忍者ブログ

イチジ九

すべからくどうしようもない日常のあれこれ。 ネタバレ盛り沢山ですので注意!

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

コメント

現在、新しいコメントを受け付けない設定になっています。

┌(┌ ^o^)┐ホモォ

友人とうっかり黒子のバスケで盛り上がってしまったので息抜きに黄黒小話。
HOMOとか久しぶりすぎて書き方忘れたレベル。そして毎回一発書きクオリティー。
R18要素はないけれどとりあえず┌(┌ ^o^)┐ホモォなので畳みます。
苦手な方は逃げてー!








「くーろこっちー!」
「黄瀬くん」
 見つけた後姿を追いかけて声を掛ければ、相手は驚いた顔でこちらへ振り返った。
 日曜日の新宿は人通りが多い。にも拘わらず、黄瀬はその人混みの中から彼の姿を見つけていた。特に目立つわけでも、むしろ逆に目立たな過ぎて存在をスルーされがちな彼だけれど、黄瀬にとっては誰よりも夢中で追いかけてしまう後姿だった。
 黄瀬はどうにか人波を避けて、彼――黒子テツヤの元に辿りついた。相手は立ち止まり、こちらが追いつくのを待っていてくれたらしい。黄瀬は周囲に視線を向けてから、他に連れ立っている人影がいないことを確認のために訊いてみる。
「一人ッスか?」
「はい。黄瀬くんこそ、お一人ですか?」
「俺はさっきモデルの仕事が終わったとこッス」
「ああ、なるほど。お疲れ様です」
 そう言って、黒子は笑う。その顔に少しだけときめいてしまいながら、黄瀬は内心でガッツポーズを作る。今の黒子は一人で、自分もさきほどの仕事のあとはフリーだ。そんなときに黒子と遭遇したのはもはや、神様からのご褒美に違いない! とだいぶ大げさに物事を捉えながら、黄瀬は黒子へとこのあとの予定を提案してみることにした。
「そうそう、お疲れなんスよ。だから黒子っち、俺とそこのマジバでお茶でもしないッスか?」
「いいですね。僕もちょうど休憩しようかと思ってたところです」
 ハレルヤ!
 天使が舞い降りてラッパが高らかに鳴り響いた。黄瀬の頭の中だけで。
「やった! 黒子っちゲットッス!」
「……その言い方はちょっと複雑です」
「まーまー気にしない気にしない」
 憮然とした表情の黒子の気が変わらぬ内にと、黄瀬は相手の背中を押してマジバへと促した。
 お昼の時間からズレていたのもあってか、店内ではすんなりと席に着くことができた。二人分の席に向かい合って座り、黒子はいつものバニラシェイク、黄瀬はアイスカフェオレを注文していた。
「黒子っちは今日、何してたんスか?」
「欲しい本の新刊が出てたので、それを買いに」
「マンガ、じゃないスよね?」
「はい、小説です」
「小説かー」
「苦手ですか?」
「青峰っちほどじゃないッスけど」
「火神くんと同じレベルですね」
 言って、黒子はふっと目を細めた。
 その顔に、あ、と思わず零れてしまいそうになる呟きを、喉の奥で押しとどめる。そうして、ああ、と内心でため息を吐く。今も昔も、彼の隣にはいつも、いつだって光があった。自身を影だと称する黒子は、まるでそれを証明するように強い光と共にいる。最初は、その関係が羨ましいと思った。純粋に、そんな風に互いが互いの良い部分を引き出せる、そんなパートナーと在ることが羨ましかったのに、それがいつしか羨望から嫉妬に変わってしまっていた。
 けれど、青峰という絶対的な存在より強く輝くことはできないのもまた、理解していて。行き場のないこの気持ちは、ただ己の中で消化不良になって沈澱していく。その沈澱していったものはさらに重く暗く黄瀬の内側で存在を主張していった。
 けれど、ある日ふと思った。
 そもそも、どうして自分はこんなにも黒子に執着しているのだろうと。
 パートナーという存在が欲しいのならば、何もそれは、黒子だけではないのだ。とはいえ、それぞれ我が強いキセキメンバーの中で意思疎通を図ろうとすれば、一番良いのは黒子だ。けど、でも、この黒子への執着はもっと別の。それとは違う感情が干渉している。まるでそれは、黒子へ恋心を抱いているような。
 そこまで考えて、はたりと思考を止めた。

 黒子っちに、恋?
 誰が? ――俺が?

