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イチジ九

すべからくどうしようもない日常のあれこれ。 ネタバレ盛り沢山ですので注意!

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荒垣先輩小話(P3P)

ただの書き逃げでござる

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 すっかり寝る支度を整えた律子は、何とはなしにカーテンを開いて窓を開けた。いつの間にか残暑の気配は過ぎ去り、すっかり季節は秋だ。ついこの間まで暑い暑いと騒いでいたのが嘘みたいだ。
 律子は開けた窓から空を見上げる。夜空には点々と星が瞬き、金色の月が浮かんでいた。殆ど満月に近い月を目の当たりにして、ぶるりと身体が震える。嫌な月だと、律子は内心でぼやく。満月時に必ずやってくる大型シャドウとまた違った、嫌な予感がしてならなかった。何かと問われたらわからない。ただ、漠然とした嫌な気配が、じりじりと這うようにやってきているとしか例えようがなかった。ぞわぞわざわざわする心臓が落ち着かなくて、こわい。
 コンコンとドアがノックされる音に、律子ははっと我に返った。はい、と返事をすると、俺だと男の声が返ってきた。その声が聞こえた途端、律子は窓枠から手を放してドアへと駆け寄った。掛けた鍵を外してドアノブを捻ると、声の主が立っていた。
「おまえ、まだ起きてたのか」
「もう寝ようと思ってたところです。センパイこそ、こんな時間にくるなんて夜這いしにきてくれたんですか?」
「ばっ、おま!」
「夜中ですが、お静かに」
 にっこり笑って荒垣を中に促すと、荒垣は小さく舌打ちをしながらも律子の指示に従った。再びドアを締めて鍵を掛けると、後から荒垣の手が伸びてきて、抱きすくめられる。首筋に荒垣の顔が埋められると、彼の吐息が掛かって少しだけくすぐったかった。
「本当に夜這いにきてくれたんですか?」
「…まあ、な」
 律子の言葉に、荒垣は苦笑したようだった。肩口に唇が押し当てられるのがわかって、律子の鼓動が早くなる。
「先輩、窓、締めたいです」
「空いてんのか?」
「さっき、ちょっと開けてて」
 そう律子が言うと、荒垣の手がするりと離れていった。――瞬間、先程の嫌な気配が何十倍にも膨れ上がったような勢いで襲いかかってきた。律子は慌てて振り返り、窓枠へと歩いていく荒垣の後姿を追いかける。そうして縋るように彼の背中へ手を伸ばし、抱きついた。ぎゅうと強く強く抱きつくと、どうしたと荒垣が短く問う。
「先輩」
「なんだ」
「好きです。先輩のこと大好きです」
「…おまえな」
 何度も好きを繰り返し、けれど「居なくならないで」とはどうしても言えなかった。

