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イチジ九

すべからくどうしようもない日常のあれこれ。 ネタバレ盛り沢山ですので注意!

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天地小話

好感度が高い天地に高級チョコレートを渡すと断られるという衝撃を知ってカッとなった結果がごらんのありさまである。

バレンタインって今更っていうか時期的にはホワイトデーだよ!
とかいうつっこみはしてはいけないのである(`・ω・´)

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 来る2月14日は言わずもがなバレンタインデーである。
 あかりはいつものスクールバッグとは別に紙袋を用意していた。その中にはバレンタインデーというイベントにしっかり踊らされている証拠品が入っていた。中には何かあったときのための義理チョコに思い切って奮発した有名ショコラティエが作った高級チョコ。そして最後は手作りチョコだ。渡す相手は決めてある。が、どのチョコを渡すかは決めていない。本当は頑張って作った手作りチョコを渡したいところなのだが、如何せん去年の出来事がトラウマレベルで脳裏に焼き付いている。どちらかと言えば器用とは言い難い料理レベルではあったが、本当にここまでかと自分自身にがっかりしたものだ。なのでそれからは少しずつ成長出来るような料理レシピを千代美が調べて密の元で特訓し、落ち込みそうなときは竜子に叱咤激励され、有名お菓子食べ歩きマスター(自称)のはるひに合格点をもらえるレベルまで達したのだ。よくよく考えたら自分はなんて良い友人に恵まれているのだろうか。それらのことを思い出しながら感慨にふけっていれば、外からお姉ちゃーん! と自分を呼ぶ声で我に返った。お隣に住む小学生の男の子の声だ。あかりはスクールバッグと紙袋を手に、階段を駆け下りる。けれどやっぱりどちらを渡すかは決められなかった。


 ざわざわといつもより色々な意味で賑わう廊下を通り抜ける。目指すは二年生の教室だ。手には今朝持参した紙袋が握られていて、中には高級チョコと手作りチョコの二つがある。結局どちらを渡すか決めかねていて、どちらももってきてしまった。
 と、
「先輩!」
 背後掛けられた声に、思わずびくっとしてしまう。
「あ、天地くん…」
 探していたはずなのに、こうしてチョコを渡す本人を目の当たりにするとしり込みしてしまう。
「どうしたの? 二年の廊下なんかうろうろしちゃって」
「え、えと…ほら! 今日バレンタインでしょ? だから」
 いって、あかりは紙袋の中に手を入れた。指先が手作りのラッピングの方に触れて、けれどすぐに高級チョコを掴む。そのままお店の名前が印字されてきれいに包装された小箱を天地へと差し出す。彼がここのお菓子が好きなことはリサーチ済みだ。だから、やっぱり去年よりレベルアップしたとはいえ、去年のようにがっかりした彼の顔を想像したら気が引けてしまった。だったらおいしさが保障されているものをプレゼントし方が、相手も自分も満足するはずだ。
 そう、思ったのに、
「…………いらない」
 数秒の間の後、ぼそりと天地は言った。その言葉に数回瞬きを繰り返したあと、え、とあかりは呟いた。天地くん、と彼の名前を呼ぶ前に、彼は早々に身を翻してしまう。
「いらないから!」
 今度ははっきりとそう言い残して、天地は来た道を戻るように走っていってしまう。彼が遠くなっていくのをしばらく見送ったあと、あかりはあれ? と首を傾げる。おかしい。こんなはずじゃなかったのに。有名お菓子ブランドの名前が印字されたチョコを片手に、あかりは立ち尽くしてしまう。
「何してんの!」
 つと、背後から声が上がる。振り向く間もなく、がしっと右腕が取られる。
「は、はるひ?」
「アンタ、昨日必死こいて作ったチョコ、どないしたん!?」
「あるけど」
「なんでそれ持ってて違うチョコ渡してんの!?」
「え、だってやっぱり、わたしの手作りチョコより有名な方がいいと思って」
「ばか!」
 ぴしゃり、と強い口調で叱り飛ばされて、あかりは目の前がチカチカする。しかしそんなこちらの事情などお構いなしに、はるひは言葉を続ける。
「アタシのお墨付きやで! だからほら、追いかけんと!」
「え、え?」
「はやく!」
「はい!」
 殆ど勢いに乗せられるような形でもって、あかりは走り始めた。途中、氷上に遭遇して廊下は走らない! と怒られてしまうものの、ごめんなさい! とだけ応えて止まることは出来なかった。
 あまり身長差はないものの、さすが男の子というべきところか。天地の姿はすっかり見失ってしまった。階段の踊り場まで来て、あかりは三階と一階のどちらに行くか悩むと、制服のポケットに入れておいた携帯電話が震えた。
「『天地くんは校舎裏で見かけたわよ』」
 差出人である密からのメールを声に出して読み終わったのと同時、あかりは階段を駆け下りていった。


