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イチジ九

すべからくどうしようもない日常のあれこれ。 ネタバレ盛り沢山ですので注意!

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蓮見君クリアー小話

天使にしろ小悪魔にしろバンビがアイドルになっちゃったので、アイドルバンビです。
しかし蓮見くん難しい!
彼の性格を掴むのがなんとも・・・・・・・・



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「わ」
「うわァ!」
「えー」
 トン、と背中を叩いたのと同時、予想以上の反応を返してくれた相手に、思わず美奈子は困ったような声と表情をしてみせた。振り返った彼――蓮見達也はいつものようにどこか不安げな目でもって、美奈子を見た。
「や、やあ」
「カノジョに対してのその反応、傷つくな」
「ごめん! …というか、君が驚かすから」
「ちょとしたいたずら心なのに、もう」
「そうだよね、うん、わかってたよ!」
 必死に取り繕うとする蓮見の様子に、美奈子は耐え切れずに少しだけ噴出してしまった。口元を両手で押さえてくすくすと笑うと、釣られるように蓮見も苦笑を浮かべた。そうして、笑いの波がひと段落すると、ええと彼は周囲を伺いながら口を開いた。
「移動しようか? いつまでもここにいたら、誰かに気づかれちゃうかもしれないし」
「平気だよ。まだわたしなんて無名タレントだもん」
「何言ってるんだよ。この間、スポーツドリンクのCMに大抜擢されたじゃないか」
「そうだけど」
 言って、今度は困った表情にになるのは美奈子の番だ。
 高校を卒業したあと、美奈子はスカウトされて芸能人の仲間入りをすることになった。最初の内は想像もしていなかった世界に戸惑ってばかりだったが、最近はいろいろなことにチャレンジしていこうと日々奮闘中だ。しかしそうなると、相思相愛である蓮見の存在が心配になった。彼も彼で、映画監督を目指しべく、映画の学校に通っている身なのでお互い中々時間が合わない。仕方がないと頭ではわかっていても、気持ちの方がもやもやしてしまうのだ。
 だから、久しぶりに会えた今日みたいな日は、少しでも普通のカップルのように過ごしたい、なんて。出来ないとわかりきっているそれは、ただのワガママだ。美奈子は気持ちを切り替えるように息を吐き出した。
 と、
「なあ、あれ」
「え? あ、CMの」
 ぼそぼそと小さな声が聞こえたかと思うと、まだ美奈子のことを知らない人間も連鎖反応のようにこちらに注目してきた。そうして、その中の一人が一歩を踏み出した途端、隣にいた蓮見が美奈子の手を取って、駆け出した。
「に、逃げよう!」
 ちょっとだけ声が震えているのが気にはなったが、美奈子の手をしっかりと掴んで引っ張ってくれてるそれは、間違いなく男子の特有の力強さがあった。
 美奈子はすぐに気持ちを立て直す。ぐっと足に力を入れて、蓮見と一緒にショッピングモールの中へと逃げ込んだ。
「ねえ」
「なに?」
「わたし、やっぱり達也くんが好きだよ」
「え! な、なに!?」
「ほら、追いつかれちゃうよ!」
 美奈子の言葉に面食らったのか一瞬動きが止まった彼の手を、今度は美奈子が引っ張るように走り出した。

 デートはまだ、始まったばかりだ。

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新名クリアー記念小話

 空になったダンボールを潰してビニール紐でまとめる。来たときよりは少しだけ片付いた部屋を見渡すと、台所を片付けていた美奈子がひょっこりと顔を出した。
「ありがと。ちょっと休憩にしようっか?」
「賛成ー」
「ふふ」
 笑って、美奈子はちょっと待ってねと言い残し、再び台所に引っ込んでいった。高校を卒業して、大学生となった彼女が新しく生活を始めるのがこの1Kのマンションだ。まだ開封されていないダンボールを尻目に、新名はざっと部屋を見渡す。水玉のポップなカラーが目に留まる。そこから部屋の端々から彼女の気配を感じて、何だか妙にいたたまれなくなってきた。ついこの間彼氏彼女、つまりは恋人関係になったのにたまに夢じゃないのかと疑うときがある。しかしそこは喜ばしいことにちゃんとした現実だ。さっきも片付けを始める前にしたキスのことを思い出し、顔がにやけそうになる。
(まじやばいってオレ!)
 緩む口元に気がついて、ぶんぶんと頭を振る。と、ちょうどタイミング良く美奈子が二人分のお茶を淹れたマグカップと、新名がおみやげに持ってきたプリンと一緒に現れた。
「どうしたの?」
「いや? なんでも!」
 不思議そうに小首を傾げる美奈子に、新名はへらりと曖昧に笑う。片付けに邪魔だからと立てかけておいた折りたたみ式のテーブルを慌てて組み立て、その上にマグカップとプリンがそれぞれ置かれた。
「…あれ?」
 ふと、新名はテーブルの上に置かれたマグカップを見て、小さく声を上げた。そのマグカップは揃いの柄が入った色違いのもの。明らかにペアとわかるそれに、新名はちらっと美奈子を見た。ら、彼女はさっと目を背ける。
「美奈子ちゃん」
「…ナンデスカ」
「このマグカップさ、かわいいね」
「か、かわいいでしょ?」
「うん。それでさ、これってペア?」
「……か、かわいかったから」
「うん」
「……」
「……」
「……だめ、かな?」
「アンタさ」
「わっ」
 すぐ隣に座る彼女へと手を伸ばし、驚く彼女には構わず腕の中に抱きしめた。
「旬平、くん?」
「すっげ今、キスしたい」
「さっきしたでしょ!」
「さっきはさっき、今は今」
「え、ちょ」
 さらに文句を言おうとする彼女の口を塞いで、抱きしめる腕に力を込める。薄く目を開け、横目でテーブルの上に置かれたマグカップを見つめる。重ね合わせられた口元がまたもやにやけそうになるのを自覚して、新名はそれを悟られないようにキスを深くしていった。

