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イチジ九

すべからくどうしようもない日常のあれこれ。 ネタバレ盛り沢山ですので注意!

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俺と受験と夏休み(ヒバツナ文)②


 夢をみた。
 楽しみにしていた夏休みに入った途端、あの凶悪な家庭教師に最強(恐)の風紀委員長だった雲雀恭弥の元へ泊まりで受験勉強をしてこいだとか言われるそんな夢。
 確かに今年は高校三年生で大学受験を控えてるからもしれないけどそれにしたって追い込まれすぎだろ! と、綱吉は自分で自分にツッコミを入れたところでぱちりと目を覚ました。目を覚ましみたら。なぜか目の前には健やかに安眠なさっている雲雀恭弥の寝顔があって綱吉は悲鳴を上げかけた。叫び声を自分の手で咄嗟に塞いだ自分を褒めてあげたい。だってこの距離で叫んだりしたら雲雀の機嫌を確実にそこねて自分は安眠どころか永眠確定だ。雲雀の寝起きの悪さは中学時代に嫌になるほど(暴力的に)たたき込まれている。

(でもこの状況はどうしたら!)

 綱吉は内心で頭を抱えた。寝ている雲雀を起こすなんてこと、そんな恐ろしいことを綱吉ができるはずはない。けれどこの状態も大変心臓に悪いんですけど! と、ばくばくとうるさく鼓動を刻む心臓の音しか聞こえなくなっている。と。
 綱吉が一人で葛藤をしている目の前で、もそり、と雲雀が動いた。続いて伏せられた瞼が上がって、隠されていた黒目が現れて綱吉を映す。

「おはよ」
「……オハヨウゴザイマス」

 ていうか今何時?
 挨拶を返しながらどこか冷静な頭がそんなことを思った。雲雀はふわあとあくびをして身体を起こすと、枕元に置かれた携帯を掴んで開いた。

「六時か」

 携帯のディスプレイをみた雲雀がいった。六時。それは朝ではなく夕方のことだろう。開けられたままのカーテンから見える空は、未だ明るいとはいっても確実に夜へと色を変え始めていた。

「さて」

 携帯を閉じて、雲雀は綱吉に向き直った。相変わらずの無表情に綱吉はどうしていいかわからず、言葉を失っていた。
 が。


 ぐきゅるるるるぅ…


「……ッッッ!?」
「ワォ」

 漫画じゃあるまいに! と突っ込みたくなるような己の空腹の叫び声に綱吉は声にならない悲鳴を上げた。今更誤魔化すことなどでないのはわかっているけれど、思わず腹を押さえて雲雀を見やると、彼は随分と楽しそうだ。

「お腹、空いたの?」
「……はい」

 訊かれた問いに、俯きながらも素直に頷く。
 よく考えてみれば、昨日は帰宅していきなりリボーンに今日のことを伝えられたのだから夕飯どころの騒ぎではなかった。どうするべきか、日頃使わない頭をひねってうんうん唸っているといつの間にか朝を迎えてしまっていて、そうこうしてる内に雲雀が現れたものだから逆らうことなど出来ずに彼のバイクに連行された今現在in雲雀邸。あれ、最後の方は誘拐とか拉致とかそういう犯罪的ニュアンスな気がするけど、そんなこと今更このひとにいっても無意味だ。と、綱吉が自己完結し終わったとこで再び腹の虫が鳴いた。

「仕方ないね、ピザでも取ろう」

 雲雀はため息を吐いて、再び携帯を開いた。慣れた手つきでダイヤルを押してる間にテーブルの上に折り畳まれたチラシを開いた。どれにするの、と目で訴えられるが、綱吉はお任せいたします! とやはり目だけで言葉を返した。そんなやり取りをしている間に電話の相手が出たらしく、雲雀はピザを二枚、サイドメニューにポテトとサラダ。ついでに飲み物もつけてオーダーを終了する。
 微かに聞こえる電話口の相手が震えるような声音でメニューを確認し、以上でよろしいですかと聞かれると雲雀は即座に言葉を返した。

「五分でこなきゃ噛み殺す」
「雲雀さん五分じゃピザはできませんよ!」

 思わず突っ込みを入れてしまう綱吉。
 でもピザは五分で配達されてきました。
 何で!