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プロポーズ大作戦的な琥一


6月だからね!などととってつけたような理由をつけてみるテスト。

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「あのよ」
 食後のお茶を啜っている美奈子の隣で、唐突に琥一が口を開いた。途端、点けっぱなしのテレビ番組からはどっとバラエティー番組特有の笑い声が上がり、琥一は不機嫌に眉を寄せた。テーブルの上に置かれたリモコンを使ってテレビを消してしまうと、当然部屋には沈黙が落ちた。
 美奈子は手に持っていた湯のみをテーブルの上に置くと、改めて琥一を見た。いつもの顰め面に真剣味が加わったような表情をするものだから、なんだか妙に緊張してしまう。なんだろうと思わず正座をしてしまうと、んん、と咳払いをした琥一も美奈子に向き直った。
「なにかあった?」
「あー、…だからよ」
「うん」
 頷いて、じっと琥一を見つめる。すると珍しく気まずそうな顔でもって、視線を逸らされてしまった。更に言い淀むような相手の反応に、美奈子の方も怪訝そうに目を細めてしまう。視線を逸らしたままの相手の顔をまじまじと見つめてから、美奈子が先に訊いた。
「浮気でもした?」
「してねえ」
 思ったよりも早い反応を返されて、美奈子は怯んでしまう。ついでに怒ったような視線で睨まれてしまったから、身を竦めて俯くと再び琥一が呻く声が聞こえる。大きな手が伸びてきたのみ思わず身構えれば、その手は予想外に美奈子の手の上に落ち着いた。膝の上でまとめていた左右の手は、琥一の片手の中にすっぽりと納まってしまう。
 手、大きいなあなんて今更のようにぼんやりと考えていると、琥一が美奈子の名前を呼ぶ。顔を上げて視線が合えば、依然怒ってるような彼の目と目が合った。
「俺は、おまえが好きだ」
「うん」
「おまえ以外の女を選ぶことも、この先ねえ」
「…う、ん」
「だから」
 と一度言葉が途切れると、重ねられた手にぐっと力が入った。琥一のもう片方の手が肩に回されると、当然二人の距離は近くなる。
「俺と、一緒になってくれ」
 低く真剣な声音で告げられた言葉に、美奈子の時間が止まった。琥一と見つめ合った状態のままで数秒が経過し、ふいにやってきた息苦しさにようやく息を止めていることにも気がついて、息を吸う。と、それと一緒に止まっていた時間が動き出した。
「……えと」
 かすれたような声で、呟く。時間は動きだしてくれたけれど、どうにも頭の中は未だ止まっているらしい。それでも何とか現状を理解しようと、先ほど琥一が言った言葉を反芻させる。というか、わざわざそんなややこしいことをする必要はないのだ。だってこの人は、そういった回りくどい言い方ややり方が大嫌いなのだから。
 そこまで考えて、美奈子は改めて身体中の血液が頭のてっぺんに向かって駆け上っていくような錯覚を覚える。ついでに体温も急上昇してきて、むしろ爆発してしまうんじゃないかと思う。それか、重ねられた手の先から溶けてしまうんじゃないか。
 美奈子が固まった状態でいると、間近にある琥一の顔が苦笑に変わっていく。
 あ、まずい、と咄嗟に思った矢先に琥一が口を開いた。言う。
「俺とじゃ嫌か?」
「ちが」
「無理すんな」
「本当に違うの!」
 苦笑を浮かべたまま握られた手が離れようとするのを、美奈子は慌てて引き止めた。すると少しだけびっくりした琥一が見返してきて、そのまま引き止めた手をぎゅっと握りしめた。
「無理とか…違う、から」
「……本当か?」
「本当だもん。それにこんな嘘、つかないよ。だから」
 言い訳のように言葉を続ける反面、気持ちはどんどん冷静になっていくような気がした。そうだ。わたしは何を迷っているのだろう。この人がわたし以外を選ばないと言ってくれたように、わたしだって、コウちゃん以外の人を考えたことなんてなかったのに。
 ――初めから、この人だけを選んでいたのに。
「コウちゃん」
 大好きな人の名前を呼ぶと、はば学の卒業式が脳裏を過ぎる。
 あの教会で誓ったあの日のことを、今度は本当たくさんの人の前で行うのだ。
「奥さんに、してください」
 美奈子がそう言った途端、力強い腕に引かれて琥一の腕の中に抱きしめられたのだった。

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若葉小話(少女革命ウテナ)

奈津美の話を書こうとしたんですが、やっぱり私の中で川上さんはウテナでした。
アンシーとウテナの王子と姫の関係も好きですが、若葉とウテナの友情関係も大好きです。
女子の制服を着てきたウテナに「あんたの普通はそんなんじゃないでしょ!もっとかっこいいはずでしょ!それと、その制服全然似合ってない!」とウテナを怒った若葉は本当にいい友達だと思います。
なんか色々ウテナを思い出してきたら涙腺が緩みそうで困る。やっぱりDVDBOX買うべきかな…上下巻で5万とか思い切った買い物だけど、あの作品はやっぱり大好きだ。黒薔薇編とか色々おいしすぎるわ。栞とか若葉とかの活躍っぷりが堪らない話だった…あと制服かっこよすぎる…そして緑川ほいほいな私でした。