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設楽先輩クリアー記念小話

 卒業式の時にすでに話は聞かされていたから、覚悟はできていた。――つもりだった。


「本当に留学するんですね」
「今まで何だと思ってたんだ、おまえは」
「いや、ちゃんとわかってましたよ?」
「どうだか」
 海外用のしっかりとした作りのスーツケースを押す手を止めて、設楽は軽く肩を竦めてみせた。ついでにため息なんか吐かれてしまい、美奈子はぐっと言葉に詰まる。否、本当に設楽が留学するということはわかっていたし、行き先もパリで、日本に戻ってくるのはいつになるかわからない等々、聞かされたことはすべてきちんと覚えていた。
 ただ、単純に実感がなかったのだ。高校を卒業して付き合いだしたといっても、設楽の皮肉っぷりは健在だし、他愛もない言い合いも日常茶飯事だ。けれどここぞというときの彼の紳士ぶりは絶大で、美奈子がさみしいなどと言った日には文字通り飛んでくるほどだ。初めてそれをされて以来、美奈子は迂闊なことは言うまいと心に誓ったものだが、今回はその誓いが破られそうだ。
 そうして、たとえ美奈子がその誓いを破ったところで、今度はさすがの彼もすぐには飛んで来られない距離にいる。
「美奈子」
「は、はい?」
「おまえ、今からでもパスポート持ってこい」
 ぞんざいな言い方ではあるが、設楽に美奈子の考えていることがお見通しなのだ。美奈子もそれがわかって、思わず困ったように顔を顰めた。実際本当に困っているのだが、ここで設楽の言葉に甘えるわけにはいかない。
 だって、パリに向かう設楽と美奈子では、心構えが違う。
 夢を追う設楽と違って、美奈子にあるは単純に「さみしい」という気持ちだけだ。他に目的もなく、その感情を慰めるためにパリに行ったととしても、結局は堂々巡りだ。夢に向かっている設楽の隣には、いられない。
「ごめんなさい」
「…たく、おまえは本当に強情だな」
「嫌いになります?」
「それぐらいで嫌いになるなら、初めから好きにならない」
 ばっさりと切り捨てるような言い方のくせに、内容はそれに反しているのがずるい。
 美奈子はますます自分の気持ちが情けなく萎んでいくのを実感して、強く下唇を噛んだ。
「…意地っ張り」
 ぼそりと、設楽はいうと、ぽんと皆kおの頭に手を置いた。
「今年中に一回くらいは顔を見せに来い」
「先輩も、一回くらいは帰ってきてください」
「ああ、だから、いつまでもそんな顔するな。無理やりパリに連れていくぞ」
「誘拐じゃないですか!」
「そうだ。俺を犯罪者にしたくなかったら、笑っとけ」
「いたっ」
 ぺし、と強めに指が額を弾く。美奈子はとっさに両手で額を多い、じと目で設楽を睨んだ。けれどすぐに彼へと手を伸ばし、思いきり抱き着いてやる。
「お、おい!」
「動かないでください。充電するんですから」
「……好きにしろ」
「はい、好きにします」
 盛大なため息を吐くものの、美奈子の髪を撫でる手はどこまでも優しい。
(……あと少し)
 美奈子は自分の中でカウントダウンを数えて、ゼロになったら笑って「いってらっしゃい」を言おうと決めた。

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琉夏新スチルネタバレ小話


GSP3での琉夏新スチルで〇〇目線でネタバレ全開です。
まだ見てないよ!これから見るんだよ!という方は回れ右!


