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イチジ九

すべからくどうしようもない日常のあれこれ。 ネタバレ盛り沢山ですので注意!

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年下バンビ小ネタ(青春組)

バンビ→柔道部マネージャー。新名と同級生クラスメイト


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「に・い・な・くーん」
「……げ」
「もう、なんでそんな嫌そうな顔するの」
「言うことが予想できるから」
「わかってるなら柔道部に入ろう」
「ヤダ」
「柔道部楽しいよ! 面白いよ!」
「楽しくないし面白くない」
「やってもみない内からそういうこというの、だめだと思うな」
「やってもみない内からわかるから言ってんの」
「えー」
「…んな顔してもだめなものはだめ」
「えー」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……あのさ」
「おい、美奈子」
「あ、不二山先輩」
「(呼び捨て!?)」
「どうしたんですか?」
「迎えにきた。部活行くぞ」
「あ、はい。じゃあね、新名くん」
「ちょ、ちょっと待った!」
「なに?」
「…………け」
「け?」
「見学、くらいなら……行ってもいいけど?」
「本当!?」
「あ、やっぱやめ」
「不二山先輩! 新入部員です!」
「見学っていったよな俺!?」
「そうか、歓迎する」
「人の話聞いて!」


-----------------

…………あるえ?^^

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年下バンビ(続きで終わり)

うっかり書いてみたら予想外に続いてしまいましたが、これで終わりです。
後日まとめてサイトにアップします。

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 目の前で閉じたWestBeachの扉を見て、琉夏は美奈子へ向けて振っていた手の動きを止めて、降ろした。ウオン、と高くSR400のエンジン音が鳴くと、低く唸り声を上げればあっという間に遠のいていった。
 しん、と沈黙が落ちた室内で、琉夏はまるで一人取り残されたような錯覚を覚えた。しかし、いや、と心の中で頭を振る。事実、自分は取り残されたのだ。あの雪の日。熱を出した琉夏を心配して急いで帰路に着いたはずの両親は、そのまま帰らぬ人となった。
 あの時、熱を出さなければきっと二人は死なずに済んだ。きっと今も北海道にあるちいさな家で、くだらない冗談を交わしながら笑っていたはずなのに、とそこまで考えて琉夏は息を吐き出した。最近はあまり思い出さないようにしていた、暗くて重い感情がのしかかってきているのを自覚する。ようやくうまく付き合えるようになってきたのに、こうして気を抜くとすぐに琉夏を飲み込もうとするから困りものだ。が、それでもいいかと自分自身に問う。もういっそ、この真っ黒な感情に身を任せてしまえば、わずらわしいことを考えなくて済む。それが一番ラクな方法だと、琉夏もわかっていた。そうして目を閉じたところで、ふいに呼ばれた気がした。

 ――ルカちゃん。

 それは先ほどまで一緒にいた幼馴染の少女の声だ。
 一つ年下の、黒目がちな目が印象的な、かわいいかわいい女の子。
 琉夏がこちらに引っ越してきてから琥一と一緒に兄妹として過ごしてきた。何をするのにも琥一と琉夏のあとをついて回り、時には無謀な行動に出て泣かせてしまった場面も多々あった。その度に琥一と懸命に彼女を慰めた記憶を思い出して、うっかり口元が緩んでしまう。そうして、再び緩んだ口元を親指の腹でなぞり、引き結んだ。
 かわいい妹のはずだった。
 妹として、接してきたはずだった。
 しかしいつの頃からか、琉夏の目には無意識に彼女を「女」として見ることが多くなっていた。
 はっきりと自覚したのは、中学の卒業式の日だ。すでにその頃から素行がよろしくなった琉夏は、兄と一緒に式をさぼろうと屋上に続く階段の途中で、先客の存在に気がついた。見回りの教師でもいるのだろうかと息を顰めて様子を窺えば、どうやら教師ではなく自分と同じ生徒だというのがわかった。琉夏は身を低くしたままそろそろと近づいていき、生徒の声に意識を集中させる。どうやら二人の生徒がいるらしく、しかも雰囲気からしてまさに告白の真っ只中。琉夏は野次馬根性で事の成り行きを見守っていれば、ごめんなさい、と返した女子生徒の声で思わず顔と声を出し掛けた。
 その声は、間違いなく幼馴染の美奈子の声だった。
 それから「妹」と「異性」の狭間の揺れは激しくなり、高校入学と同時に家を出たことで結果として距離を取ることには成功した。高校生と中学生では時間のサイクルも異なるので、彼女と会う機会は格段に減ったことに、少しだけ油断していた。
 一週間前、琉夏は何とはなしに彼女の家に寄ってしまったのがそもそもの原因だろう。
 すでに勝手知ったる家の玄関に上がり、自分の家と同じくらい馴染んでしまった階段を上る。そうして彼女の部屋のドアを開けてみれば、真剣にDVDと睨み合う後ろ姿を見つけた。
 最近カットしたばかりなのか、いつもの肩口で揃えた髪先が少しだけ短く感じられた。髪の隙間から覗く白い首筋に釘付けになると、琉夏は吸い寄せられるように部屋に足を踏み入れ、美奈子を後ろから抱き締めるようにしていた。
 それからはちょっとしたいたずらのつもりがエスカレートしてしまったわけなのだが、もはやあの時点で琉夏の中で美奈子は「妹」ではなくなっていたのだ。
 自分の手で反応する美奈子を、素直にかわいいと思った。
 しかし唐突に泣き出した彼女の姿に我に返り、遅い後悔に襲われた。
 何してんだ、俺。
 そう自分自身を罵って、冷静になれるまで彼女に近づかないと決めていたのにどうしてか、相手の方がこちらにやってきてしまった。
 そうして美奈子の顔をみた途端、簡単に外れた理性のタガにも呆れた。
 結果として未遂で済んだけれど、セーフかアウトかと問われれば完全にアウトだ。

