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イチジ九

すべからくどうしようもない日常のあれこれ。 ネタバレ盛り沢山ですので注意!

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双恋小話

初体験を書いてはいるんですが中々纏まらない…おおおお。
とりあえずフラグを立てて起きます。笑


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 本日は3月14日。ホワイトデーだ。
 前回のバレンタインから一ヶ月が経ち、今日も今日とて今度はお返しのためか校内がそわそわしている気がする。とはいってもそれらはやっぱりバレンタインほどの騒ぎではないが。

「そこのお姉ちゃん」

 つと。
 完全に四時限目が終わったお昼休みのことを考えていたところへ、突然声が掛けられた。わたしはその呼びかけに一瞬だけ動きを止めて、しかし振り返らずに脱兎の如く逃げ出した。確認しなくとも声で相手が誰かなどわかっているし、むしろ直感的に嫌な予感がしたのだ。
 廊下は走っちゃいけませんという基本ルールはわかっているのだが、今はそんなことに構っていられない。構ってはいられないが、結局は生徒がそこここにいる学校内だ。人を避けて走っていては当然スピードは出ないし、そうなると男女プラス足のコンパスの差からわたしはあっさりと捕まってしまう。

「捕まえた」

 わたしの腕を捕まえていう声は、わたしほど呼吸が乱れていなさそうなのも悔しい。わたしはしぶしぶ振り返って見ると、そこには予想に違わず幼馴染の琉夏が満面の笑みを浮かべていた。
 そしてその笑みと目が合ってから、わたしの嫌な予感が確信に変わる。というかむしろ嫌な予感以外の何ものでもないが、わたしは引きつった笑顔を浮かべて琉夏に問うた。

「何か用かな?」
「俺はホワイトデーのお返しを渡そうと思っただけだぜ?」
「そうだと思ったから逃げたんだよ!」
「ひでえ」
「どうせバレンタインの仕返しでしょ?」
「そんなことねえよ?」
「うん、そんな笑顔で騙されないからね?」
「いいから、ほら、手ぇだして」
「…ええー」

 こちらの反応なぞお構いなしに、琉夏は掴んでいない方の手も差し出すように促してくる。わたしは観念してしぶしぶ手を出せば、ぽん、と両手のひらに乗るサイズの箱が置かれた。丁寧にリボンまで巻かれてはいるが、ラッピングはされていない。なので当然中身は丸見え状態だ。わたしは一度琉夏を見たあとに渡された箱を顔に近づけ、改めて箱のパッケージをみて――固まった。

「琉夏…!」
「うれしい?」
「うれしくない! 何考えてるの!」
「お姉ちゃんのために選んだんだぜ。避妊、大事」

 言って、琉夏はわたしの行動を先に読んだらしい。押し付け返されるのを防ぐように、こちらの手に手を重ねてぐっと箱を押し付けてくる。わたしは周囲を通り過ぎていく生徒たちを気にしながらも、ぎっと目の前の幼馴染を睨み付けた。そうして反論を口にしようとしたそのタイミングで、今度は別の声が割って入ってきた。

「何騒いでやがる」
「コウ、いいところに」
「あん?」
「ちょっと二人の未来計画の話を」
「琉夏!」

 琉夏の言葉を制するように、わたしは声を上げた。当然廊下のど真ん中、あまつ桜井兄弟というオプション付では注目を集めるには十分過ぎるほどの条件が揃い過ぎていた。
 わたしは一気に集まる視線を受けながらも、それらから逃げるように逆走を開始したのはいうまでもなく。

 しかしながら、この日琉夏から受け取ったプレゼントが数日後に活用されるのはまた別の話。

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