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イチジ九

すべからくどうしようもない日常のあれこれ。 ネタバレ盛り沢山ですので注意!

審神者と清光と安定

※風邪ひき主を心配する清光と安定




 襖を一枚隔てた向こう側から、ちいさく咳き込む声が聞こえる。それを聞くたび、清光の心臓はぎゅっと締め付けられるように痛んだ。思わず右手を胸の上に置くと、着物の合わせ目をぎゅっと掴む。前の主も病を患い始めては咳が止まらなかった。隠れるように、隠すようにひっそりひっそりと苦しげに咳を繰り返していたのを思い出す。そうして刀だったときより、人の形になった今の方がより自分の不甲斐なさを痛感する。何かしたいのに、何もできない。前の主のことが過ってそばに行くことすらできない。臆病者と自身を呪うことしかできず、こうして襖の前に座り込むことが精一杯だ。
 すると、唐突に自分の前に影が落ちた。
 顔を上げて影の正体を確認すれば、そこには表情の読み取れない安定が佇んでいた。けれど清光には十分すぎるほど彼の身上がわかってしまい、ぐしゃりと顔を歪めてしまえば、同じタイミングで安定も同じように表情を崩す。
「何してるの」
「そっちこそ」
 互いにそっけない言葉を交わして、黙る。すとんと安定が隣に腰を下ろしたかと思えば、膝を抱えて表情を隠してしまう。
「清光」
「なに」
「ただの風邪なんだろう」
「うん」
「大丈夫なんだろう」
「そう聞いてる」
「そっか」
「うん」
 不安を解消したいはずなのに、言葉を交わせば交わすほど、不安になっていく。大丈夫と繰り返すほど、増えていく暗い黒い感情から目を逸らすように、清光も膝を抱えて顔を伏せる。
 と、からりと軽い音を立てて襖が開いて、二人は同時に顔を上げた。その視線の先にはメガネを白衣姿の薬研がいて、こちらの姿を見つけた彼は驚いたように「うおっ?」とちいさく声を上げた。
「薬研、どうしたの?」
 すると、部屋の奥から控えな声が聞こえた。
 薬研は清光と安貞から声の方へ視線を動かし、にっと口の端を揚げて笑う。
「見舞いの客が来てるぜ、大将」
 言って、二人が壁にしていた襖が薬研の手によって開かれる。
 え、と完全に虚を突かれていると、部屋の主である彼女も同じようにきょとんとした顔をしていた。
 寝間着姿の彼女と、清光安定は枢要見つめ合ったあと、先に表情を崩したのは主たる彼女の方だった。
 眉を八の字に下げて、困ったように笑う。
「不甲斐ない主でごめん」
「「そんなこと!」」
 同時に同じ言葉を言いかけて、やはり同じように立ち上がりかけた二人は同じタイミングで動きを止めた。そのままどうしていいかわからずにいれば、「少しだけな」と薬研は言い残して去っていく。
「……あいつ、本当に短刀かな」
「僕もそう思う」
 清光と安定は薬研の後ろ姿を見送ったあと、ようやく立ち上がることに成功した。