「…バカじゃねえの」

 口に出して、呟く。
 その声は誰もいないWestBeachに空しく響いて、消えた。

 *

 あえから一ヶ月ほどが経った。
 美奈子からの連絡はないし、琉夏からも彼女の近づくのはおろか、家にすら行かなくなった。
 それは当然といえば当然だ。あんなことをしておいて、どのツラを下げて会えばいいのか。さすがの美奈子も普通に接することはできないだろうと、琉夏はバイト帰りのだるい身体を引きずって WestBeachに辿り着いた。室内の電気は点いているので、琥一が先に帰ってきたのかとあたりをつける。しかしSR400の姿がないことに気がついて、コンビニにでも行ってるのかと考えながらドアを開く。ぎい、といかにも錆びた音を起てると、

「ルカちゃん」

 WestBeach内にあるダイナー部分のテーブルの一つに、彼女は座っていた。
 琉夏は入り口で立ち竦んでいると、美奈子が立ち上がった。そして、琉夏の元へ来ようとしているのがわかって、慌てて動きを制するように手を出した。

「俺に近づいたらどうなるか、もうわかっただろ」
「でも」

 制する琉夏の手に素直に従って、美奈子はその場で足を止めた。今日は制服姿ではなく私服なので、一度家に帰ったのかなんてどうでもいいことに思考を飛ばす。
 その間にも美奈子は困ったような表情になり、琉夏を見ようとして、けれどできずにあちらこちらへと視線を泳がしていた。そして、結局足元に視線が落ち着いたらしい。

「わたし、ルカちゃんが好きだよ」

 ぽつんと、美奈子が言った。
 その言葉に、うっかり浮かれそうになる自分を自覚して、しかし琉夏は慌てて押し留める。美奈子に気づかれないように呼吸を整えていると、俯いた彼女が顔を上げた。じっと見つめてくる黒目がちの目は、気を抜けば泣いてしまいそうな気がした。そして、多分それは間違いではないのだろう。まるで泣くのを堪えるように、美奈子は洋服の裾をぎゅっと握りしめていた。それは彼女が何かを我慢するときのクセだ。

「…えっちでずるくても、わたしはルカちゃんが好き」
「オニイチャンがいいなら、コウを選べよ」

 わざと冷たい声で、突き放すように言う。するとさすがに美奈子も怯んだらしい。大きく揺れる目に罪悪感が胸に刺さる。ずきずきずき、と鈍い痛みが琉夏を襲う。しんと落ちた沈黙も、その痛みに拍車を掛けてくれるから困る。