「天地くん!」
 はたして密の助言通り、人気のない校舎裏に彼はいた。天地はあかりを見て、明らかに不機嫌な顔をしてみせた。つり上がった目に、挫けそうになる。
「あの」
「いらないって言ったよね?」
「違うの」
「何が違うの?」
「本当は、その」
 言葉を途中で止めて、あかりは紙袋の中に手は差し込む。走ってきたせいでちょっとよれてしまったリボンで包まれた、手作りのチョコレート。ラッピングももちろんお手製だけれど、やっぱり有名店に比べればどうしたって安っぽい。
 でも。
 彼のためにと思って、作った。それだけは、そこだけは高級店に勝てるはずだ。
「本当は、こっちを渡したかったの」
 言って、あかりは手作りチョコを天地に差し出した。ら、予鈴の鐘が鳴った。午後の授業が始まってしまう。けれど天地もあかりも校舎に戻る気配を見せず、黙り込んだ。
 そして、
「……最初からそういえばいいじゃん」
 ぼそり。
 拗ねたように、彼は呟いた。
「だって、去年のが散々だったから」
「去年は去年、今年は今年」
「な、なにそれ!」
「いいからそれ、はやくチョーダイ?」
 両手を差出し、天使スマイル全開で天地が笑う。なにそれずるい、とあかりは思うものの、結局口には出せずに手作りチョコレートを彼に渡したのだった。

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卒業式小話

今日はバンビたちの卒業式よ!
ということで、出勤途中で琉夏を受信したので琉夏小話。
本当GS3っていうかGSシリーズが好き過ぎてたまらないわ。文化祭が楽しみすぎて溶けそう。