 思い当たった一番の理由に困惑したのは、当然と言えば当然だ。
 だって相手は男で、何を隠そう自分自身も彼と同じ同性の男だ。今までのまだまだ短い人生の中でも、普通に女の子が好きだった。否、それはもちろん今でもそうだ。それとともに、やっぱり他の男に対して、黒子と同じような恋愛感情などこれっぽっちも思い浮かばない。
 つまりこれは異性同性の問題ではなく、「黒子だから」という結論に至ってしまう。
(……その方が、タチが悪いってーの)
 黄瀬は内心で呻いて、カフェオレから伸びたストローを前歯で噛んだ。
 何度も考えて否定してでもまた悩んでを繰り返し、すでに開き直ってしまった己の気持ち。
 普通に考えて、同性から恋愛感情を持たれているなんて、あまり快く思ってもらえるはずもない。
 だから、言わない。伝えない。
 でも。
 ただ好きでいるくらいは許されるだろうと、黄瀬は自分自身へ言い聞かせるように付けたした。
 だって彼の隣にはいつも自分以外の誰かがいるのだから、せめてそっと好きでいるくらいは許してほしい。
 その考え方がまさに恋する乙女のようだなんて思い至ったところで、額に鋭い痛みが走った。
「いった!」
「何ぼーっとしてるんですか」
「ていうか黒子っち、いきなり何するんスか!」
「お茶に誘った君が一人でぼんやりするからです」
「そ! ……れは、スミマセンッス」
 そう言って、黄瀬はしおしおと小さくなった。黒子は黄瀬の額を弾いた右手の中指を下げようとして、けれど、再びその手を伸ばしてきた。第二発のデコピンを覚悟して目を瞑れば、予想外にその手は黄瀬の頭の上に落ち着いた。そうしてぽんぽんと二回弾むように触れると、今度こそ黒子の手は下ろされた。
「僕で良ければ、話くらいは聞きますよ?」
「え?」
「黄瀬くん。何か、悩み事がありそうな顔してます」
 ずばり切り込んできた黒子の言葉に、うっと思わず口ごもってしまう。
 悩んではいるけれど、その原因に向かって話せる内容ではなくて、黄瀬は頬を引きつらせた。あははと乾いた笑いで誤魔化して見せるものの、じっと黒子が見上げてくるからたまらない。そんな目で見られたら、うっかり気持ちを告白してしまいそうになると、黄瀬は視線を逸らして咳払いをする。
 ちらりと横目で伺ってみれば、彼は未だにこちらを見つめていた。
「……あの、黒子っち」
「はい」
「あんまりそんな風に熱い視線で見つめられると、照れるッス」
「じゃあ白状したらどうですか」
「わあん! 黒子っちが誤魔化されてくれない!」
「そんなあからさまに『悩んでます』って顔に書いておいて、何を言ってるんですか」
「……はい、ごめんなさい」
 しょぼんと頭と肩を落として言えば、何だか無性に泣きたくなってきた。なんだって俺は好きな相手にやり込められているんだろう。ああでも相手はこちらの気持ちを知る由もないのだと。完全な片思いの現状に改めて落ち込み掛けた視界の端で、黒子の暗い表情が見えた。思わずぱっと顔を上げると、黒子はすぐにいつものポーカーフェイスに戻っていた。
「黒子っち、も、何か悩み事あったりするッスか?」
「黄瀬くんが話してくれたら話します」
「うわ、どんな取引交換ッスか!」
「別に無理にとは言ってないじゃないですか」
「それは、まあ…」
 そう言葉を濁して、視線を逸らす。
 と。
「心配しちゃ、だめですか?」
「え?」
「黄瀬くんの心配をしては、だめなんですか?」
「だ、だめなんて、ことは…全然…ないッス…」
「そうですか」
「…黒子っちって、男前ッスよね」
「モデルの君が言っても説得力がありません」
「いや見た目じゃなくて、中身の話なんスけど」
 ぼそりと付けたして、黄瀬はがっくりと頭を垂れた。
 なんだろう、このまま黒子と会話をしたら負けるのがすでに目に見えてしまっている。
 黄瀬は数秒黙り込んだあと、やっぱりぼそりと呟いた。
「……いつか話せるようになったら、聞いてほしいッス」
「はい」
 そう男らしく応える黒子に、黄瀬は参ったと内心で完全降伏した。

拍手[1回]

PR

コメント

現在、新しいコメントを受け付けない設定になっています。

カレンダー

04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31

P3P

ザックス身体測定

プロフィール

HN:
なづきえむ
性別:
女性
職業:
萌のジプシー
趣味:
駄文錬成

バーコード

ブログ内検索