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「ていやー!」
「…若葉」
「ウテナ捕獲ー!」
「一体何のつもり?」
「やだ、ちょっとしたスキンシップじゃない」
「その割には何か色々とさ」
「色々と?」
「…いや」
「何よ」
「何でもない。…それより、そろそろ僕の背中から降りない?」
「もうちょっといいじゃない」
「良くないよ」
「だあってー、最近のウテナってはちっともかまってくれないんだもん」
「そんなことないだろ」
「あるわよ。姫宮アンシーとばっかりいちゃいちゃして」
「いちゃいちゃって…僕はそんなつもりじゃないんだけど」
「ウテナがそう思ってないだけで、周囲にはそう見えています」
「そうなの?」
「そうなの! そういうわけで、今日はあたしといちゃいちゃしよう!」
「なんか語弊があるんだけど」
「細かいことは気にしなーい!」
「はいはい。…で、何をするんだい?」
「うっふふー! 学校が終わったらお茶してー、買い物してー、カラオケボックスにいくのもいいわよね!」
「そんなに予定詰め込んで、寮の門限に間に合うの」
「もう、夢がない!」
「僕は現実主義者なんだよ」
「…別に、ウテナと一緒にいられたら何でもいいんだけど」
「若葉?」
「……だって、本当に最近は姫宮アンシーとばっかり一緒にいるんだもん」
「……若葉」
「なんて、ね! ちょっとヤキモチ妬いちゃっただけ!」
「なあ、若葉」
「なあに?」
「今度の日曜日、暇?」
「え?」
「デートしようか。日曜日なら、長い時間一緒にいられるし」
「……うん!」
「あ、でも、僕歌はあんまり得意じゃないから、勘弁してくれると嬉しいんだけど」
「もうなんでもいいよ! ウテナとのデート、超楽しみにしてる!」
「僕も楽しみにしてるよ」

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ただのバカップルじゃないか。




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(最終回後)

 違和感。
 篠原若葉が唐突に感じていたのはそれだった。
 いつも通りに寮の一室で目を覚まし、いつも通りに朝食を摂り、いつも通りの通学路を経て学園に登校する。そうして顔なじみのクラスメイトへ挨拶を交わしながら、自分の席に着いた。――そこまでは、いつも通りだった。
 睡魔と戦いながらの一限目の授業内容を聞き流しながら、つと、誰もいない席へと視線を向ける。その席は、このクラスになってからずっと置いてあるだけの空白の席だ。特に何かあるわけでもなく、ただ単に余っているという理由だけでそこにあった。誰も使う人がいないのならば片付ければいいのに、とクラスメイトの誰もが思っていることだし、若葉自身もそう思う。掃除の度に誰かが机を動かす手間を割くたび、その愚痴は口をついて出るのだ。邪魔だよね。使わない教室に置けばいいのに。そんな言葉たちを反芻して、若葉再び違和感が胸を過ぎった。
(…なんだろう)
 違和感を感じつつも、その正体は掴めない。ただ、誰も座っていない席に対して、心臓がひどく切なく締め付けられていく。
 唇が無意識に動くのがわかって、若葉は自分の口元に手を添える。板書の途中で止まったノートへと視線を落とし、けれど焦点はまったく別のところへとあてていた。
 違和感。
 繰り返されるのはその単語だけ。
 何か、大事なことを忘れている気がする。それはまるで、さっきまで鮮明に見ていた夢が、目が覚めた途端に忘れてしまう感覚に似ている。掴めそうで掴めない、そんな曖昧な記憶へと手を伸ばす。
 けれど若葉がいくら手を伸ばしたところで、その手は、指先ですら触れることができない。
 触れたくて思い出したくて仕方がないのに、わからない。そもそも何を思いだそうとしているのかすら判別がつない曖昧なものを、どうしようというのか。若葉はこめかみを押さえて眉間にシワを寄せる。完全に考え込む体勢に入ろうとしたところで、授業終了のチャイムが鳴り響いた。途端、一気にざわつく教室内に併せて、若葉の思考も霧散する。次なる授業は体育のため、クラスメイトの何人かに名前を呼ばれて立ち上がる。そうしてその空席の後ろを通り過ぎようとして、足を止めた。振り返る。
「……」
 じっと誰も座っていない席を見つめてみても、当然そこには誰もいない。けれど若葉の口元がもう一度無意識に開き掛けたところへ、再びクラスメイトに呼ばれて我に返った。
「着替え、行くよー?」
「あ、うん! すぐ行くから待って!」
 そう叫び返して、今度こそ若葉はその場から立ち去った。
「……ウテナ」
 去り際。
 自分が呟いた言葉に、若葉自身が気が付くことはなかった。