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 そこここで泣いたり笑ったりと教室中が騒がしい。
 琉夏は教室で行われている喧噪を他人事のように見やりながら、つと、机の上に置いた卒業証書を見やる。黒い筒に仕舞われたそれは、小学校でも中学校でも今日と同じ卒業式にもらったものだ。これを受け取るのを意味するところは、つまり無事はばたき学園を卒業できたということ。明日からは――正確には、この学校を出た瞬間にはもう、この学校の生徒ではなくなる。
「……美奈子」
 ぽつりと、琉夏は無意識に幼馴染の名前を呼んでいた。その瞬間、がたんと席を立つ。そうして兄を呼ぶのと同時に卒業証書を投げつけた。
「わりぃ、それ預かってて!」
「どこ行くんだ?」
「美奈子のとこ!」
「…そうか」
 ふっと目を細めて笑うと一瞬目が合うも、彼はすぐに早く行けとばかりに目で促してきた。それに琉夏は軽く頷くことで返すと、教室を飛び出す。教室の外も同じような光景が広がっていて、ほんの少しうんざりしたけれどそれくらいで止まる気持ちではない。どうにか彼女の教室まで辿りつき、殆どクラスメイトの残っている室内を見渡す。手近にいる生徒の一人に彼女のことを聞くも、知らないと返されたのと一緒に写真を撮ろうと提案されてしまう。しかし琉夏はごめんと手短に断ると、すぐに教室から逃げ出した。途中で同じように写真を強請られることがあったが、それらのすべてを断りつつも、校舎の至るところを探していく。美術室に音楽室、家庭科室に屋上。果ては職員室にまで顔を出して見るものの、彼女の姿はない。ひょっとしてとっくに帰ってしまったのかと美奈子の下駄箱を覗いて見れば、そこには上履きもローファーもなく空っぽになっていた。
「帰っちゃった、のか…?」
 そう独りごちて、想像以上に落ち込んでいる自分に気が付いた。けれど、ふいに琉夏の耳に、子供の頃の美奈子の声が聞こえた気がした。「ルカくん」と呼んで微笑う彼女を思い出すと、弾かれたように顔を上げる。そうして上履きと靴をもどかしげにはき直すと、殆どつっかけるようにして走り出した。目指すのは、裏庭にはある教会だ。
 学校にはまだまだ人が残っているというのがウソのように、教会の周りには人の気配を感じられない。しんと静まっていて、まるでここだけ隔離でもされているかのような錯覚を覚える。
 教会の周りには、ピンク色をしたサクラソウが咲いていた。
 琉夏は乱れた呼吸を整えるように、そうして自分を落ち着かせるように深く息を吐く。
 一歩ずつ近づくたびに、心の内側がざわざわとする。
 琉夏は教会を囲むように咲いているサクラソウの一つを摘んだ。これは妖精の鍵だよ。幼いころに言った、自分自身の言葉を思い出す。思い描いた人の元へと連れていってくれる、魔法の鍵。そうだ、これはあの日の続きだ。サクラソウを探して探して、でも見つからなかったから、だから美奈子は遠くに行ってしまった。だから、好きになってはいけなかったのだと、思った。
 でも今度は、サクラソウはこの手の中にある。
 そうして俺は、また彼女を好きになった。
「……どうか、俺を連れてって」
 祈るように。願うように、琉夏は呟く。
 そうして、教会の扉のノブに手を掛ける。手前に引けば、ぎいと重く軋んだ音を立てて扉が開く。まず始めに目についたのは、ステンドグラス。向かい合う姫と王子のステンドグラスからきらきらと光が零れて、その光を浴びるように探していた相手の姿があった。
「……見つけた」
 驚いた表情で振り返る彼女に、何から話そうかと琉夏は教会へ足を踏み入れた。

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彼女と喧嘩しました

 いつも通りに登校した学校の昼休み。4限目終了のチャイムが鳴り、さあ昼飯だとカバンの中から財布を出し、ついでに携帯電話を取り出す。そこには新着メールが一件届いていた。俺はさっそくメールの差出人を確認すると、そこには彼女であるネネさんからだ。

『お昼休みに校舎裏で待ってます』

 たったそれだけの素っ気ない文面が書かれていた。いつもならば顔文字や絵文字を使って送られてくるので、その時点で何となく嫌な予感はしていた。ひとまず俺は購買戦争には参加せず、すぐに校舎裏へと向かう。
「ネネさん!」
 先に到着していたらしい彼女の後ろ姿を見つけ、俺は声を掛ける。すると彼女はすぐに振り返るも、その無表情さに思わず足を止めてしまう。
 どうしよう、この時点で嫌な予感が確定なんだけど。
 だからといって逃げ帰るわけにもいかず、俺は彼女との距離を詰めるべく足を進めた。そうしてネネさんの目の前まで歩み寄ると、なんとも嫌な沈黙が落ちた。
「ねえ」
 会話のきっかけが掴めずに困っていると、先にネネさんが口を開いた。けれどその口調にははっきりと不機嫌の色に染まっていた。
「最近、私に対して冷たいんじゃないかな?」
 言う彼女の言葉と表情は冷たい。ええとと俺は口の中で呻いて、言い訳を考える。考える。考えて、つと、妙な反抗心が頭を掠めた。俺にだってそれなりに用事があって、決してネネさんをぞんざいに扱っていたわけじゃないのにこんな一方的な言われようはないんじゃないか、なんて。ほんの少しだけそんなことを考えてしまったら、なぜかするりと口から言葉が呟かれていた。
「……そっちだって、悪いところがあるんじゃないか?」
「えっ?」
 昼食で賑わっている校舎内とは違い、ぼそりといった俺の呟きはしっかりとネネさんの耳に届いてしまった。驚いたように目を見張った彼女は、けれどすぐに剣呑な目つきになって俺をにらみつけるように見返してくる。はあと大げさにため息を吐かれた。
「甘えん坊も、ここまでくるとどうしようもないなあ」
 その言われように、ますます俺の中の反抗心が膨れ上がる。だが、俺が何か言う前に、彼女はさらに言葉を続ける。
「自分が何をしたかわかるまで、知らないんだから」
 そう言って、彼女はすっと俺の横を通り過ぎていった。
 追いかけないと。
 咄嗟にそう思うものの、身体は動かない。それはちっぽけな自分のプライドなのはわかっていたけれど、結局俺は昼休み終了のチャイムが鳴るまで、そこから動けないでいた。


