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イチジ九

すべからくどうしようもない日常のあれこれ。 ネタバレ盛り沢山ですので注意!

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琥一小話

「コウちゃん、何読んでるの?」

 唐突に声を掛けられたのと同時、背後に重みが追加された。ついでにぎゅ、と押し付けられるようなやわらかい感触を感じた琥一はぎくりと身を固くする。いやいやいや、落ち着けや俺。とっさに相手を跳ね飛ばしそうになるのを気合で押さえつけて、どうにか首を捻って背後を見遣る。やってきた人物を確認するためだが、そうはいっても自分相手に物怖じせず声を掛けることも、ましてや抱きついてくるような輩は一人しかいないのだが。

「…おまえな」

 案の定、振り返った先にいたのは幼馴染の少女だ。琥一の肩にあごを乗せるような体勢をとっているため、顔が近い。近すぎる。どうしてこう無防備なんだと小一時間ほど説教をしたい。しかし現実はそんなことをしている余裕はなく、どうにか冷静を勤めるのに必死だ。読んでいた雑誌を閉じて、無意味に咳払いをする。

「とりあえず、離れろ」
「え、なんで?」
「なんででもだ」
「……でも」

 しゅんとあからさまに落ち込んだ美奈子に、うっと良心が痛んだ。

「しゃがんでるときじゃないと、コウちゃんとちゃんと視線合わせられないから」
「…だからって後ろから抱きつくこたねーだろ」
「あ、ごめん、いやだった?」
「いやとかそういう問題じゃねえ」
「じゃあどういう問題?」
「どういうって、おまえそりゃ」
「そりゃ?」

 琥一の語尾だけをオウム返して、美奈子は首を傾げる。その仕種とさらりと揺れる髪のせいか、いつもより少しだけ幼く見えた。
 だからよ、と決まり悪そうに口を開けば、目の前の相手は黒めがちの目でじっと琥一を見つている。途端、二の句を告げる言葉が再びうやむやになる。あー、と無意味に唸って眉間にシワを寄せた。目尻がひくつく。

「……後ろより、前にこい」
「あ、そうだね。その方が見やすいよね、雑誌もコウちゃんも」

 琥一の提案にあっさりと頷いた美奈子は、彼の葛藤など当然知ることもなく移動する。そうしてちょこんと隣に座り、琥一が開いていたバイク雑誌へと興味津々のご様子。
 こっそりため息を吐く彼の苦労が報われるのはもう少し時間が掛かりそうだ。

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そして数分後ルカがやってきてバンビに抱きついてコウちゃんが殴るまでがワンセット。

拍手[13回]

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双恋小話

ラビと琥一の話を書きつつ話が進まないぜうおーっとなったら初ちゅうの話で悶々としてきたのでざくっと一発書き。

もはや初えっちも書くべきかしらとか妄想しつつ需要があるのかと小一時間。
それよりも何よりも文章書けないぜ病をどうにかするべき。

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(琥一とラビ)

「帰るぞ」

 教室の入り口から声を掛けられて、わたしは伏せていた顔を上げた。
 まだまばらに残っているクラスメイトたちも声の方角へと顔を向けて、男女それぞれの反応が聞こえた。

「ごめん、琥一。もう少し待って」
「あん?」
「今日日直なの。もう少しで日誌が書き終わるから」

 そうわたしが説明している途中で、琥一は無遠慮に教室の中に入ってきた。この時点で残っていた生徒は全員退散してしまったので、あっという間に教室に二人きりになる。けれど、わたしは構わずに書き途中の日誌に向き直れば、琥一は前の席の椅子を引いてそこに腰を下ろした。

「ごめんね?」
「別に」
「ん」

 口調こそぶっきらぼうではあるけれど、その裏側にある優しさに顔が緩みそうになってしまう。困ったな。最近のわたしはちょっと贅沢し過ぎじゃなかろうかと考えている途中で、日誌を書く手が止まっていることに気がついた。いけないいけない。早く仕上げて帰ろうと、わたしはシャーペンを握り直す。

「おい」
「ん?」

 ふいに呼びかけられて、わたしは日誌から琥一へと視線を持ち上げた。すると思ったより近い位置に琥一の顔があって、どきりと心臓が跳ねた。握っていたシャーペンを取り落としそうになるのを堪えて、なに、と問う前に琥一が更に距離を詰める。近づく顔に驚いて咄嗟に顔を避けるように引けば、琥一はわかりやすく眉間にシワを寄せた。舌打ちをしそうになったらしい口元を引き締めて、低い声でわたしの名前を呼ぶ。

