デビトのスチルイベントをみてついカッとなった。
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眠れない、とフェリチータはベッドの中で何度目かの寝返りを打った。時刻はとっくに零時を回っている。
明日も仕事があるのだから早く寝なくてはと、自分自身へ言い聞かせれば言い聞かせるほど、どんどん眠りから遠のいているように思う。
フェリチータは観念して起き上がると、ベッドから抜け出した。キッチンにいって温かいミルクでも飲もう。そうすれば少しは落ち着くはずだと信じて、パジャマの上にカーディガンを羽織った。
ランプを手に薄暗い廊下を進んでいく。この広い屋敷にはようやく慣れてきたけれど、こうして夜中に屋敷内を出歩くのは、まだ少し勇気が必要だ。
「お嬢?」
ふいに、背後から掛けられた声に驚いて肩が飛び上がる。ゆっくりと振り返った先には、フェリチータとは違い、手ぶらで立っているデビトの姿があった。
「こんな時間までナニしてんだァ? 夜更かしはお肌に悪いぜ、バンビーナ」
いつも通りの軽い口調で窘められたことで、フェリチータは安堵の息を吐いた。が、相手がデビトだと認識したところでじわじわと身体の内側から熱が広がっていくのがわかる。とういうのも、フェリチータが眠れないそもそもの原因は昼間にあったデビトとのやり取りによるものだ。
ミレーナという詐欺師を取り逃がしてしまったというのに、デビトは自分を叱るではなく、気遣ってくれた。しかも新しいリボンまでプレゼントしてくれたとあってはこれ以上落ち込むことはできなかったし、かといって無邪気に喜ぶこともできない。
極めつけは、髪にキスをされるほどの近い距離で見つめられたデビトの隻眼が、ずっと脳裏から離れないのだ。
父親とも違う、ルカとも違う、明確な「男性」というものを突き付けられたようで、どうしていいのかわからない。せわしなく打っていた鼓動はようやく落ち着いてくれたというのに、再び彼を目の当たりにしたら、またもや心臓はうるさく走り出した。
「…ちょっと、喉が渇いただけよ」
素っ気なく言って、フェリチータはデビトに背を向ける。
「怖い夢でも見ちゃったかァ?」
「そんなんじゃ」
ない、と最後まで言う前に、ぽんと頭にデビトの手が触れた。思わず顔を上げると、昼間のときよりは遠いが、それでも十分近くにデビトの顔があった。内心の熱が、一気に上昇するのがわかる。
いつもは意地悪そうな彼の目が、少しだけ優しく細められた。
「しょうがねえお嬢さんだな。オラ、オレがホットミルクでも淹れてきてやるから、バンビーナはベッドに戻ってな」
「それくらい自分で」
「こういうときは、素直に『グラッツェ』って言うのがイイオンナの条件だゼ?」
そう言うなり、デビトはフェリチータの髪を優しく梳いた。その手の動きだけでまるで全身が金縛りにあったように動けなくなる。唇が「へ」の字に歪んでいるのがわかるも、もはやこれ以上言い募ることはできそうにないことは、彼女自身もわかってしまった。
「………グラッツェ」
「プレーゴ」
どうにか悪あがきのようなお礼を言って、フェリチータは自分の部屋へと踵を返す。どうせならデビトがミルクを持ってきてくれる前に寝てしまえたらいいのにと。
火照る顔を両手で包んで、フェリチータはささやかな抵抗を試みることにした。
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私がデビトに夢を見すぎている件\(^o^)/
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