「お兄ちゃんなんかじゃなくて、わたしはルカちゃんが好きなの」

 つと、沈黙を破るように、美奈子が言った。
 重ねて告げられた言葉に、琉夏の方も泣きそうになる。
 咄嗟にどうしてと、内心で誰にともなく疑問を投げかけていた。どうしてあんなひどいことをしたのに、美奈子は自分を好きでいてくれるのか。どうして自分の欲しい言葉を言ってくれるのか。
 どうして、神様はこんな俺に、まだチャンスを与えてくれるのだろう。
 ふいに思い出すのは、幼い頃に両親といった教会の光景。ステンドグラスから零れる光がきれいで、そして今は、そのステンドグラスの光の中に両親の顔が重ねられた。微笑う両親の顔に、ぐらりと琉夏の思考が揺らぐ。いいのだろうか。許されるのだろうか。こんなにもずるくてチキンな俺は、まだこの子に触れる資格はあるのかと、琉夏は今日始めて美奈子の視線を正面から受け止める。彼女は、薄い涙の膜が目の表面に浮かばせ、けれど一生懸命に琉夏を見つめていた。

「……えっちなオニイチャンが好きなんて、美奈子も相当えっちだな」
「ちがっ」
「冗談。ほら」

 何とか軽口を叩いて、琉夏は両手を広げて見せた。そんな彼の仕草に、え、と美奈子が固まった表情にいたずらっぽく笑い返して、言う。

「おいで?」
「……えっちなこと、しない?」
「する」
「もう!」

 いつもの口癖で一喝して、けれど美奈子は素直に琉夏の腕の中へと飛び込んできた。
 琉夏は改めてそのちいさな身体を受け止めて、閉じ込めるように抱き締めた。
 まだまだ自分の中で消化しなければいけない問題は山積みだ。一つ一つと向き合って乗り越えるのにはそれなりの時間が掛かるだろう。けれど、

(一番最初にしないといけないことは、決まってる)

 琉夏は胸中で自分に言い聞かせ、美奈子、と妹だった幼馴染の名前を呼んだ。

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琉夏小話

この間ついったで上がったネタ。
「琉夏は計画的でき婚」という表現がぴったり過ぎた結果がこれでござる。


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ご利用は計画的に






 陽性を表す「+」の表示を目の当たりして、美奈子は息が止まった。
 ついで、どうしようと独りごちた後にお腹をさするのは、無意識か。
 何となく、予感はしていた。していたけれど、まさか本当にその予想が現実になるなんて思わなかった。
 急に足元が不安定になった錯覚を覚えながらも、すぐに脳裏に浮かんだのは琉夏の顔である。
 どうしよう、ともう一度繰り返し、美奈子は一先ず身支度を整えた。検査したものを見せるのは気が引けたが、これを見せないことには始まらない。美奈子は少しだけ迷ったあとに手近にあるティッシュに包み、開封した箱の中に戻した。
 一気に重くのしかかるような空気を背負って、トイレから出た。
 琉夏と二人で暮らしている安い一軒屋。一軒屋なのに破格の値段で借りることができたのは、見も蓋もなく言ってしまえばおんぼろだからだ。普通の神経の人ならば安いと思って飛びつき、いざ物件を見にいったら即座にUターンしてしまうほどの朽ち掛け加減で。美奈子も初めて訪れたときは動揺を隠せないほどだった。
 しかしそこが琉夏のたくましいところというかなんというか、兄の琥一も巻き込むと一通り安心して暮らせるレベルまでリフォームしてしまった。妙なところがしっかりしているなあと感心しながら二人で住み始め、今ではすっかり「我が家」になっていた。
 美奈子は室内用のスリッパに足を引っ掛けて、短い廊下を通ってリビングに向かった。最近買い換えたばかりのソファーが真新しく真ん中に置かれ、もらい物のテレビは沈黙している。テレビとソファーの間には、冬にはコタツになるテーブルが置き、ご飯を食べるときはいつもそこに座る。
 そして、そこにまだ見ぬ子供の姿を想像してしまい、美奈子はぐっと唇を引き結んだ。
 ――産みたい、と思った。
 妊娠をしてしまったのは、確かに予想外のことだ。でも、だからといって降ろしたいとは思わなかった。だってこの子は、間違いなく琉夏と自分の子供なのだから。

(でも)

 まだ、いらない。
 そう琉夏が言うことを想像して、先ほどの不安が美奈子を襲う。ふらり、と足元が揺れて数歩後ろに下がると、背中に壁ではないあったかいものが当たった。

「具合、平気?」

 背後から掛けられた声に、思わず身を固めた。美奈子はそろそろと後ろへ首を回すと、そこには思考の原因である琉夏が心配そうな目でこちらを見ていた。腰に手を回して引き寄せると、こつんと美奈子の額に自分の額を押し当てる。そうしてもう片方の手で首筋を撫でて、うーんと琉夏は唸った。

