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イチジ九

すべからくどうしようもない日常のあれこれ。 ネタバレ盛り沢山ですので注意!

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佐伯小話

 学校でもバイト先でも、いつでも佐伯瑛という人物は女性の視線を集めていた。
 校内では「はね学のプリンス」などと呼ばれ、珊瑚礁では彼目当ての女性客も決して少なくない。
 そんな見目麗しい彼なのに、あかりはどうしてもそれを素直に認められなかった。否、認めたくない、のが正しい。だって、自分に対しては隙あらばチョップの洗礼が待ち構えているし、カピバラななんて呼ばれるし、割と意地の悪い性格を惜しげもなく見せつけてくるのだから。
(もう少し、こう)
 他の女子と同じように、優しげな目で微笑むように笑ったり、穏やかな声で話かけたり――と。そこまで考えて数秒の間を置いてから、ないないないない、とあかりは頭を振った。佐伯があかりにそんな風に話掛けてくるときは、大抵ろくなことがないに決まっている。それに、「理想の王子様」を彼が演じているのを知っているから、余計だ。
「うーん」
 そこまで考えついて、あかりは唸ってしまう。結局佐伯に対しての認識を改めるどころか、現在の状況を再認識するだけに終わってしまった。別に困るわけではないのだが、クラスの女子の「佐伯くんってかっこいいよね!」の意見に曖昧に笑うことしか出来ないくらいだ。
「何唸ってんだ」
 つと、いつの間にか支度を整えた佐伯が現れた。あかりは慌てて居住まいを正して、彼に向き直る。
「ちょっと考え事」
「ふうん?」
「そ、それより、今日はいつもよりはやくバイトに来いってどうしたの? 何かあった?」
「ああ、そうだ」
 さすがに今の内容を本人に向かって言うことなどできるはずがなく、あかりの話題転換にも佐伯は特に気にした風もなく応じた。厨房の冷蔵庫の扉を開くと、そこから真っ白いケーキを取りだした。おそらくレアチーズケーキだろうとあたりをつけて、けれどあかりは、今度は本当に不思議そうな顔をする。
「これ、ちょっと試作品的に作ったケーキ。試しに試食して」
「え、いいの?」
「試作品だからな、あんまり期待するなよ」
 そう佐伯は言うものの、その表情はちょっと自信ありげだ。
「わーいありがとうお父さん、素敵! かっこいい!」
「ゲンキンなやつだな」
 呆れたような言い方で、けれどふっと目を細めて笑う仕草に思わずどきっとなってしまった。あれ、と内心で戸惑って、けれど最初の「どき」は少しだけちいさく、けれどいつもより早いテンポで鼓動を打つ。
(うわ)
 どきどきどきどき、と鳴る心臓につられるように、顔がじんわりと熱くなる。誤魔化すように頬を引っ張ってみると、佐伯から不審な目を向けられてしまった。
「何してんだ」
「いや、瑛くんが優しいから夢かと思って」
「……ケーキ、いらないんだな」
「食べます!」
「はいはい」
 結局、佐伯の作ったケーキによって、さきほどのどきどきはうやむやになってしまったのだった。

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かっこいい佐伯!を目指したつもりなんです。
佐伯ってかっこいいはずなのにどうしてもかっこいいところが思いつかない!はね学の王子なのに!
と彼について小一時間ほど考えたんですがどうしてもだめでした。誰か私にかっこいい佐伯を教えてください。というか、そもそもうちのデイジーが佐伯をかっこいいとか思ってないよだめじゃん

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