 そうして家に帰って夕飯を食って、適当なバラエティー番組なんか見て気を紛らわせてみるも、何も頭に入ってこない。脳裏には昼間の怒ったような、悲しそうなネネさんの顔ばっかりを思い出す。
「……」
 ベッドに仰向けになって、携帯電話を掴んだ。電話帳を開いてネネさんの項目を選択する。電話にしようか、メールにしようか考えて、結局いくじなしの俺はメールを選んだ。ごろんと寝返りを打ち、携帯電話との距離を詰める。まっさらなメール作成画面を睨み付けた。
「……うあー…」
 何とも間の抜けた声を出して、一度枕に顔を埋める。彼女と付き合うようになって、初めてのケンカだ。そもそも、友達とだってこんな風にケンカをすることもない。謝る、という行為そのものに抵抗を感じまくってしまい、どうしていいのかわからない。
「だからって、このままでいいわけないし」
 そうぼやいて、俺は再び携帯電話と向き合った。ああでもないこうでもないと拙い文面を考えながら最終的には「ごめんなさい」とストレートな言葉だけを打って送信した。送ったものの、返信は来るのだろうかと今度は違う心配をし始めたのも束の間、すぐにネネさんからのメールが届いた。

『私たち、どうしたらいいのかな?』

 そのメールを見て、俺もすぐにメールの返事を打つ。最近冷たい、と言われたのもデートをしてなかったからだ。
「デートしよう」と返すものの、それの返事はなかった。


 それから数日間、学校でもバイト先でもネネさんとの会話は不自然なほどなくなった。この間と同じように、自分たちの状況を示唆するようなメールが来るので、「キスしよう」や「反省してる」等のメールを返すものの、結局特にこれといった進展はなかった。
(どうしろっていうんだよ…)
 こんな長期戦のケンカは生まれて十数年でもしたことがなく、俺は途方にくれていた。
「あ、5番テーブル片づけてくれたんだ」
「ああ、うん」
「ありがとう、助かったー」
「いや、別に」
「本当、よくできました」
 バイト仲間の一人である女の子との会話に、別の声が割って入った。思わずぎくりと身体が固まり、鈍い動きで振り返る。するとそこには笑顔を浮かべているはずのに、目がまったく笑っていないネネさんがいた。
「仕事はしっかりできるのよね。カノジョのことは放っておくのに」
 後半部分は俺にだけ聞こえる音量でいって、すぐにホールへ戻っていく。目の前のバイト仲間が何か言ってるのはわかったが、全然聞こえてこない。今すぐにでもネネさんを捕まえて謝り倒したかったけれど、残念ながら夕方のこの時間は下校時の高校生から社会人で賑わうのそれどころでない。しかも間の悪いことにネネさんは早上がりだ。
(タイミング悪すぎだろう!)
 内心でいくら地団太を踏んでみせても、否、むしろそれに比例するようにホールは混雑していった。
 ぐったりと疲れた身体を引きずるように帰宅し、俺はすぐにネネさんへメールを打った。体裁や言い訳など一切書く余裕などなく、ただ一言、「ごめんなさい」と送る。すると有難いことにネネさんから返信はきた。そこには「明日、校舎裏で」の一言の文面があった。