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P4小話

主人公&陽介

主人公の名前は優夜です。



-------------------



 部屋の荷物を片づけている手を止めて、ふと優夜は顔を上げた。その視線の先にあるのは、少しだけ古ぼけた一台のテレビ。そうして、そのテレビの上には黒縁のメガネがあった。
 優夜は立ち上がってそのメガネを手に取り、そのまま耳へと掛けてみる。そうして辺りを伺いみるが、変化は何もなかった。あるとすれば、それは確実に荷物が片づけられているということくらいだ。

「おーい、優夜ー!」

 つと、階下から聞きなれた声が自分を呼ぶ。その声に反応してメガネを掛けた状態のままに降りていけけば、そこには予想に違わず花村陽介が玄関に立っていた。そうして、優夜の姿を見るやいなや、一瞬ぎょっとした顔を見せて、口を開く。

「おま、何かあったのかよ!?」
「? 何が?」
「それ! メガネ!」
「…ああ」

 陽介の指摘に彼の困惑している原因を知る。優夜は掛けている黒縁のメガネに触れて、答えた。

「何となくだ。深い意味はない」
「…焦らせんなよ」

 がっくりと、陽介は大げさな仕草で肩を落として見せた。それと同時に彼が手に持っているビニール袋ががさりと音を立てたので、そこで優夜は初めて彼の手にあるものの存在に気がついた。

「それ」
「ん?」
「何か持ってきたのか?」
「お、そうだ! 今日からジュネスで売り始めるシュークリームなんだけどよ、うまかったからおまえと菜々子ちゃんに持っていこうと思って。一応堂島さんの分と三つ持ってきたけど、甘いの平気だったか?」
「多分平気だ…悪いな」
「今さら何いってんだよ、相棒」

 苦笑をこぼす優夜に、陽介は茶化すように笑うと「相棒」部分を強調するように言って、肩を叩く。「相棒」。その単語を聞いて、優夜はここ数日に何度も過ぎった形容しがたい感情を覚えた。けれどそれをぐっと堪え、陽介へ上がるように促す。居間に通して、自分はお茶を沸かすために台所へ立つ。ヤカンに水道水を注いでコンロの上に置く。チチ、と短く火花の散る音の後、すぐにコンロに火が点った。

「なあ」
「なんだ」
「実はさー」
「うん?」

 シュンシュンと沸騰を知らせるヤカンの火を止め、急須へ茶葉を入れたところで居間から投げられた呼び掛けに振り返る。すると、陽介はいつの間にかオレンジ色のメガネを着用しているものだから、それを見た優夜はさきほどの陽介と同じようなリアクションをとってしまう。そんな自分に対して陽介は笑うと、がしがしと乱暴に頭を掻いて、口を開く。

「何つうか、オレもこれ持ってないと落ち着かないっていうか…お守りみてえな感覚?」
「わかるな」
「だろ?」

 沸騰したヤカンのお湯を急須に入れて、二人分の湯呑みを持ってやってきた優夜に陽介は安心したような顔を見せる。
 そうして、二人分のお茶を注いでいる間。お互いに間には奇妙な沈黙が落ちた。かたり。陽介がメガネを外し、テーブルの上に置く。それを見た優夜も同じくメガネを外そうとして、けれどそれより先に、陽介の手が伸びてきた。彼の手が優夜のメガネを外すと、今度はそのまま陽介の元へと掛けられる。

「似合う?」
「……うーん」
「…似合わないってことな」
「まあ、そうだな」

「いいけど! そう言われる予想はついてたから気にしねえけど!」
「拗ねるなよ」
「拗ねてねーよ!」
「わかった」
「おまえな……じゃなくて。なあ、オレとおまえのメガネ、交換しねえ?」
「交換?」
「そう」

 こっくりと、妙に神妙な面もちで頷く陽介。優夜は彼からテーブルの上に置かれたメガネへと視線を外せば、再び、あの例えようもない感情が湧き上がってきた。

「……そうだな」

 それでも何とか呟くような声で返し、頷く。ぎゅっと湯飲みを掴む手に力が入り、そっと嘆息を零す。

(わかっていたことじゃないか)