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密小話(GS2)

 どうして彼女と同じ同性なのかと、こんなにも悩むことはなかった。今までは自分の性別に対して不満に感じることはなかったし、むしろ良かったと思うことの方が多かった。
 けれど密は、階下に見える光景を横目に嘆息を吐く。
(私が男だったら)
 今すぐにでも、彼女をあの男の前から連れ去ってしまうのに。
 内心でいくら祈ったところで、やっぱり密の性別は変わらない。彼女は女性であり、また親友であるあかりの性別も同じく女性だ。
 まったくどうしてと独りごちて、密は肩にかかった長い黒髪を払う。今時にしては珍しいくらい素直で真っ直ぐな彼女は、密のお気に入りだった。自分にはない一面を持ち合わせているあかりは最初こそ苦手意識があったものの、深く入り込んでしまうとそんな彼女に対して惹かれずにはいられなかった。勉学も運動も一生懸命で、時折ドジを踏んでは「密さあん」と泣きついてくるのが何よりも愛しい瞬間で。
(だから、かしらね)
 つと、密は再び息を吐き出した。
 先程から密が見つめる視線の先には、彼女の親友であるあかりと、一学年年上の先輩の姿があった。ただの先輩後輩としての間柄なら良かったのだが、どう控えめに見ても、あかりの方は恋する乙女状態である。そんな親友はいつもよりも5割増しできらきらとかわいらしく、輝いていた。親友としては彼女の恋を応援したいのだが、如何せん相手が悪い。密の出来る限りの情報網を持ってしても、悪い噂しか入ってこないのだ。だからこそ、話はふりだしに戻ってしまう。
 自分が男だったなら絶対にあかりを幸せにするのに。
 もう一度同じ考えを繰り返す。基本的に無駄なことを嫌い密ではあるが、あかりに関しては別枠だ。
「というわけで、佐伯くん。頑張って」
「なにが?」
「あかりさんのこと」
「…なんで僕に、海野さんの話が振られるのかな」
「さあ? 何でかしらね?」
 密と同じように、けれど彼女よりももっとさりげなさを装いつつ隣に立つ佐伯に笑みを向けて、密は窓際から離れた。
 去り際、いつもは優等生の仮面を貼り付けた佐伯の表情が、ほんの少しだけ崩れていたけれど、今日は見て見ぬふりをしてあげよう。
(だって男ではない私の代わりに、頑張ってもらう王子様なんだから)
 内心で独りごちて、密はこっそりと口角を上げた。
 ひとまず、自分ができる範囲で彼女のを守ろうと、中庭を目指して階段を降りていく。

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瑛小話(GS2)

ちょっとついったで太郎にざわ!となったので太郎vs瑛ネタでござる。
太郎好きな人には本当に申し訳ないっていうか、むしろ瑛好きな人にも申し訳ない。
しかし親友瑛はおいしすぎる。何という弄り甲斐のある子なの瑛