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女審神者と来派兄弟

「自分、蛍丸と愛染国俊の保護者の明石国行いいます。よろしゅう」
 ぶすくれた表情の愛染国俊の隣に、まったく正反対の表情でへらへらと笑う男が開口一番にそう自己紹介をしてきた。
 わたしは明石国行と名乗った彼を見、憮然とした表情のままの愛染を見、もう一度明石へと視線を戻してからやや強張った笑顔を浮かべた。自分でも口の端が引きつってるのがわかる。
「ええと、その、よろしくお願いします…」
 どうにかそれだけを言って見ると、玄関の方が再び騒がしくなる。そういえば遠征組が戻る時間だったかと、壁に掛けられた時計の時刻を確認して思い出した。出迎えようかどうしようか、本丸に来たばかりの明石のことが引っかかってその場でオロオロとしていると、パタパタパタパタっと軽い足音が近づいて来る。ぱーん! と障子が開き、明るい声が続く。
「主、ただいまっ」
 身長に見合わない大太刀を背負った蛍丸が、屈託のない声で帰還の報告にやってきた。わたしはその声に反応して振り返り、おかえり、と返そうとして、動きが止まった。というか、正確には動けなかったのだ。
 タンッ、と軽い音が聞こえるのとほぼ同時に、ガガン! と鈍い音が続いた。それは蛍丸がいつの間にか抜刀した刀が、部屋の天井にめり込んだ音だ。
「なんや、落ち着きや蛍丸」
「……命拾いしたね」
「蛍! 外に出て改めてやっちまおうぜ!」
「それもそうか」
「いやいやいやいやいや、まってまってまってまって」
 突然の乱闘が始まりそうな雰囲気に、わたしは慌てて明石の前に割って入った。ら、にょっと背後から手が伸びてきて、その手が私を後ろから抱きしめるように回される。んん!? と訝しげに背後へと首を捻って見れば、にやりと底意地の悪い笑顔と目が合った。
「そうやで、二人とも。主はんが困ってるんやから大人しゅうしぃや」
「俺は! おまえのそういうところが嫌いだ!」
「おおきに」
「褒めてない」
 ばっさりと容赦なく蛍丸は言い捨てると、手に持った刀を改めて構え直すように握ったかと思えば、いつの間にか加勢するように国俊が蛍丸の隣に並んで抜刀している。
「さ、審神者命令です! ケンカしない!」
 ほぼ和泉守兼定と陸奥守吉行に言い渡す専売特許の言葉を発すれば、ひとまず国俊と蛍丸は不満げな顔をしつつも刀を収めてくれた。けれども背後に佇む自称彼らの保護者らしい明石は、変わらない笑顔を浮かべたまま、「おおきに」と言うだけで。
 新しい戦力には素直に喜べないわたしは、ため息を吐いてがっくりと肩を落とした。

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ホワイトデー瑛主

3月も半ばとは言え、海辺でのデートはまだ肌寒い。あかりはほんの少しだけ身震いすれば、隣にいた瑛が少しだけ身を寄せてきた。ちらっと彼へと視線を向けれてみると、ばっちり視線が合ってしまい、思わず俯いてしまう。
 正直に今の心境を一言で言うならば、「恥ずかしい」だ。羽学の卒業式の日に瑛から「好きだ」と告白をされたことは記憶に新し過ぎて、彼氏彼女として始めて出掛けた今日はうれしさよりも戸惑いの方が大きい。
 瑛と何度も使った待ち合わせ場所も、歩いた道も、この海辺のどこもかしこも「友達」として過ごした思い出がそこここに残っていて、それが今や「恋人」になった事実がすごくすごく恥ずかしい。
 そんなことを改めて実感すれば、さっきまで肌寒いと思っていたはずの体温はじわじわと暑くなってきた。特に頬を中心に熱が上がってきた気もして、あかりは顔を覆いたくなった。
(ううう)
 と、あかりは内心で唸るだけに留めては、代わりに膝を抱え直した。すると、ぽん、と頭の上に何かが載せられた。ん? と顔を目を上に向けるものの、当然頭に載ったものは見えない。更に体勢を後方へと倒そうとすれば、今度は顔面へと「それ」がスライドされた。
「ぶっ」
 構えていなかっただけに我ながら何とも情けない声を出してしまう。そうして隣では、堪え切れず吹き出したらしい瑛の笑った声が聞こえた。
「も、もう!」
 落ちそうになる「それ」を両手でしっかりと掴んでから、ひとまず瑛へと抗議を申し上げる。すると予想通りに瑛はおかしそうに笑ったまま、あかりの手にある「それ」を指差した。
「悪いかったって。それで機嫌直せよ」
「…餌付け?」
「違う。ほら、今日は……アレだろ」
「どれ?」
「アレだって」
「だからどれ」
「だからっ、………ホワイトデー」
 どこか拗ねたように言い放ったあと、瑛は項垂れてしまった。
 ホワイトデー、とあかりはオウム返しのように呟いて、少しだけ顔が強張った。言う。
「……わたし、今年は瑛くんにあげれてないよ?」
「知ってるけど、くれようとはしてただろ。…じいさんが言ってた」
「あ、マスター…」
「じゃないけどな、もう」
 自嘲のような苦笑いを浮かべた瑛の表情に、あかりは言葉に詰まった。手の中にある「それ」――そっけない紙袋を見つめて、さらに見つめて、もっと見つめていると、瑛のチョップがしびれを切らしたようにあかりの頭に落とされた。
「いつまで見てるんだよ」
「だって、やっぱりあげてないし」
「……だったら、来年2個くれればいいだろ」
「え?」
「今年の分と、来年の分で」
「2個?」
「そう」

