忍者ブログ

イチジ九

すべからくどうしようもない日常のあれこれ。 ネタバレ盛り沢山ですので注意!

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

荒ハム小話

唐突に湧き上がる荒ハムブームでござるの巻(`・ω・´)


-------------------

「アギダイン!」
 鋭く声を発したのと同時、目の前に炎が舞い上がって敵――シャドウが消滅した。用心深く注意を伺うも、追撃のシャドウの存在は感じられない。
「…よし」
 律子は手にしていた召還機をホルスターに仕舞い、薙刀を構え直して探索を開始した。


 いつものように訪れた影時間に、S.E.E.Sのメンバーはタルタロスへとやってきていた。一体どれほどの階層があるのかは不明だが、各フロアにはそれぞれエリアの区切りがあるのに気が付いた。なので新しいエリアに入ったときはある程度シャドウのレベルを把握したあとは、メンバーを散開させてフロアの探索を行っている。まとまって戦った方がもちろん戦闘は早く済むが、自分たちに課せられた時間には制限がある。だから個人撃退ができると判断がついたときは、一刻も早くタルタロスを攻略することを最優先事項としている。そもそも自分たちが所属する「S.E.E.S」はそのための組織なのだから。
 律子は十字路に道が分かれている場所にきて、一度足を止める。とんとん、とローファーのつま先で地面を叩き、どの道を選ぼうか思案したところで、

 ちゃり…

 微かに、鎖を引きずるような音がした。それと同時に、ぞわりと言いしれぬ悪寒が背筋を這い上がる。
『死神型シャドウ出現! 皆、気をつけて!』
 律子が悪寒を感じたすぐ後に、風花の悲鳴のような声が響いた。やはり、と律子の予想が確信に変わり、周囲を伺う。すると、十字路の右側で影が動いた。すぐさまそちらへと視線を向けて構えれば、死神がこちらへと向かっているところだった。
「うわ」
 短く囁いて、律子はすぐに走り出す。がむしゃらに通路を通り過ぎてくと、ふいに角から現れたものへと正面衝突しそうになり、殆ど反射でホルスターから召還機を抜き取り、こめかみに押し当てる。と、
「荒垣先輩!」
「…中原か」
 相手も同じように、召還機を構えていた。S.E.E.Sのメンバーの一人でもある荒垣も律子を認めて、召還機を降ろす。
「奴は」
「多分、わたしの後ろを追いかけてきてるかも…って、きた!」
 ちらりと後方を振り返ったところで、真っ直ぐにこちらへ向かってきている死神の姿が見えた。
「階段はこっちだ!」
「はい!」
 言う荒垣の言葉に従い、律子は彼の後ろを追いかける。背後からのプレッシャーからか、背筋に嫌な汗が流れる。
「早く来い!」
 普段の態度からは想像もできないほど素早い足取りの荒垣に何とか追いつき、律子は階段を駆け上る。後ろは振り返らない。正確には振り返っている余裕はないが。
 階段の半ばで待っていてくれた荒垣に追いつくと、二人一緒に残りの階段を駆け上った。
 と、
「――え?」
 ぐにゃり、と視界が歪んだ。そうして、足下にあったはずの地面が消える感覚。まずい、と咄嗟に律子は思った。タルタロスを探索してるときに、これも稀にある現象だ。皆と一緒に上層階を登っている途中で、何の力が作用しているのか、次のフロアではメンバーと離ればなれになってしまう。
 死神と遭遇するのも、これが初めてではない。その度にフロアを変えることによってやつを振り切ることができていたが、そのときはメンバーの全員は一緒だった。
 けれど、もしも。
 もしも今回はフロアを変えても死神が消えていなかったら?
 その先で一人でいたらと想像がついて、律子は咄嗟に荒垣へと手を伸ばした。すると、どうやら荒垣も律子と同じことを考えたらしい。お互いが相手へと手を伸ばし、荒垣が律子の手首を掴んだ。力任せに引っ張られて、荒垣の腕の中に抱き竦められる。律子も荒垣の背中へと腕を回し、離れないように腕に力を込めた。
「……」
「……」
「……」
「……」
 どれくらいそうしていただろうか。
 つと、自分の足が地面に触れているのに気が付いた。そうして周囲の気配を察すれば、死神シャドウの気配はないように思う。
「……あの、荒垣先輩」
 律子が控えめに声を掛けてみると、そこで荒垣も我に返ったらしい。いつもよりも渋い表情を浮かべて、律子を抱きしめていた手を離した。
(あ…)
 離れていく荒垣の体温が、さみしいと思った。ら、咄嗟に彼の服の裾を掴んで引っ張ってしまっていた。
「……なんだ」
「えっと、ありがとうございました」
「俺は何もしてねえだろ」
「死神シャドウから助けてくれたじゃないですか」
「あんなのは助けた内に入らねえ」
「それでも嬉しかったから、ありがとうございます」
「……っち」
 荒垣は小さく舌打ちをして、帽子をさらに目深に被るように引き寄せる。
「行くぞ」
「はい」
 促す荒垣に、律子は薙刀を持ち直す。軽い足取りで荒垣の後ろを追いかければ、少し離れた場所から順平の声が二人を呼んだ。



