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イチジ九

すべからくどうしようもない日常のあれこれ。 ネタバレ盛り沢山ですので注意!

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ゆるぼリク2 ルカデビトパーチェ

 部屋の主であるルカと、幼馴染のパーチェとデビトが三人揃って腕まくりをしながら部屋の掃除をしていた。パーチェは特性ラザニアにつられてそれなりに手伝っているものの、完全に巻き込まれたデビトのやる気は皆無だ。それでも適当に掃除をしているふりをしていると、ふいにパーチェが声を上げた。
「あれ? ルカちゃん、この箱なに?」
「え、どれです……ああ! それは開けてはいけません!」
「よし、パーチェ。開けろ」
「りょーかい」
「デビト!」
 退屈していたところに面白そうなネタが降ってきて、それを逃す二人ではなかった。パーチェはルカの制止も無視して、しっかりとした作りのアンティーク調の箱を開けた。箱は思ったよりもあっさりと開くと、箱の中にはぎっしりと紙のようなものが敷き詰められているように保管されていた。否、正しくは紙ではなく、写真だ。パーチェが一枚その写真を持ち上げる。そこには幼い少女が一人、写っていた。赤い髪に碧色の瞳の少女を、二人は当然知っていた。この写真よりは随分成長しているが、その少女は間違いなくフェリチータだろう。
「……おい」
 箱の中の写真を束で掴んで確認すれば、その殆ど、というかすべてにフェリチータが写っていた。たまに彼女の母親であるスミレと写っていたり、ルカと一緒に笑っている写真もあるが、どの写真にも必ずフェリチータが写っている。その事実とこの写真の量に、さすがのデビトも引きつったような表情をして、呻く。どうしよう。この幼馴染が病的なまでにお嬢コンプレックスなのは周知の事実ではあったけれど、これ以上深刻化する前に止めた方がいいのだろうかと、らしくもなくデビトは心配になった。
「うわあ、ルカちゃんすごいな。これ全部お嬢?」
「いやまてパーチェ。他に突っ込むことがあんだろ」
「え? なんかある?」
「……このバカが」
 呻いて、デビトは片手で頭を抱えた。
「この写真のお嬢、かわいいなー」
「でしょう! でも、こっちの方がかわいんですよー」
「え、どれどれ?」
「バカパーチェ、テメエもルカに感化されてロリコンにでも目覚める気か」
「私はロリコンじゃありません!」
「じゃあこの写真はなんだっつーの」
「お嬢様の記録を残しておくことは罪じゃないでしょう!」
「…で、当然バンビーナはこの大量の写真のこと、知ってんだろうな?」
「……」
「目ェ背けんな」
「いいじゃんデビト、細かいことはさ。だってほら、お嬢の寝顔とかかわいいよー」
「バッカ、今のお嬢が一番に決まってんだろ。そんなに子供じゃナニもできやしねえ」
「はあ!? さらっと何とんでもないこといってるんですか! 昔のお嬢様も今のお嬢様もかわいらしく可憐で素敵で聖域に決まってるじゃないですか!」
「……おい、コイツはいつ病院に連れていけばいいんだ」
「でもさー、ルカちゃんばっかりずるいよなー。オレも今度お嬢と一緒に写真撮ろうかな」
「だめです」
「なんで!?」
 思ったよりも冷静なルカの突っ込みが飛んできて、パーチェはすぐさま立ち上がる。
 三人揃ってにらみ合うように顔を突き合わせれば、何故か不穏な雰囲気が立ちこみ始めた。
 すっかり掃除そっちのけになり、あまつ論点がズレていることにも気付かず、ただただ殺気が部屋に充満する。
 そうして一触即発というまさにその時、「ホウ!」という鳴き声とともにばさりと羽音が響いた。それは話題の中心であるフェリチータの友人であるフクロータで、彼女は三人をそれぞれ嘴で存分に突いてやると、羽を広げて入ってきた出入り口へと飛んでゆく。そうしてその入り口には、半眼で三人を見据えているフェリチータの姿があった。
「おおおおおおお嬢様!? い、いつからそこに!?」
「……結構前からいたんだけど、三人とも随分熱心みたいだったから」
「いや違うんです違うんですお嬢様ァ!」
「今さらンなこといってもしょうがねーだろォが」
「いやでもさ」
 頭を抱えて喚くルカと、その隣で諦めたように肩を竦めるデビトとは対照的に、パーチェはいつもの調子で口を開いた。写真の中の幼いフェリチータと、今目の前にいる彼女を見比べる。うん、と頷いて、パーチェは笑った。
「お嬢はやっぱり、昔だろうと今だろうとかわいいよ」
 その一言に、部屋の中は再び制止した。
 ぴしりと亀裂が走るような音が聞こえた気がしたのは、おそらく気のせいではないだろう。そうして、先ほどまで冷めた目で見つめていたはずのフェリチータが、うっかり頬を赤く染めているのもよろしくないと、常に第三者的立ち位置をキープしようと努めているデビトはそんなことを思った。
 あと数秒したらルカが爆発する気配を察し、その前に先手を打つかと考える。
「バンビーナ!」
 そうデビトは彼女を呼んで、相手の手を掴んで部屋を飛び出す。すると当然のようにパーチェが後をついてきた。
「二人とも! 待ちなさい!」
 背後からルカの声が追いかけてくるも、当然待つわけもなく廊下を駆け抜けていくのだった。

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