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書けば出るっていうので【じじい×女審神者】

個性豊か(表現をすごくポジティブに表現)な刀たちとの暮らしは、それなりに順応してきたと思っていた。
 新しい刀が加わるたび、四苦八苦しつつも何とか今日までやってこれたし、困ったときは清光や薬研や光忠がさり気なくサポートしてくれていた――けれど。
(……どうしよう)
 新しくやってきた三日月宗近という刀に対しては、どう接していいのかわからずに頭を抱えていた。しかもよりにもよって頼りになる薬研と光忠は遠征中で、清光も出陣中だ。ついさきほど送り出したところなので、三人とも早々帰って来ないだろう。
(こ、困った)
 縁側で絶賛日向ぼっこ中の三日月の背中を見やりつつ、わたしは頭を抱える。どうしよう。仕事のためにと歴史と刀たちのことを勉強していたからこそ、あの刀がとんでもないレア物なのがわかっているだけにどうしよう!どう扱うのが正しいのかわからない!
「主よ」
「は、はい!」
 不意打ちで声を掛けられてしまい、わたしはまさに飛び跳ねて返事を返す。というか、わたしがここにいることバレてた!?
「な、なん、なんでしょう?」
「そんなに身構えることもなかろう。俺の主なのだし」
「はあ…」
 こちらを見つつ、三日月はのんびりとした口調で言う。そんな彼に対して、わたしは曖昧な返事を返してみれば、にこにこと機嫌良さそうな三日月が「来い来い」とばかりに手招きをしてきた。特に逆らう理由もないけれど、わたしは数秒戸惑ってから、意を決して彼の傍に歩み寄る。と、今度はぽんぽんと自分隣へ座るように畳を叩いた。
「少し話でもしないか? 皆は今、出払っているのだろう?」
「ま、まあ、そう、です」
 促されるままに三日月の隣に腰を下ろして、けれど彼の顔を見ることができずに目の間に広がる庭へと視線を向ける。天気の良い日の縁側はとても気持ちが良くて、いつもなら短刀の子たちと昼寝をすることもあるというのに、今日はとてもじゃないがそんな気分になれるはずもない。
 どきどきどきどきと無駄に速まる心臓の音が耳にうるさくて、話をしようにも考えが全く浮かばない。というか、話をする内容が浮かばない。
「主よ」
「は、はィ!」
 声が裏返ったかのような素っ頓狂な返事をすれば、くすりと隣で三日月が笑った。その笑い声につられて彼の方を見やると、やはり目を細めて楽しそうに笑っている。その表情というか、佇まいに身体中の温度が一気に上がっていくのがわかる。人の形になった刀たちは皆、どこか浮世離れしたきれいさがあったけれど、その中でもこの刀は段違いだと痛感する。さすが天下五剣と内心で呻いくと、ぽんと頭の上に手が置かれた。その手が三日月の手だということを理解するのに数秒掛かって、けれど認識したあとはぎしりと身体が固まって動けなくなった。
「今日からよろしくな、俺の主」
 低く、囁くような声がさらに体温を高めていくのがわかって、このままわたしは溶けて消えてしまうんじゃないかと思った。
 遠くで誰かの「ただいま」という声が聞こえた気がしたけれど、わたしはその場から動く気力を取り戻せずにただ三日月に頭を撫でられ続けるのであった。