「熱はないか」
「……えと、琉夏くん?」
「どうした?」

 すぐ近くにある琉夏の顔から視線を外す。

「もしも、の、話とか…してもいい?」
「もしも?」
「そ、そう」

 オウム返しで帰ってきた言葉に、つっかえながら頷き返した。しかし続きの言葉を言おうとしたが、ええとと口の中でもたついてしまう。

「その」
「うん」
「もしも」
「うん」
「もしも……赤ちゃんができたら、どう、する?」
「え」
「あ、や、やっぱり困っちゃうよね! そうだよね!」
「美奈子」
「ちょっと聞いてみただけだから、ね? 気にしないで」
「できたの?」
「違うよ、もしもっていったじゃな」
「美奈子」

 静かな声で名前を呼ばれて、ぐっと腕が掴まれた。思ったより強い力で引き寄せられて、思わず美奈子はよろけそうになる。しかし、琉夏の手がしっかりと彼女の身体を支えた。

「正直にいって。赤ちゃん、できた?」
「……」
「美奈子」
「……はい」

 こくり。頷く。
 そして、次にやってくるであろう言葉を覚悟して、美奈子はぎゅっと目を閉じた。降ろして。先回りで聞こえてきた琉夏の幻聴から耳を塞ごうとするも、両手は琉夏が掴んでいるためにできない。
 が、美奈子が想像する言葉はいくら待っても言われることはなく、代わりに琉夏の腕の中に抱きすくめられていた。

「…琉夏くん?」
「良かった」
「え、何が?」
「赤ちゃんが出来て」
「え?」
「だって、俺と美奈子の子供だろ?」
「う、うん」
「だから、良かった」
「えっと、その、それって……産んでも、いいの?」
「え? むしろ出来るようにしてたんだけど」
「え?」
「あ」

 しまったと、あからさまに琉夏は失言に気がついて視線を逸らした。
 結局一通りの押し問答を繰り返すものの、このあとは二人手を繋いで産婦人科に向かったのだった。





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年下バンビ(性懲りもなく下の続き)

年下バンビ相手の琉夏はヤンデレ度が低いとかいってたら思いっきり ヤ ン デ レ た 。

どうしてこうなった(真顔)


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 は、と目が覚めた。自分の身体に毛布が掛けられているの気がついて、美奈子は寝ぼけた頭で周囲を窺った。今いる部屋の薄暗さに目を慣らすように細めて辺りを伺い、そこが自分の部屋ではないことを思い出して――思い出したら、自分がどうしてここにいるのかも思い出した。
 がばっとばね仕掛けのおもちゃのように身体を起こして、制服が調えられていることに気がついた。しかし見た目ばかり整えられていようとも、下着ばかりはどうにもならない。濡れて湿り気を帯びたショーツの感触に、まざまざと琉夏としてしまった恥ずかしい行為を思い出した。思わず毛布を掴んで顔を埋めて、叫び出したい声を必死に抑える代わりに低く唸った。暫く悶々とした気持ちと脳内戦争を繰り広げながら、ふと、顔を上げてもう一度部屋を見渡した。
 来たときと変わらずに散らかり放題の室内に、琉夏の姿はなかった。

「…ルカちゃん?」

 名前を呼んでみても、返事はない。ひょっとして自分はまだ夢を見ているのだろうかとほっぺたを引っ張ってみれば、確かに痛覚があった。
 美奈子は抱え込んでいた毛布を放し、ベッド下に置かれた靴に足を入れた。学校の鞄も肩に背負うと、そのまま床に散らばった色々なものを蹴っ飛ばさないように気をつけながら階段まで辿りつく。不安定な音を響かせながら一段一段を慎重に降りていく。

「ルカちゃん」

 階段を半分ほど降りたところで、美奈子は目的の人物を見つけた。一階にあるいくつものテーブルの一つに突っ伏すように座っている。寝ているのか聞こえなかったのか、美奈子の呼びかけに反応を見せない。