「お二人さーん! 無事だったか!」
「律子ー! よかった心配したー!」
「ゆかりー! 無事で良かったー!!」
「え、律子さん、オレっちのこと無視ですか?」
「あ、順平も無事でよかった」
「おまけみたいにいうな!」
「ごめんごめん、わざとだから」
「泣くぞ!」
「うむ、許可する」
「りっちゃん!」
「……おまえら、いい加減にしとけ」

拍手[0回]

PR

親友佐伯vs太郎2


 散々泣いて落ち着いたあかりが、一人で帰れるというのに頑として佐伯は家まで送ると言い張った。
 いくら彼女が大丈夫と言っても、最終的には「お父さんの言うことを聞きなさい」とお父さん命令が下されてしまった。
 泣きすぎて目が腫れぼったくなったからか、足元が覚束ないあかりを見かねたように佐伯は彼女の手を掴んで歩く。
「…あの、お父さん」
「ウルサイ」
 口を開いたあかりを即座に切り捨てると、結局無言のままあかりの家の前まで来てしまった。
 夕日は殆ど沈みかけていて、夕方から夜に片足がつっこんだ時間帯だ。街灯がちらほらと点き始めて、あかりの自宅の玄関先も明かりが灯されていた。
「あかり」
 玄関まで2メートルほどの距離のところで、佐伯が名前を呼んだ。腫れた瞼を何とか持ち上げながら彼を見上げると、本日二度目のチョップが落とされる。威力はほんの少しだけ上がっていた。
「バイト、どうする?」
「え?」
「シフト変えるなら早めにしろよ。俺からじいちゃんに言っとくから」
「…出る! ちゃんと出るよ!」
「え?」
「だって、これ以上瑛くんに迷惑掛けられないもん」
「ばか、迷惑とかそんなわけないだろ」
「でも」
「迷惑とかじゃないから」
「わたしだって、平気だもん」
 なおも言い募ろうとする佐伯の言葉を遮って、けれどすぐに苦笑するように目じりを下げた。続ける。
「…今日は、ちょっと平気じゃないけど」
「わかってるよ」
 言って、佐伯は珍しくチョップではなくあかりの頭の上に手を置いた。ぽんぽんと二回弾ませる。
「…愚痴でもなんでも、言いたいことあったら電話してこい」
「うん」
「遅くなっても気にしないでいいから」
「…お父さん、今日は優しいね」
「俺はいつも優しいだろ」
「そうだっけ?」
「そうだよ」
「……うん、そうだね」
 ぼそりと呟くように言って、あかりは顔を上げた。まだ少し複雑な表情をしている佐伯になんとか笑みを見せて、じゃあね、と一歩下がる。
「送ってくれて、ありがと」
「…ああ」
 軽く手を振って、あかりは家の中へ。
 ぱたん、と玄関のドアを閉めたところで、落ち着いた涙が再びじわりと目じりに浮かんだ。あかりは慌ててローファーを脱ぐと、一気に階段を駆け上る。自分の部屋の中に辿りつくのと同時、先ほど浮かんだ涙が視界を滲ませた。佐伯に肩を借りて散々泣いたというのに、我ながら呆れてしまう。
 けれど、
「…好き、だったのになあ」
 ふいに思い出すのは、手ひどく自分を振った太郎の顔だ。泣きすぎたせいで、こめかみの辺りがずきずきと痛み始めていた。
 それでも、彼と出会った一年前の卒業式を思い出す。
 学校内で交わした何気ない会話や、たった一度のデートのこと。そうして最後には一番痛くてもっとも新しい記憶へと戻る。
 この傷が完全に癒えるまではどれくらいの時間が掛かるだろうかと、あかりは静かに涙を流した。

拍手[4回]

天童くんは名前を呼んでほしいそうです

「なあ美奈子」
「なに天童くん?」
「それ」
「どれ?」
「『天童くん』」
「天童くん??」
「いつまでそう呼ぶわけ?」
「え?」
「俺と美奈子って付き合ってるんだよな?」
「……う、ん」
「で、『天童くん』?」
「え、えーと…」
「よしほら、名前で呼んでみ?」
「え」
「俺も美奈子って呼んでるし」
「それはそうだけど…」
「簡単だろ? ほら」
「うー…」
「美奈子ー」
「………じ」
「うん」
「じ、…じ、じ、じー…じんぎすかん!」
「なんでだよ!」


---------

改めて呼んでっていわれると恥ずかしくなっちゃう1主であった

拍手[2回]

おっぱいは揉むと大きくなるわけじゃないんだよ!