 そう。初めからわかっていたことだ。この街には、両親の都合で一年しかいないことは。
 最初にそれが決められた時は、特に興味がなかった。ただ、少しだけ面倒だな、とは正直に思ったけれど。あまり面識のない親戚の家に預けれるのはやはり戸惑いと煩わしさが伴う。けれど一年間だけというきちんとした期間が決められているからこそ、優夜はそこまで後ろ向きにならずに済んだのも事実だ。
 けれど、今はこの一年が終わってしまうことが、ひどく。
 寂しい。

(……ああ、そうか)

 唐突に、ここ最近で悩まされていた感情の正体に気がついた。『寂しい』のだと、そんな感情を持つ機会が少なすぎたことにも、また、苦笑を零した。
 この街での一年間は、苦しいことの方が多かったかもしれない。けれどそれでも巡り合って、共に戦った彼らと。堂島親子のように、この街で出会えた人たちとの絆は例えようもなくかけがえのないものとなった。

(でも、俺は)

 春がくれば、この街には自分だけがいなくなってしまう。

「何つう顔してんだよ」
 ふと。
 陽介の声に顔を上げれば、彼はいつもの陽気な表情に少しだけ寂しさが入り混じっているように見える。

「離れたって、オレたちずっと友達だろ?」
「友達以上でも困るだろ」
「当たり前だ!!」

 自分の考えを見透かして励ます陽介に、少しだけひねくれた言葉を返す。こんなたわいもないやり取りすら楽しくて、大切で。
 残された時間を噛み締めるように、優夜は目を細めるようにして。
 微笑った。





---------------

P4って難しいな……!

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ジャンプって偉大(骸綱小話)

今週のジャンプで大層MOEて、公式雲雀綱!ともんどうってごろごろしてたくせににょっきりと出てきたネタが骸綱っていう、ね!
なんかもう、ツナと雲雀と正チャンだけっていうフレーズで、骸はそれとなく感づいてんじゃないの?そして話してくれないことにヤキモチ妬いたりしてんじゃないの?とか考えたら妄想がノンストップ。これだからヲタクは。
そんなわけでなんとなく骸ツナっぽいような感じです。
最近どのカップリングでもがっつりくっついてるのより、限りなく「&」に近い関係にMOEる。幻水5のカイ王はくっついてなんぼだと思ってるけど。



------------------------


「ボンゴレ、僕に何か隠し事をしてませんか?」

 と。
 唐突に現れて人の仕事部屋にあるソファーに座り、我が物顔で寛いでいた六道骸という男は何の前ふりもなしにそんなことを言ってきた。

 その言葉に俺はぎくりと身を固めるものの、それを一瞬でやり過ごして何食わぬ態度を保つ。俺も成長したなあなんてぼんやりと思いながら慣れたイタリア語の書類を読み上げ、サインを走らせる作業を続けたまま、口を開く。

「何かって、なに?」
「質問を質問で返さないように」

 骸はソファーから立ち上がると、とん、と軽くデスクに手を置く。それでも俺は書類から視線を外さずにいれば、その書類が手元から抜き取られて宙を舞う。あ、と間の抜けた声を上げ、ついでに顔も上げてしまった俺を嘲笑うかのように骸が口角を上げて笑みを張り付かせていた。

 宙を舞う書類は当然重力に従って落下し、バサバサと音を起てながらそこここに散らばった。あーあ、なんて声を上げれば、骸は右手で俺の左手首を、右手で顎を掴んできた。

「骸が拾えよな、書類」
「君が僕を欺こうだなんて、出来ると思わない方がいい」

 人の話なんてこれっぽちも聞く耳を持たず、骸は一方的に言葉を告げる。そうして、目の前にあるオッドアイの目が細められれば、本当に何もかもお見通しなのではないかと不安になった。駄目だ。いくら見通されていたとしても、自分の口から今回の計画を話すわけにはいかない。いつ。どこで。誰が聞いているのかわからないのだから。水面下で進めているこの計画は、これから先の未来の為に必要なこと。それを成功させる為にも、雲雀さんと正一くん以外に話すわけにはいかない。そうしてその後はすべて、過去の自分たちに掛かっている。だから、試されるかのようにふるいにかけられても、俺は知らぬ存ぜぬを貫き通さなければ。