 翌日、俺は再び校舎裏に向かった。
 ケンカをしたあの日と同じように、彼女は先にそこにいた。
「ネネさん」
 数日ぶりに、声に出して彼女の名前を呼んだ。すると彼女は振り返って、まだ不機嫌さが残った表情で俺を見る。
「……反省、したの?」
「しました…」
 問う彼女に、俺は頷く。
「ダメな彼氏で、ごめん」
「……そんなダメな彼氏を許しちゃう私は、ダメな彼女かな」
「え?」
 ネネさんの言葉に、思わず顔を上げる。と、さっきまでの不機嫌さはあるものの、そこにほんの少しだけ困ったような気配が伺える。
「そんな風に謝られたら、許したくなっちゃうんだもん」
「ネネさん…」
 ぷいっと顔を背ける彼女を、俺は思わず抱きしめる。久しぶりな感触に、心の底から安堵している自分に気が付いた。
「ねえ、私、さみしかったんだよ?」
「…うん」
「だから、さみしかった分、たくさん一緒にいてね?」
「うん」
 彼女の言葉に何度も頷いて、俺は最後にごめんと呟いた。
 そうして仲直りのキスを一つして、俺たちの最初のケンカはどうにか幕を閉じたのだった。





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久しぶりにラブプラスを起動させたら寧々さんと喧嘩したよ\(^o^)/
ということでその一部始終をネタにしてみたよ\(^o^)/
大体こんな感じだよ\(^o^)/
多分、声に出して「ごめん」とかいう場面があったと思うんですが、私、未だにどのポイントで声を出せばいいのかわかってないんだ…だからいつもタッチペン連打で話を進めているぜ。
夏以降全然起動させていないのがケンカの原因ですね。
現在の寧々さんの性格がピンクだったのでそこまで大事にはならなかったのですが、これが緑寧々さんだったらと考えると恐怖…!
しかしピンク寧々さんよりも、デフォルトのオレンジの性格が一番いいと悟った瞬間でした。


そして薬飲んだにも関わらず頭痛が納まらない…ちょっと今日は早いですがベッドに行こうと思います。おやすみなさいー

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赤ずきんちゃんパロ

某所で盛り上がった小ネタ。
書いてみたら予想以上にカオスになった


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 昔々あるところに、赤い頭巾を被ったかわいらしい女の子がいました。あまりにもその赤い頭巾が似合っていることから、彼女は「赤ずきんちゃん」と呼ばれています。
 ある日のことです。赤ずきんちゃんはお母さんに頼まれて、おばあさんのところにお届け物をするのお手伝いを頼まれました。
「おい琉夏、新名のところにワインとパンを届けてこい」
「え、なんで? セイちゃん自分でいってこいよ」
「俺は忙しい」
「俺も忙しい」
「布団でごろごろしてるヤツがなに言ってんだ! いいから言ってこい」
「じゃあおみやげにたんぽぽ大量に持ってきてあげるね」
「いらない! 絶対にいらないからな!」
 赤ずきんちゃんはお母さんの言うことを聞いて、おばあさんのもとに出かけることになりました。カゴにはワインとお母さん特製のパンが入れられました。
「いいか、寄り道せずさっさと行って来い」
「そういうなら自分で行けばいいのに」
「いいから行け」
「はいはいっと」
「狼が出るらしいからな。まあおまえなら大丈夫だろうけど」
「うん、俺ドラゴンだからね」
「意味がわからん」
 行ってきますと元気よくいった赤ずきんは、おばあさんの家を目指します。
 おばあさんの家に向かう途中には、森を通らなければなりません。森の中にはきれいなお花がたくさん咲いています。赤ずきんはきれいなお花の元に駆け寄り、一つ一つ摘んでいきます。おばあさんへのおみやげにするのです。
「…時期的にたんぽぽはないか」
「赤ずきんちゃん」
「お?」
 お花摘みに夢中になっている赤ずきんへ、一匹のオオカミが話しかけてきました。驚いた赤ずきんは思わず逃げようとするものの、オオカミはにっこりとほほ笑んで優しい声で赤ずきんに話かけてきました。
「どこに行くの?」
「新名のところ」
「…琉夏くん、そこはおばあさんのところっていうんだよ?」
「あれ?」
「あれ、じゃないでしょ。ちゃんとやらなきゃ」
「わかった、ちゃんとやる」
 優しいオオカミさんの態度にほっと胸を撫で下ろした赤ずきんは、少しだけオオカミさんとお話をすることにしました。オオカミさんは赤ずきんには重いワインとパンの入ったカゴを持ってくれて、途中まで一緒にいってくれるというのです。
「琉夏くん、おばあさん家はそっちじゃないよ?」
「うん知ってる。まあここでもいいんだけど」
「何が?」
「オオカミの美奈子がかわいいなーって思ってさ」
「え?」
「つけ耳とかいいね。できれば猫の方がいいけど、これはこれでありか」
「え? え?」
「この尻尾とかどうなってんの?」
「こ、こら! 引っ張っちゃだめ!」
「えー、ちょっとだけだから」
「だめ、あ、こら! どこ触って…」
「ちょっと燃えるな、このシチュエーション」
「な、な、なに言ってんの! ほら、おばあさんのところにいかないと!」
「もう少ししたら」
「いま! 今すぐいくの!」
「…ちょっと黙って」
「る、んんっ」
 赤ずきんちゃんがよそ見をしていたとき、ぎらりとオオカミの目が怪しく光りました。そうして赤ずきんちゃんの背後に襲い掛かろうとしたそのとき、