昨日見ていたTVで衝撃の事実を知ってちょっとだけカッとなってしまったアレな小話。

ちょっとだけいかがわしいので畳みます。



拍手[5回]

親友佐伯vs太郎

卒業式で太郎のフラグを折って改めて後日太郎とのフラグ発生、親友佐伯ぎりぎり!な話を勢いだけで書いていこうの会。
でも最終的には佐伯落ちです\(^o^)/
問題は私がいかに冷静に太郎を書けるかに掛かってる\(^o^)/
佐伯より私の方がぎりぎりしてるわ・・・




-------------



 学園内の中庭であかりは一人、立ち尽くしていた。
 今日は卒業式というのもあって、笑い声や泣き声、別れの言葉などがそこここで交わされている。
 さっきまで、あかりもその一員のはずだった。
 二年生のあかりは見送る立場で、だからこそ三年生の――密かに恋心を抱いて真嶋太郎の元へと向かった。今までは学校内で顔を合わせることが出来たが、卒業してしまってはそれはできなくなる。彼の連絡先を聞くにはこれが最後のチャンスだ、と、あかりは彼の姿を探して回った。そうして、数人の女生徒に囲まれた彼の姿を見つけて、声を掛けて――今に至る。
(……どうして)
 内心で、独りごちる。
 そうして思い出すのは、つい数分前の彼との会話だ。

「まさか、本気で僕のことを好きになったとか?」

 冷たい笑みと一緒に吐き出された言葉に、あかりは何も言えなくなった。そうこうしてる間にも彼はまた違う女生徒に呼ばれて、何事もなかったかのようにあかりの横を通り過ぎ様、ぽん、と彼女の肩に触れた。
「なんだか誤解させて悪かったね」
 待って、と。
 追いすがることは出来なかった。
 声を出すことはおろか、振り返ることも出来ない。
 まるで、その場に縫い付けられたように動けなくて、周囲を取り巻くものが一枚壁を隔たれた向こう側で起きてるように見えて。
 どうして、とただその言葉ばかりを繰り返していれば、ふいに誰かがあかりの腕に触れてきた。その感触でようやく我に返ったあかりは、弾かれたように反応して、顔を上げた。太郎が戻ってきてくれたのかという期待の先にいたのは彼ではなく、佐伯だった。
「っ、…て、るくん」
 太郎君、と喉まで出かかった名前を飲み込み、彼を呼ぶ。すると、何故か佐伯の目が細められた。眉間に皺を寄せたりなんてして、王子がそんな顔をしちゃだめだよと、いつもならすぐに言ってるはずのからかいの言葉が出てこない。
「…ちょっと、こっち」
 低い声で言って、佐伯はあかりの腕を掴んだまま校舎裏へと歩かせられた。
「おまえさ」
 校舎裏の中でも常に日陰となっていて、殆ど人気のない場所にやってきた。今日も今日とてそこに先客がいるはずでもなく、佐伯とあかりの二人きりになる。
「何があった」
「別に、なにも」
「嘘つけ。そんな泣きそうな顔してよく言うよ」
「泣きそうなんて」
 ないよ、とあかりが続けようとしたところで、頬に熱が流れた。驚いて両手で頬に触れれば、そこは濡れていた。
「あれ、なんで? …や、違うのこれはさ」
「ばか」
 短く言って、佐伯のチョップがあかりの額に落ちる。けれどそれは全然痛くなかった。むしろ痛くないからこそ、それがスイッチになってしまった。ぼろぼろぼろ、と勢いをつけた涙が溢れて、あかりは顔を覆った。口からはみっともない泣き声も溢れるけれど、気にする余裕などない。わあわあと子供のように泣きじゃくると、ぐっと肩を抱かれる。
「俺の肩は高いからな」
 そんな憎まれ口が叩くも、それ以上は何も言わなかった。気休めや慰めの言葉すら一言もなかったけれど、あかりが泣き止むまでずっと呆れることなく付き合ってくれた。

拍手[3回]

カレンダー

12 2025/01 02
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31

P3P

ザックス身体測定

プロフィール

HN:
なづきえむ
性別:
女性
職業:
萌のジプシー
趣味:
駄文錬成

バーコード

ブログ内検索