりも他に気になることがあった。それは羽ヶ崎学園の生徒の中にいるであろう「彼」のことだ。相手の性格から考えて、サボる可能性はとてつもなく高い。しかもはば学だけではなく、はね学の生徒もいるのだ。そこに一般の来場者のことを考えたら、彼を見つけるのははっきりいって無理だろうと思っていた。けれど頭の片隅で「ひょっとしたら」と思う気持ちが引っ掛かっていて、同じような背格好の相手を見つけるとついつい目で追い掛けてしまっていた。
 そうしてもう何度目かわからない落胆した気持ちになっていたところへ、思い描いていた相手――天童壬が現れた。
「参加してたんだ」
「まあな」
 相変わらずの派手な私服に金髪という出で立ちな天童に、妙な安心感を覚える。それと同時に、彼と会えたことに「うれしい」と素直に思う自分がいて。けれど緩む頬を自覚して、慌てて顔を引き締めた。落ち着け落ち着けと内心で言い聞かせると、ふいに上着のポケットに入れておいた携帯電話が着信を知らせた。慌てて取り出してみれば、ディスプレイには奈津美の名前が表示されていた。美奈子は慌てて天童から背を向けると、通話ボタンを押して携帯電話を耳に当てる。
「も、もしもし?」
『ちょっと、あんたどこまでジュース買いに行ってんの? 先に乗り物乗っちゃうよ?』
「あ、あー、と。ちょっと、…はね学の友達と偶然会ってさ。だから奈津美たちは先に行ってていいよ。あとで合流するから」
『そう? じゃああとでね』
「うん、あとで」
 そう言って、美奈子は携帯電話の通話終了ボタンを押した。ら、ずし、と右肩口に重心が掛かったと思えば、天童は耳元で囁くように言う。
「はね学の友達って、オレ?」
「そう、だけど……て、近い!」
「うわ、ツレねーの」
 ぐいっと天童の身体を押せば、予想よりあっさりと彼は引いてみせた。背の高い天童を睨みつけるように見やるも、相手はそんなことに動じることなく――むしろ、楽しそうに笑っている。
「そんじゃ、行くか」
「…どこに?」
「だから、デート」
「え、ちょ、え?」
「だって、はね学の友達とデートするってことになったんだろ?」
「ちが…いや、違わないけど、いやでもそうじゃなくて!」
「ほら、行こうぜ」
「ま、まってまって! 天童くんだって友達がいるでしょ!」
「あー、なんかアイツらはナンパに燃えてるからいいんだよ」
「そ、そうなの?」
「そーなの」
 にっこりと笑顔で言う天童に、うっと美奈子は言葉に詰まる。天童のこういう顔はずるいと、美奈子は常々思わされてきた。いつもこのパターンから、なんだかんだで彼のペースに押し切られてしまうのだ。今回もそんな雰囲気がすでにしているものの、奈津美たちを放っておくこともできない。どうしようかと考えを巡らせていると、まるで見透かしたように天童は肩を竦めて見せた。
「乗り物一回で手を打つからさ、いいだろ?」
「……う、うん」
 戸惑ったように美奈子が頷けば、天童は当然のように手を繋いできた。驚いて顔を上げると、天童は気にした風でもなく前を見ている。そんな平然とした態度に、まるで自分だけがどきどきしてるみたいで美奈子はほんの少しだけ釈然としたない気持ちになった。こうして天童と会えたことも、乗り物一つ分だけの間でも一緒に居られることが嬉しいと思っているのは自分だけのようで。寂しいような悔しいような気持ちで、美奈子は足元に視線を落とす。
「なあ、何乗る?」
「えっと……」

→「観覧車、かな」
→「お化け屋敷とか?」
→「メリーゴーランドがいいな!」

さあどれ!笑


→「観覧車、かな」
「観覧車でいいのか?」
「うん。ゆっくりできるし」
「二人っきりになれるし?」
「そ、そうは言ってない!」
「はいはい」
「もう!」

→「お化け屋敷、とか?」
「へえ、意外」
「え? だめ?」
「だめじゃねえけど。でも、女子ってこういうの苦手なんじゃねえの?」
「得意ではないけど、こわいもの見たさっていうか…ほら、天童くんいるし!」
「割と下心あるんだな」
「違うよ!」
「よし、今日はいくらでも抱きついていいぜ?」
「絶対しない!」

→「メリーゴーランドがいいな」
「無理」
「やだ」
「考えても見ろって。俺とおまえが二人でカボチャの馬車に乗るとかねえだろ?」
「あるある」
「ねえって」
「じゃあ馬の方でもいいよ」
「それもねえって」
「えー」
「じゃあ俺、外で手を振る係りな」
「それじゃ意味ないよ!」

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全然いちゃつかなくて困ったので終了。

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