 バン!

 鋭い銃声が鳴り響きました。猟師さんがオオカミを牽制するように銃を撃ったのです。
「バカルカ!」
「うわ、コウ」
「コウちゃん!」
「何してやがる」
「何って、ちょっと美奈子とラブラブしてただけ」
「するんじゃねえ! …つうか、どう考えても配役ミスだろこれ」
「俺は美奈子といちゃつけるならなんでもいいけど」
「良くないよ!」
「えー」
「えーじゃないよ」
「…たく。オラ来い。俺もついっててやる」
「えー」
「えーじゃねえよ!」
 こうして現れた猟師さんと一緒に赤ずきんちゃんはおばあさんの元へ向かいました。
「…あれ、なんで琥一さんと琉夏さんが一緒なの?」
「ちょっと色々あって…」
「これでお使い完了だろ? よし、帰ろう美奈子」
「ちったあ反省しろ」
「いて」

 こうして赤ずきんちゃんは無事おばあさんへのお手伝いをして、お母さんの待つ家に帰れましたとさ、めでたしめでたし

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桜井兄弟小話

3年目桜井兄弟とのクリスマスで琉夏でも琥一でもなく、3人一緒にいられたらっていう妄想


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 ふっと、美奈子は目を覚ました。
 もそもそとベッドの中で寝返りを打ち、枕元に置いておいた携帯電話を開く。ディスプレイのバックライトが眩しくてぎゅっと目を瞑る。薄めを開けて時刻を確認すれば、朝の4時を過ぎたところだ。
 まだまだ眠くて重い頭と身体を叱咤して、どうにか身を起こす。部屋の寒さにぶるり震えながらも、借りた上着を羽織ってベッドから抜け出した。
 今、彼女がいる場所はWestBeachの琉夏の部屋だった。
 25日のクリスマスは、毎年恒例で行われているはばたき学園長主催の学園パーティーに出席していた。今年で高校三年の美奈子にとって、これが最後の学園パーティーであった。それは幼馴染である琉夏と琥一も同じで、パーティーが終わりを名残惜しむように彼らの住家であるWestBeachにやってきたのだ。
 琉夏と二人で山のようにホットケーキを作り、呆れ顔の琥一と三人でテーブルを囲みながら残り数時間のクリスマスを楽しんだ。けれど25日が終わりに近づけば近づくほど、どんどん帰りたくなくなってしまう。
 真冬のWestBeachには暖房というものはなく、室内でも白い息が舞うほどに寒い。それでもまだここに――正確には、琉夏と琥一と三人で一緒にいたかったのだ。
 クリスマスは今年だけではなく、来年も再来年もこの先ずっと迎えることはできる。けれど、こうして3人一緒に顔を合わせ、屈託なく笑っていられるクリスマスはもうないかもしれない。そう考えれば考えてしまうほど、あと少しもう少しと誰にともなく言い訳を繰り返していた。けれど、さすがに誤魔化せないほどの時間になった頃、泊まっていけばと幼馴染の弟が提案した。
 いつもなら即座に否定していたけれど、先ほどの感傷を引きずっていたため、言葉に詰まった。そうして兄の方も珍しく弟と同じように泊まっていけと促すので、美奈子は両親に嘘を吐いてWestBeachに留まった。罪悪感はあるものの、まだ彼らと居られることがうれしいと思う気持ちの方が勝っていた。