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 最近、妙に浮かれているなとは思った。
 へらへらふわふわしてるように笑うから、ちょっとした冗談で「好きなやつでも出来たか?」なんて冗談交じりに聞いてみた。ら、相手はちょっとだけびっくりしたような顔のあと、すぐにへらりと最近よく見る顔で、笑う。その笑みに鈍く心臓を刺されたような気がしたかと思えば、あかりはちょっとだけ躊躇うような仕草でもって、頷いた。
「…一つ年上の先輩なんだけどね」
 そう彼女が言ったあと、瑛の頭がすっと冷えたのを感じた。けれど恋愛に浮かれた相手がそんな彼の機微に気が付くはずもなく、内緒だよ、と声を潜めてあかりは口調を落として話を続ける。
「二年生になったときにね、偶然知り合ったんだ」
「へえ」
「お世辞だとは思うけど、いつもかわいいって言ってくれて」
「完全にお世辞だろ、おまえはカピバラだ」
「もう、瑛くん!」
 そう言って、あかりは目をつり上げた。なんだよ、と瑛はそんな彼女の様子に内心でのみ悪態を吐く。俺だって、かわいいとか言ったことあるじゃないか。それなのにどうしてこちらの言い分はすべてスルーされて、その一つ年上だとかいう先輩の言葉には素直に反応するのか。
(気に入らない)
 そう思う矛先は果たしてあかりになのか、彼女が好意を寄せる先輩なのか。両方な気がするものの、比重がどちらに偏っているのかは瑛自身も把握しかねた。ただ、気に入らない。面白くない、という気持ちは完全に瑛の中で確立していた。それと同時にそんな気持ちを持つ自分自身へみっともないと嗜む瑛もいて、ほんの少しだけ冷静さを取り戻す。だが、当然瑛の葛藤を知る由もないあかりは無邪気な笑顔のままで瑛にトドメの一言を刺す。
「…あの、瑛くん」
「なんだよ」
「わたし、あんまり男の子の知り合いがいないから、その…たまに相談、とかって乗ってもえないかな?」
「は?」
 自分でも驚くくらい、不機嫌な声が出た。そのあまりにも悪意の籠もった声にはあかりも驚いたらしく、見る見る眉根を寄せて身体を縮込ませた。
「…ごめんなさい」
「何に謝ってんの」
「……瑛くんに頼り過ぎました」
「別に」
 どんどん泣きそうになっていくあかりの表情に、表面的な不機嫌さとは裏腹に、心の中は妙に焦燥感に駆られていた。
 泣くなよ。
 咄嗟に思いついた言葉は、それだった。冗談であかりをからかって怒る表情は何度も見たことはあるはずなのに、それが泣き顔になるとどうしてこうも動揺してしまうのか。
 しかも泣かせる原因なのが自分というのが、更に拍車を掛ける。
 瑛は自分を落ち着かせるように息を吐き出せば、あかりはなぜかびくっと肩を震わせた。呆れた上でのため息とでも勘違いしたのか、彼女は完全に俯いてしまっていた。
(ああもう)
 瑛は胸中でのみ呻いて、頭を抱える。殆ど小動物のように小さくなってしまった彼女を目の前にして、今度こそ本当にため息が出そうになるのを寸でで飲み込んだ。その代わり、俯くあかりの脳天のチョップをお見舞いしてやる。
「いたッ」
「話」
「え?」
「たまになら、聞いてやるっていってんの」
「え?」
 同じ言葉、というか単音を繰り返すあかりの顔を真正面から見られず、瑛は微妙に視線を逸らした。すると、数秒の沈黙のあと。あかりの顔がぱっと明るくなったのがわかる。
「ありがとう!」
 素直に感謝の言葉を告げる彼女に対して、瑛は得意のポーカーフェイスを保つのが精一杯だった。

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