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まだじじいはうちに来てません。

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加州清光+女子高生主

自分以外に代わる人がいない、そんな「特別」なんて望んだことはなかった。
 ただ、普通でありたかった。
 普通の家族で、普通に学校に行って、普通に友達と過ごして、普通な日常を送る。それだけで十分だったはずなのに、わたしの日常から突然「普通」が取り上げられてしまった。
 テレビや映画で良く見る要人をガードするボディーガードのような風体の人たちが私の両サイドを挟み、いまでは珍しい古い日本家屋へとわたしは連れて来られた。迷子になりそうな廊下を進み、無駄に広い畳の部屋と通される。わたしは促されるままに部屋に入ると、用意されていた座布団の上に正座した。開け放たれた襖から外の景色を見て、あんまりにも平和過ぎる光景に夢でも見てるのではないかと錯覚する。

「あなたは審神者に選ばれました」

 今朝、いつも通り学校に行くために支度しているわたしの元へ、先ほどのボディーガードの一人がやってきてそう言った。何を言っているのか理解出来ず、縋るように両親を見やったものの、その両親も困ったように表情を曇らせているだけ。そうして、暫くの沈黙を続けるも、わたしには断る選択肢がないことを悟った。そのまま学校には行かずにこの屋敷や連れて来られたけれど、車内でわたしの役割は説明されたもののさっぱり頭に入ってきていない。あまりにもあまりな出来事のせいで、脳が正しく処理出来ていないらしい。
 けれどもそんなわたしの事情などお構いなしに、事態はどんどん進んでいく。
 正座したわたしの前には、鞘に納められた一振りの日本刀が差し出された。どうしていいのかわからずにボディーガードの人を伺い見るも、サングラスをしているためか表情はまったく読めなかった。でも、この日本刀を受け取らなければいけないことは明白で、わたしはそろそろと手を伸ばしては指先で触れる。硬い鞘の感触を感じた瞬間、ぐらりと世界が歪んだ。ぐんっ、と思い切り誰かに引っ張られるような感覚を覚えて、倒れると思った。しかしわたしの身体は畳の上に転がることなく、誰かに支えられたらしい。
「ちょっと、大丈夫?」
 頭上から掛けられた声に、閉じていた目を開ける。
 するとそこには、先ほどのボディーガードではない人物がいた。わたしを支えているのも彼で、どこか中性的な顔立ちのその人は、もう一度「大丈夫か?」と声を掛けてくる。
「だ、大丈夫、です」
「そっか。じゃあ改めて。俺、加州清光。川の下の子、河原の子ってね。扱いにくいが性能はピカイチ、いつでも使いこなせて可愛がってくれて、あと着飾ってくれる人大募集してるよ」
「……は?」
 ぽかんと、思わず口を開いてしまう。そんなわたしの顔を見て、加州清光と名乗る彼はにっと笑った。
「よろしく、主」
 そう言って、彼はわたしの手を握ってきた。わたしは彼の腕に抱かれながら握手をするなんとも言えない状況であるものの、目の前の出来事への理解が追いつかなくてただただ茫然とするしかできずにいた。

 審神者――物の想いや心を目覚めさせては戦う力を与えるもの。

 つと、車内で説明された言葉が脳裏を過る。
 冗談だと思っていた。むしろ嘘だと思いたかった。わたしはただの普通の女子高生で、何の取り得もない平凡な日常を送っていたのにこんなアニメでも漫画でも使い古されたようなことになるなんて、思うはずもなかったのだから。
 しかし、
「主?」
 目の前で、ちょっとだけ困ったような顔をする彼。
 先ほどまで刀だったはずの彼、加州清光をまじまじと見やる。まだ握ったままの手は同じ人間で、まるで目の前で起きているこれらが夢なんじゃないかと思ってしまう。
「審神者様」
 ふいに、すっかり忘れていたボディーガードの声が割って入った。その声が現実であることをまざまざと物語っていて、わたしは覚悟を決めたように息を飲んだ。

 特別になりたくなんてなかった。
 ただただ平々凡々な日常を過ごしたかった。
 しかし、わたしはこれから「彼ら」の特別にならなければいけなかった。


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カッとなってやらかしたよ!とうらぶ面白すぎんよ!

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職業:
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