「なに、かな?」
「目ェ閉じろ」
「…なんでって、一応確認してもいい?」
「わかってることを訊くんじゃねえよ」

 そう琥一は言って、シャーペンを持つわたしの手に自分の手を重ねた。最近になってようやく繋ぐことには慣れてきたはずなのに、こうして改めて触れられるとやっぱりまだ恥ずかしい。そうして心臓の鼓動は早くなるばかりで、それこそ本当にいつなったらこのどきどきはなくなるのだろうと思ってしまう。だって琥一と付き合うことになってもうすぐ一ヶ月が経とうというのに、わたしは未だに彼の一挙一動に振り回されてばかりだ。
 まさに今現在もそれは進行中で、心臓が耳にあるんじゃないかというほどにうるさい。
 琥一の指先がわたしの頬に触れて、親指の腹が目じりを撫でる。そうして再び琥一が顔を近づけてくるのがわかって、今度は逃げない代わりに、けれどどうしていいのかわからずに固まってしまう。鼻先がくっつきそうなほど近づくと、それでもやっぱり目を閉じれずに相手を見返す。
 と、てっきり唇に重ねられると思ったそれが、的を外したように口の端へと押し当てられた。え、と小さく声を漏らせば、琥一は今度こそわたしの唇へとキスをする。少しだけざらつく表面と、しかし想像よりうんと柔らかい感触を受け止めるの精一杯なはずなのに、頭の中は余計なことが取りとめもなく浮かんでは消えていく。
 すると何ともタイミング良く(悪く?)、机の上に置いておいた携帯電話が着信を告げた。途端、重ねられた唇が離れていき、思わずさみしいと思ってしまえば改めて顔が熱くなっていく。

「…携帯」
「う、うん…」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……嫌だったか?」
「……」
「……」
「……いやじゃ、ない…デス」

 震える携帯電話を手の中で握ったままそういえば、琥一の大きな手がわたしの頭を撫でた。
 そうか、と低い声が聞こえてきたのと同時、手の中の携帯電話の振動が止まった。

拍手[14回]

年上バンビ小話(紺野)

「あれ?」

 何気なく通りかかった準備室前で足を止め、紺野は思わず声を上げた。すると室内に佇む女生徒が振り返って、目が合った。黒板消しを手にした彼女は同じクラスメイトだが、覚えてはいるのは名前くらいで正直あまり交流はなかった。
 一先ず紺野は再び室内に視線を巡らせて、もう一度首を傾げた。訊く。

「ここの掃除担当は君と設楽の二人じゃなかったかな?」
「そうなんだけど、セイちゃん、逃げちゃって」
「セイちゃん?」

 彼女の呼び方を聞いて、紺野は更に怪訝な表情をする。それに対して相手は苦笑を浮かべると、幼馴染なの、と理由を付け加えられたことでようやく合点がいった。なるほど。そういえばこの場にいない設楽と彼女がよく一緒にいる姿を見けるなあと、高校に入学してからここ二ヶ月弱の記憶を振り返った。

「設楽は君に押し付けていったの?」
「頑張って引き止めたんだけどね」

 言う彼女は肩を竦めて見せるものの、これが初犯ではないということがありありとわかった。となればこれは設楽ばかりではなく、彼女も相当なお人よしということだ。紺野は相手と同じように苦笑を返せば、室内に足を踏み入れた。

「ちゃんと当番制になのに。だめだな、設楽は」
「ね。今度捕まえたらきつく言わないと」

 紺野に同意するように力強く頷いて、美奈子は八つ当たりのように黒板消しを窓の外に向けて思い切り叩いた。すぐにもわもわと白い粉が飛散する。紺野はそんな彼女の後ろ姿に向かって口を開きかけて、けれどふいに聞こえたピアノの旋律に意識を奪われて言葉を止めた。今日は吹奏楽部の活動は休みのはずなのに、なぜだろうと思っていた矢先、黒板消しを掃除していた美奈子が驚いたような顔をして、手を止めていた。
 ピアノの音色は、まだ続いている。

「…セイちゃん」

 ぽつんと、呟く。

 妙にそわそわと落ち着かない仕草で視線を彷徨わせるも、それは聞こえてくるピアノの音を追いかけているみたいだ。そんな彼女の態度に紺野は目を細めて、問う。

「このピアノ、設楽なのかな?」
「え、あ…うん」
「あいつ、ピアノが弾けるんだな」
「…うん」

 尋ねるたびに頷く彼女の声はちいさくなっていく。どうしたのと紺野が訊くよりも早く、美奈子は顔を上げて詰め寄ってきた。

「あの、紺野くん!」
「な、なに?」
「掃除、もう終わりでいいかな?」
「え?」

 彼女とクラスメイトになって二ヶ月弱だが、こんな剣幕を見せたことはなかった。思わず面食らって目を白黒させてしまうものの、紺野は何とか立ち直って相手の目を見返す。きゅっと唇を引き結び、黒目がちの目でまっすぐこちらを見つめてくる彼女になぜか鼓動が高く鳴った。けれどその原因を突き止めることはせずに、紺野は美奈子が握りっぱなしの黒板消しを受け取った。