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葉月小話「後夜祭」

あんまりにも緑川さんがかわいすぎた結果、葉月フィーバーが始まってどうしてこうなった状態。相変わらずの一発書きクオリティー。
雰囲気を感じ取ってくれるとうれしいです><


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「みーつけた」
 背後からの声に振り返れば、そこにはいつもの制服に着替えた美奈子がいた。
 しかし見慣れているはずの制服姿に、葉月は一瞬戸惑った。さっきまで文化祭で行われた学園演劇のためのドレスが印象的過ぎたのか、はたまた舞台そのもに入り込み過ぎたのか。考えて、葉月はどちらともいえない自分の心境に思わず眉を寄せた。
「どうしたの? 難しい顔しちゃって」
 葉月の心の内など知る由もない彼女はいつものように、微笑う。そうして彼の隣に並んだ。二人のいる屋上には、彼ら以外に人気はない。皆、それぞれのクラスや部室、校庭などで片づけや打ち上げを行っているのだ。
「今日の主役がいないって、皆探してたよ」
「…別に、俺がいなくても平気だろ」
「そんなこと言わないの」
 いつもの癖で素っ気なく返してしまえば、まるで子供を窘めるような口調で彼女は言う。
「皆で一緒にがんばったんだからさ、珪くんもいなきゃ意味ないんだよ」
「……」
 彼女の言葉に葉月は相手の顔をじっと見据えれば、美奈子は不思議そうに小首を傾げた。肩口で揃えた髪が揺れる。と、舞台でのシンデレラ衣装のためにセットした名残か、前髪の一部が跳ねているのに気がついた。
 思わず、手を伸ばしてその前髪に触れる。
「え、なに?」
「跳ねてる」
「うそ、やだ」
「そんなにひどくないから、平気だろ」
「ホント?」
「ああ」
 頷いて、葉月は美奈子の髪から手を離した。代わりに、彼女の手に触れると、恭しく顔の前まで持ち上げてみせる。言う。
「俺と、踊ってくれませんか?」
「へ?」
「だめか?」
「だ、だめじゃないけど、どうしたの?」
「…なんとなく」
「なんとなく、ですか」
「だって、美奈子としてのおまえとは結局踊れてないから」
「え? わッ」
 戸惑ったように眉を下げる彼女には構わず、葉月はステップを踏む。美奈子は少しだけ足を縺れさせるものの、すぐに態勢を立て直した。葉月の肩に手を置いて、すっと背筋を伸ばす。葉月も相手の腰へと手を回し、何度も練習をしたダンスを踊る。当然音楽などなく、階下から聞こえる生徒たちの笑い声がBGM代わりだ。
「……なあ」
「ん?」
「今のおまえの魔法は、解けないよな」
「え?」
「このダンスが終わっても、ガラスの靴だけ置いていなくなったりしないだろ」
 言ってしまってから、葉月はしまったと顔を顰めた。自分の言葉の女々しさを撤回したくなったが、すでに言ってしまったものは元には戻らない。しかもこの距離では、何でもないと誤魔化せない。
 それでも葉月はすぐに言い訳を口にしようとするよりも早く、きゅっと強く手が握られた。
 ダンスが止められて、目の前の彼女はこちらを見上げる。そして、
「ほら、大丈夫でしょう?」
 そういって、照れたように笑う。そんな美奈子の表情に、葉月は一瞬、呼吸を止めた。ゆっくりと息を吐き出すと、彼女の腰に回していた手でぐっと抱き寄せた。美奈子の肩口に顔を埋めるようにすれば、動揺する気配がダイレクトに伝わる。けれど彼女を離すことはせず、ごめん、とささやくように言って、続ける。
「……皆のところには行くから、もう少し、このまま」
「わ、かりました」
 緊張で硬くなった美奈子の声に、ふと入学式の、あの教会の前で再会したことを思い出した。あの頃から変わらないと思うも、すぐに内心で頭を振る。あの頃からではなく、もっとずっと昔。子供の頃、初めて出会ったときから、美奈子はずっと変わらない。
 そんな彼女だから、俺は、
「………美奈子…」
「は、はいッ?」
「サンキュ、戻ろう」
「そ、そうね! うん、そうしよう!」
 ぎくしゃくと頷く美奈子の頭にポンと手を置けば、自分の表情が緩むのがわかる。彼女はやっぱり焦ったように身を翻ると、先に階段を駆け下りていってしまった。
「…好きだ」
 今度こそ、確実に美奈子には聞こえない距離で、葉月は独りごちた。今はまだ本人に言う勇気はないけれど、いつか。きっと。
 この気持ちを伝えることができたならと。

 あの絵本の結末を思い出して、葉月は屋上を後にした。

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