(それに)
 と、美奈子はベッドの足元に置いた紙袋を持ち上げた。暗い部屋の中では見えないので、携帯電話の明かりをライト代わりにして確認する。グレーと黒のマフラーが二本、紙袋の中には入っていた。
(…喜んで、くれるかな)
 こっそりと二人にプレゼントしようと思い、手芸部の部活中編んでいたマフラーだった。
 美奈子は足音を忍ばせるように、ゆっくりゆっくり二人が眠る上の階を目指した。建物自体が古いので、ぎ、と軋む音が鳴るたびにびくびくと肩が跳ねてしまう。
 どうにか辿りついたころには夜目に慣れて、うっすらと部屋の中が見渡せた。ベッドとソファー、それぞれに山が出来ている。
 美奈子は近い方のソファーへと歩み寄る。階段を登るのと同じくらい慎重に近づいて、そっと相手の様子を伺う。暗い部屋の中でも金色の髪は目立って見えて、ソファーで寝ているのが琉夏だとわかった。二つあるマフラーの片方を枕元に置いて、今度は琥一の方へ向かおうとしたところで、ぐっと手首が掴まれた。
「きゃっ!」
「サンタクロース捕獲」
 中腰の状態で引っ張られたため、成すすべもなく琉夏の方へ倒れ込む形になった。しかしそんな美奈子を琉夏はしっかりと抱きとめる。
「る、琉夏くん、起きて…?」
「今起きた」
「えっ」
「…ウルセーぞ」
「コウ、かわいいサンタクロース捕まえた」
「あ?」
 美奈子と琉夏のやり取りで、ベッドに寝ていた琥一が目を覚ます。ぎし、とベッドが軋んだかと思うと、のっそりと起きだした琥一がこちらにやってきた。
「何やってんだ、オマエらは」
「…その、一日遅れだけど、二人にクリスマスプレゼントをと思って」
「はあ?」
「これってマフラー? 美奈子の手編み?」
「い、一応」
「やったね」
「こっちはコウくんのです…」
「……おう」
「照れてんのか、コウ」
「ウルセーな。さっさと寝ろ」
 美奈子が差し出したマフラーを少しだけ躊躇いつつも受け取った琥一は、さっさとベッドに戻ってしまう。そんな彼の後ろ姿を見送っていると、琉夏も立ち上がって美奈子の手を引っ張った。
「よし、じゃあ3人で寝よう」
「え、ちょ」
 戸惑う美奈子には構わず、琉夏は琥一のいるベッドに二人そろって倒れ込む。3人分の体重を受けたベッドが、悲鳴のように大きく軋んだ。
「何してんだバカルカ!」
「コウ、詰めろ」
「詰めろじゃねえ、ソファー戻れバカ」
「そうだよ琉夏くん、ちゃんと寝よう!」
「一緒に寝た方が暖かいって」
「そういう問題じゃないと思うな!」
「おい、ルカ」
「琉夏くーん!」
 おやすみーと一方的に告げるや否や、琉夏はさっさと目を瞑って一人寝る体勢に入る。完全に置いてきぼりな二人の目を合うと、ごめん、と美奈子が言った。
「わたし、戻るね」
「メンドクーからオマエもそのまま寝とけ」
「でも」
「どうせオマエが戻ろうとしても、そこのバカがまた騒ぐだけだ」
「せ、狭くない?」
「…仕方ねーだろ」
 ため息を吐いて、琥一は美奈子に背を向けた。
 そうして左右に眠る幼馴染の体温を感じながら、美奈子も観念したように目を瞑る。



「…また、3人でクリスマスしようね」
「気が向いたらな」
「オマエがしたいっていうなら」

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