「うん。もう大分片付いてるから、いいんじゃないかな」
「あ、ありがとう!」

 言う紺野の言葉に美奈子はぱっと笑顔を見せたあと、黒板消しと紺野を交互に見てからぺこりと頭を下げた。準備室の隅に置いておいた鞄を肩に掛けて、「また明日ね!」とだけ言い残すと文字通り教室を飛び出していく。途端、廊下は走るなあ! という大迫の声が響いてきたので、こちらまで驚いて身を竦めてしまう。
 一人きりで準備室に残された紺野は、受け取った黒板消しをじっと見つめた。
 準備室内は次第に夕暮れに染まりつつあって、そうしてピアノの演奏もまた、校内に響いて紺野の耳に届いていた。

(小波美奈子さん、か)

 改めて相手のフルネームを思い出して、内心で呟く。去り際の笑顔を思い出すと再び鼓動が大きく鳴った気がした。けれどやっぱりその理由はわからず、紺野は黒板消しを元の場所に戻すと、自分も準備室を後にしたのだった。

拍手[3回]

新名小話

何だかスランプなどという大層なものではなく、ちょっと書けない期間っぽいのでいつにも増してがったがたです。うおーん、センスが欲しい!と思いつつもカッとなった新名小話。
この間のついったでの新名祭りに参加できなかったんだもの…!
そして最近では最MOEが誰なのか行方不明である。

わかったことは自分で自覚している以上にコウちゃんが好きだということだ……あれ、コウちゃん最MOEフラグ?


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 夕飯を食べて自室に戻った途端、ズボンのポケットに突っ込んでおいた携帯電話が着信を知らせた。しかもこの着信音に指定しているのは一人だけで、新名は慌てて携帯電話をポケットから引っ張り出した。するとディスプレイには予想通りに指定してある彼女の名前と電話番号が並んでいる。
 新名はすぐに通話ボタンを押して、携帯電話を耳に押し当てた。もしもし、と応答すれば、何故か少しだけ上ずったような声が返ってくる。

『も、もしもし? えと、今平気?』
「うん、部屋だからへーき。どうした?」
『ええとほら、明日のこと』
「ああ、センター?」
『うん』

 電話が掛かってきた時点でなんとなくわかっていた。明日は新名の一流大学のセンター受験日だ。一年早くはば学を卒業した彼女と同じ進路を目指した新名は、一応合格圏内に入っているとはいってもやっぱりそれなりに緊張していた。
 だからこうして自分を気に掛けて電話をくれたことは、素直に嬉しい。

『新名くんなら大丈夫だと思うんだけど』
「またまたー。褒めても何もでねえよ?」
『褒めてるんじゃないもん、本当にそう思ってるから』

 電話口でも、彼女が本当にそう思ってくれているのがわかる。きっと顔も至極真面目なそれなんだろうなあと想像すると、思わず笑いそうになってしまう。けれどここで笑えば相手を怒らせるのは明白なので、新名は口元を押さえることでふきだしそうになった笑いを堪えた。「あんがと」と携帯電話に向かってそういえば、どういたしましてという言葉のあとにくしゃみが続く。

「あんたこそ、今どこにいるの?」

 てっきり彼女も自宅にいるのかと思ったが、よくよく電話の向こう側の音を聞くと外にいるらしいのに気がついた。通り過ぎる車のエンジン音に顔を顰めて、テーブルの上に置かれたデジタル時計を一瞥する。時刻は夜の8時を回った頃だ。しかし彼女はええと言い淀むだけで、はっきりとした場所を知らせない。瞬間、まさかと新名は顔を顰めてみせたあと、その考えを口に出して訊く。