「別に、騙し合いでおまえに勝とうなんて思わないよ」
「ほう、さすがはボンゴレ十代目と言ったところですか。随分頭が回るようになりましたね」

 ぐっと、顎を掴む手に力が入る。痛い。
 でも視線を逸らさずにいれば、骸は手と顎を解放してくれた。目と口元は相変わらず食えないような笑みをたたえ、俺は軽く捕まれていた箇所をさする。と、急に骸はくるりと背を向けて、部屋の出入り口である扉に向かっていく。

「君が話さないというのなら、僕は勝手にさせてもらいます」
「おまえの勝手なんか今に始まったことじゃないだろ」
「それはそうですけど」

 と、骸はあっさりと俺の言葉を肯定する。コノヤロウ、と思わず出かかった言葉を寸で飲み込み、ため息で誤魔化す。骸はドアノブに手を掛け、振り返った。

「ただ、君がいなくなるようなことになるのは、許しませんからね」
「は?」
「僕の楽しみが減るのは困ります」
「ッ、おまえなあ!」
「ではボンゴレ、また」

 ガタン! と椅子を蹴って勢いで立ち上がる。けれど、骸はそれにはお構いなしに早々に逃げを打った。ぱたん、と重厚な見かけより軽い音を起ててしまった扉を睨み、俺は再び椅子に座り直した。上等な椅子が俺の身体を受け止め、軽く沈む。そのままデスクにへばりつくように項垂れて、再びため息。

「書類、結局片付けるの俺かよ」

 胸に渦巻く感情を悪態で誤魔化して、俺はぽつりと呟く。
 「また」だなんて一方的な約束を投げてきた骸に、ずきりと心臓が痛んだ。
 確実に来る「明日」があるとは、限らない。それは誰より一番あいつの方がわかっているだろうに、わざわざ言ってくるのは骸なりの嫌みだろうか。
 どこまでも食えない男だ、と俺は苦笑する。

「本当、騙し合いであいつに勝とうだなんて思わないよ」

 そう独りごちて、俺は肩を竦めるしかなかった。
 結局のところ、守りたいもののリストにしっかりと六道骸の名前も載ってしまっているのだから。
 だからこそ、あいつにバレる前にすべての算段を終わらせなくてはいけない。
 骸に気づかれた時にはどうか、すべて無事に終わって欲しい。

 その時に例え俺がいなくて、勝手なエゴだと骸に笑われても構わないから。 

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キュリオス、発進!



マイカーというものをようやく手に入れました。名前はキュリオスです。その為のオレンジカラーです。
これで交通手段の幅が広がるぜやったね!
だがしかし、ペーパードライバーな私です。感覚を取り戻すためには乗り回さなくてはいけない。
つまりは死のドライブが決行されるわけです。

生け贄は地元の連中に決定されております。独断で(にこ!)

ひとまず一番最初の乗車はキャンチョメとウマゴンです。笑




以下、ジノスザ的小話。




 ↓




 相手の肩を掴んでその勢いのままに壁に押し付けた。だん! と思い切り壁に背中が当たれば呻く声が漏れて、次いで非難がましい視線を向けられる。その深緑の双眸に宿る光は強いけれど、またその反面、ひどく脆くも見える。睨みつけるかのような鋭い視線を真っ向から受け止めれば、少しだけ目を細められた。「ジノ」と彼が自分の名前を呼ぶのが合図のように、その唇に食いついてやる。キスと呼ぶには荒々しい行為はやはり彼にはお気に召さなかったらしい。押さえつけられている腕から何とか逃れようとしているみたいだが、ここは身長差が有利となった。身体全体を使って覆い被さり、振り解けないようにしてやれば次に彼が取る抵抗は、口咥内に差し込んでいる舌に噛みついてくることだろう。それは以前にもされているので学習済みだ。だから、噛みつかれる前に唇を離して、代わりに首筋へ吸い付いた。また「ジノ」と咎めるように名前を呼ばれたので、吸い付いている首筋に犬歯を立てるとまた、呻き声が上がる。

「っ、ジノ、やめろ」
「嫌だ」
「ジノ」
「…本気なのか、スザク」
「なにが」
「皇帝陛下の暗殺だ」
「……本気だ」
「スザク」
「俺は本気だ。だから離せ」
「スザク」
「離せ、ジノ」