「ルカちゃん、こんなところで寝てたら風邪引くよ」

 美奈子は琉夏の傍まで歩み寄って、肩を揺する。

「…ああ、起きたのか」
「うん…」
「もう帰るだろ? 送っていこうか?」
「……えっと」

 さっきまでのやり取りが最初からなかったかのように、琉夏はあくびをしながら変わらぬ態度で口を開いた。しかしその変わらなさ過ぎる態度は当然美奈子を動揺させて、言葉も視線も迷いっぱなしだ。が、琉夏はそんな彼女の態度にすら気にかけることなく、座っていたソファーから立ち上がった。長い前髪をうっとうしげにかき上げると、首をぐるりと回しながら自室に続く階段を上ろうとして片足を掛けた。
 と、

「ルカちゃん」

 若干の躊躇いを含んだ美奈子が、琉夏を呼び止めた。琉夏はその声に従って足を止めて、振り返る。その顔はいつものどこかおどけているような表情で、口角が少しだけ持ち上げられていた。

「なに?」
「あの」
「ん?」
「……さっきの、ことだけど」

 俯いて、ぎゅっとスカートの裾を握った。よく見るとあちこちがすっかりシワだからけになっていて、それがまた現実を突きつけてきた。カアッと再び身体中に熱が集まって駆け巡りそうになるのを落ち着かせながら、美奈子は言葉を続ける。

「どうしてあんなこと、したの?」
「気持ちよかったろ?」
「そ、そういう問題じゃないよ!」
「そう? 理由なんて、それで十分だろ」

 突き放すようなその言い方に、美奈子は思わず顔を上げた。さっきまでのおどけた表情はなりを潜め、今はただ無表情の琉夏がそこにいた。元々が整った顔のせいで、感情の色が見えない双眸はぞっとするほどの怖さがある。

「オマエが本当に俺の妹だったら、あんなことしなかった」

 一歩、琉夏がこちらへ歩み寄る。

「優しい琉夏オニイチャンでいたかったのにさ、本当隙だらけなんだもんな」

 一歩、美奈子が後ずさる。

「え、…あの」

 二歩、琉夏が進む。

「今だってさ、折角逃がしてあげようと思ったのにそんな顔をされたら、気が変わっちゃうじゃん」

 半歩、美奈子は足を引く。

「…ルカちゃん?」

 三歩、琉夏は進んで美奈子の目の前まで戻り、

「つか、もう遅いけど」

 そういって、美奈子の腕を掴む。こわい。本能が叫ぶ。しかし身体は硬直したかのように動かずに、ただ、目の前にある琉夏の顔を見つめる。

「美奈子」

 形の良い琉夏の唇が動いて、名前を呼ぶ。その一連の流れがスローモーションのように見えた。美奈子はやっぱり動けずに、まるでその場に根がついてしまったかのような錯覚。しかしはそれはやっぱりただの錯覚でしかなくて、突然割り込んできたバイクのエンジンの音を耳にして、美奈子は弾かれたように反応すると琉夏の手を振り払った。

「何してんだ、おまえら」

 バイクのエンジン音が切られてから間を置かず、WestBeachのドアが開いて琥一が現れた。高校に進学してから短く切ってしまった髪から覗く耳からは、琉夏と揃いのピアスが揺れている。

「ちょっと、鬼ごっこ?」

 琥一の問いに琉夏は肩を竦めると、美奈子に同意を求めるように視線を向け
た。しかし美奈子はぱっと顔を逸らすだけで、何も返事を返さない。
 そんな二人のやり取りを眺めながら、琥一は面倒くさそうに顔を顰めたあと、美奈子の頭に手を置いた。ぐしゃぐしゃと乱暴に彼女の頭をかき混ぜると、元来た道を戻るようにして美奈子の背中を押す。

「コ、コウちゃん?」
「帰んだろ? 後ろ乗れ」
「でも、コウちゃん今帰ってきたばっかり」
「だからだろ。腰下ろしたら動きたくねーよ」

 殆ど引きずられるようにして WestBeachから外に出る。美奈子は閉まり掛けたドアを振り返ると、その隙間から琉夏が手を振っていたが、すぐに見えなくなった。


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年下バンビ(下のつづき)

「ちょっくら」が方言だと知って動揺を隠しきれない私ですこんばんわ。
…「だいじ」が方言なのは知っていたが、まさか「ちょっくら」までとは……結構使ってたよしまった!!
身近なところに隠れているのが方言の恐ろしいところです。

話変わって昨日の年下バンビがついったでわっふるされたので続きでござる!
SUMATAにしたのはただの趣味ですサーセン。
そして思ったより重くなってしまって何を隠そう私が一番びっくりだ。

全力でいかがわしいの大丈夫な方のみつづきからどうぞ。


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