「俺ん家の近くにとか、いたりする?」
『え』

 驚いたような声が上がって、けれどそれだけで十分だった。彼女にはそこから動くなとだけ告げて電話を切ると、新名はクローゼットに引っ掛けてある上着の一つを羽織ると部屋を飛び出した。うっかり弟と衝突事故を起こしそうになるのをぎりぎりで交わし、玄関までまっすぐ走る。母親に適当な言葉を投げてからスニーカーに足を突っかけた。弟が冷やかしの言葉を投げてくるのが聞こえるが、無視。そのままエレベーターまで向かって、けれど中々来ない待ち時間に焦れて、結局階段を使って降りていく。ぜえはあと上がる呼吸が耳をついて、だらしねえぞ新名と不二山の声が聞こえた気がして苦笑を浮かべてしまう。そうして一階にまで辿り着けば、ちょうどマンションの入り口に立つ彼女の姿を見つけた。太めのマフラーを巻いているものの、その鼻の頭はうっすらと赤くなっている。

「…何してんだよ」
「ご、ごめん」
「いや、いいんだけどさ。黙ってこんなところにいたら風邪引くっしょ」
「…うん、ごめん」
「だから謝らなくていいって」

 そういって、新名は彼女の傍にまで歩みより、赤くなった鼻先をいじわるく摘んでやる。すると予想通りにもう! とお叱りが飛んでくるものだから、これ以上の反撃ができないように思い切り抱きしめてやる。

「激励にきてくれたんだろ?」
「…そう、です」
「あんたのそういうとこ、大好き」

 そういって、新名は彼女のほっぺたにちゅ、とキスをすれば、ひんやりと冷たい頬に思わず顔を顰めた。

「俺の心配もいいけど、自分のことも考えろって」
「こ、これ渡したら帰ろうと思ってたんだもん」

 そういって鞄の中に手を差し込むと、赤いお守りを取り出した。

「わたしが受験のときにもここのお守りもらったから、新名くんにもと思って」
「あんたのご利益つきなら、間違いねえよ」
「うん。それだったら、嬉しい」
「あ、じゃあさ、もう一個ご利益にあやかってもいい?」
「え? なに?」

 きょとんと目を丸くしてこちらを見返す彼女に笑い返せば、新名は耳につけているピアスを取って相手の手の中へと渡す。ぱちぱちと瞬きをする彼女を見て、新名は続ける。

「これ、俺のお気に入りなんだ。だからあんたが持ってて」
「わたし?」
「うん。で、大学受かったら、お祝いに新しいピアスプレゼントしてよ」
「…いいよ」
「ん」

 言う新名の言葉に、笑って頷く。それを確認した新名も笑い返すと、改めて彼女の頬に手を伸ばした。やっぱり冷たいままの頬を包むように両手で覆うと、顔を近づけるように身を屈めて囁くように告げた。

「……最後のご利益、ちょーだい?」

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コルダ小ネタ

週末明けて風邪っぴきですばかな。
コルダは先生を攻略したら大分満足してしまった…
うっかり柚木先輩が好きなのも困った。
けれど小ネタは火原先輩と土浦です。
秒殺の短さ!小ネタだからね!


---------------

(火原先輩の場合)

「オレのこと、和樹先輩って呼んでみるつもりない?」
「な、なんですか急に…」
「急にじゃないよ。オレばっかり君のこと好きなように呼んでるからさ、だったらこっちも別の呼び方をしてもらわないと不公平だと思って」
「いや、でも」
「それとも、嫌? オレのこと名前で呼ぶの」
「嫌とかではなく」
「じゃあどうぞ」
「え、えええ…」
「だめ?」
「…その、恥ずかしいんです…」
「なんで?」
「だ、だって」
「オレは君に名前で呼んで欲しいよ」
「ええと」
「ほら、一回呼んじゃえばいけるって」
「ひ、火原先輩~!」
「和樹先輩」
「…ううう」
「ほーら」
「………か」
「うん」
「帰ります! 失礼します!」
「え、ちょっと!?」



「うーん、ちょっと強引過ぎたか」



(土浦の場合)


「土浦―」
「……」
「おーい、土浦ってばー」
「……」
「つーちーうーらー」
「聞こえてる」
「だったら返事してよ」
「…おまえさ」
「なに?」
「オレのこと呼んでみろ」
「土浦」
「そうじゃなく」
「じゃあなに?」
「あのな、オレとおまえは付き合ってるんだよな?」
「そのつもりだけど」
「で、だ。オレがおまえを名前で呼んでるのに、なんでおまえは苗字で呼ぶ」
「呼びやすいから」
「は?」
「だって土浦の下の名前、長いじゃない」
「……そういう問題か?」
「え、違うの?」
「おまえに色々期待した俺がばかだった」
「じゃあ梁ちゃんって呼ぼうか?」
「やめてくれ」
「なんで? かわいいのに」
「そういう問題じゃないだろう」
「そういう問題だよ」
「……」
「……」
「……好きにしろ」
「うん、梁太郎」
「ッ、おまえなあ!」




土浦をいじめのが楽しいという新しい発見。

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