 間近で見ても、その眼には揺るぎない強さを感じるのに。どうして。こんなにも脆く、危うい存在に彼が見えてしまうのだろう。
 「スザク」と彼の名前を呼ぶ前にふと、つい先日、彼のロッカーから拝借した学園生活の一コマを写した写真の数々が脳裏を過ぎる。知らない表情。知らない、笑顔。同じナイト・オブ・ラウンズとして戦って、それなりの時間を共に過ごしてはきたけれどあんな風に笑うスザクを見たことなんてなくて。それでも文句を言いつつ自分を傍に置いてくれることに少しだけ自惚れていた。特別なのだと。そう思いたかった。けれど、結局あの写真のような表情(かお)をさせることができないのかと思うと、なんとも言えない感情に襲われる。
 すきなのだ。スザクのことが異性だとか同性だとか、そんなものを飛び越えたところで彼がすきだ。だから、彼には笑っていてほしいと思うのに。こんな顔をさせたくなんかないのに、と。そうは願っていても、結局は自分の一人芝居に他ならない。スザクは真っ直ぐにジノを見つめ、ひどく冷静な声音で言い切った。

「言っただろう、必要なのは結果だ」
「っ!」

 ぎり、と奥歯が軋むほどに噛み締めた。
 そうして、言葉を発する為に息を吸い込んだけれど、自分が何かいうよりも早く「スザク君」と別の声が割って入ってきた。シュナイゼルだ。
 二人は同時にそちらへと視線を向ければスザクにのみ向けて、こちらに来るように促される。もちろんそれには、ジノに対して彼を解放するようにとの有無を言わさぬプレッシャーも込められている。

 結局なす術もなく黙ってスザクを解放すれば、彼はジノに眼を合わせることもなくシュナイゼルの許へ消えてしまった。

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ジノスザもどき。

以下、なんとなくジノスザです。


----------------


 最近のジノ・ヴァインベルグには気に掛かることがあった。
 それは同じナイト・オブ・ラウンズで、ナンバー7の枢木スザクのことだ。彼は自分とは違って生粋のブリタニア人ではない。イレブンで、つまりはニッポン人、というやつだ。
 スザクは名誉ブリタニア人ではあるけれど、いつも故郷であるニッポンのことを誇らしく思っていたのを知っている。もちろん、表だってそんなことは言えるはずもないのだが。
 けれど、ジノはそんな真っ直ぐなスザクが気に入っていた。貴族だ公爵だと、いつでも誰かの足下を掬うのに虎視眈々と目を光らせる輩の中では、スザクは紛れもなく異端だ。しかもイレブンということで、更に奇異な目で見られている。それでも自身の信念に向かって突き進むスザクはジノにとってどこか羨ましい存在でもあった。

 しかし。

「スザク」
「やあ、ジノ」

 見慣れた後ろ姿を呼び止めれば、振り返ったスザクの表情に知らず、息を飲む。
 いつからだろう。彼の目の色が変わり始めていると思ったのは。
 きれいなはずの深緑の瞳が、どこか遠くを捉えている気がするのは気のせいだろうか。

「…いや、アーニャを見なかったか?」
「アーニャ? いいや、こっちには来ていないけれど」
「そっか、悪いな」
「見かけたら声を掛けておくよ」
「ああ、頼む」

 スザク相手にこんな、裏を探るような態度はしたくなかった。けれど、やはり今の彼は出会った当時とは確実に変わってきているのがわかる。その変化はやはり、ユーフェミアが亡くなられた時からだと気がついて、ジノは胸中でため息を吐いた。
 ジノは「じゃあな」と軽くスザクに手を振り、背を向けた。自分のブーツと、遠くなるスザクの足音が奇妙に重なる。そうして、相手の足音が聞こえなくなったところで、ジノは足を止めた。

(頼むから)

 苛立たしげに前髪をかき上げて、ジノは胸中で独りごちる。

(頼むから、おまえは墜ちてないでくれよ。スザク)

 まるで縋るような思いで。
 ジノはひたすらに、願う。




 ――――おまえをこの手で、殺したくはないんだ。 




-------------------

ギアスって、どうにも雰囲気は暗くなると思う…内容が結構あれなだけにね!orz
えむこにOPのジノを指摘されたら居ても立っていられなくなって、こんな感じです。
ジノの絶対忠誠がブリタニアに掛かってるとは思わないんですがねー、どうなんだあああああああああ。
いついかなる時にギアスは裏切る人がでるかわからないのが怖い。

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