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イチジ九

すべからくどうしようもない日常のあれこれ。 ネタバレ盛り沢山ですので注意!

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ハロウィンっぽい瑛主

ツイッターで「デイジーが佐伯に『Trick or treat』と言うと、冷たい眼で「如何なる悪戯も受けて立つぞ」とでも言うように構えます。」という診断が出て面白すぎたので小ネタです。

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 カレンダーにある10月31日という日付の下に「Hallowe'en」の文字が記載されている。昨今の日本でも随分浸透してきた海外のイベントだ。珊瑚礁でもその恩恵にあやかるべく、9月の半ば辺りからはハロウィン限定スイーツを提供している。その中でも特にかぼちゃのタルトは評判が良く、これは後々の定番商品として扱うかを目下検討中だ。というか、佐伯と共に働くもう一人の従業員が大層気に入ってしまい、「これ、いつでも食べられたらうれしいなあ!」などときらっきらの邪気のない目を向けてきているのが一番の要因ではあるが。
 むしろ店の定番商品としてではなく、彼女のために作ってやらないでもないとふいに考えてしまったところでぶんぶんと頭を振る。だめだろ俺。あいつを甘やかすな俺。と、そんな風に己に言い聞かせるように内心で独りごちるものの、店の冷蔵庫にはしっかり彼女用のカボチャのタルトが用意されているのであった。佐伯はちらっと冷蔵庫を見やり、
(いやでも今日はハロウィンだし! あのバカはきっとこれに乗じて「お菓子をくれなきゃいたずらしちゃうぞ!」とかなんとか言ってくるに違いなからその準備だ! そう! 俺は正しい!)
 などとやっぱり誰にともなくそんなことを胸中で繰り返していれば、かちゃり、と従業員用の入り口のドアが開く音が聞こえた。
 振り返った先には案の定思考の議題となっている人物――海野あかりがそこにいた。彼女は視界に佐伯の姿を見つけると、ぱっと顔を笑顔に変えた。にこにこーっと笑って佐伯のそばへ駆け寄ってくる。その仕草で「あ、来るな」と思った。何がってそれは、
「瑛くん! Trick or treat!」
 両手を胸の前に揃え、佐伯が想像した通りの言葉を彼女は口にした。そうして瑛はその手と彼女の顔を交互に見やり、そして、
「・・・トリックを選んだらどうするんだ?」
「えっ?」
 佐伯の返した言葉は完全に意表を突いたのか、あかりは笑顔のままで固まってしまった。その笑顔を両手を差し出したまま数秒固まって、もう一度「え?」と繰り返す。一方で佐伯は不敵な笑みを浮かべて「やれるもんならやってみろ」とばかりにあかりを見返す。
「え、と。・・・えーっと」
 唸るようにあかりはその場で固まり、ひとまず差し出していた手をぎゅっと握る。視線を右、左とそれぞれ一回ずつ逸らしたあと、もう一度佐伯を見た。そうして足元へと視線を落とすと、
「・・・・・・・だ」
「だ?」
「ダイナミックアタック!」
「はっ?」
 どーん! と割と勢いよくあかり自身が佐伯へと飛び込んできた。完全に虚を突かれた佐伯はそのままあかりを受け止め、その勢いで背後の壁にぶつかった挙句、ごん! と鈍い音と共に頭をぶつける始末だ。
「あ、ごめ! 瑛くんごめん! ちょっと勢いつきすぎた!」
「・・・・・・おまえな」
「おおおおお怒らないでお父さんごめんなさいお父さん反省していますお父さん!」
「ああそうだよなおまえはそういうやつだよな。そこを想定できなかったお父さんが悪いよな」
「なんか色々と投げやりな気がするよお父さん」
「そんなこと言うとトリートの方、やらないぞ」
「え! やだうそお父さん大好き!」
 佐伯が冷蔵庫を指させば、あかりはあっさりと身を翻して冷蔵庫へと駆け寄っていった。そんな彼女の後ろ姿を遠い目で見つめながら、
「・・・・・・そういうやつだよ」
 と佐伯は少しでも彼女に期待した自分自身を恨むように、ぐったりと呻いた。

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久しぶりの勢いの小ネタですが久しぶり過ぎて文章の書き方を忘れたなど・・・

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