学園指定のスクール水着というのは、布地が多く、デザイン性とは無縁といってもいい。大体が紺色で統一されているそれは、マニアックな思考からすればそれもまた良しと思わなくもないのだが、やはり健全な男子高校生からすれば、布地の少ない水着の方に反応してしまうというもの。
水着を持って来いと言ったのは自分だったが、こんな展開は予想していなかった。そもそも学園の制服がワンピースということもあって、女子の体型はわかりにくいのだ。そんなにじっくりと見ることもないが、まさかこんな、ビキニを着た彼女の胸が豊満なアピールをしてくるなんて。
ついつい向いてしまう胸の谷間から、意識的に視線を逸らす。けれど話しをするのに目を逸らしっぱなしにもできず、結局視界に相手の胸が映ってしまう。胸を覆うビキニのカップから溢れるような胸に、内心での動揺を必死で押しとどめる。落ち着け、ともはや何度目かわからない叱咤を繰り返し、佐伯は彼女にエプロンを差し出した。
「というわけで、これ着て接客な」
「…………佐伯くんの鬼」
「なんだよ」
「なんでもないですよーだ」
べーっと思い切り舌を出したあかりは、佐伯の手からエプロンを奪うように受け取ると、さっさとエプロンを身につけ始めた。後ろ手でエプロンの紐をリボン型に結ぶと、くるりと振り返る。その姿を見て、うっと思わず言葉に詰まった。ビキニとかワンピースとかの問題より、そもそも水着であることが大問題な気がする。エプロンをつけたことにより水着は隠れてしまい、前からみたらまるで裸エプロンだ。
「…………計算外だった…」
「なにが?」
「なんでも!」
「いた!」
ぺし、と八つ当たりで彼女にチョップを食らわせると、佐伯はくるりと背を向けた。平常心平常心とぶつぶつと繰り返し、明日は違う作戦にしようと心に誓ったのだった。
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ふいに友好状態で夏の珊瑚礁イベントを思い出しての小ネタ。
佐伯という男は絶対裸エプロンとかに過剰に反応すると思うんだ・・・
[2回]
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