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イチジ九

すべからくどうしようもない日常のあれこれ。 ネタバレ盛り沢山ですので注意!

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桜井兄弟とセイちゃんで肉まん小話

肉まん食べたいなーって話を友人としていたらぼんやりこんなやり取りが脳裏をよぎったのでざかざか殴り書き。オチなんてないよ!



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 車での登下校は今に始まったことではない。設楽はいつのもように後部座席に座り、スピードに合わせて流れてゆく景色を何とはなく横目で眺めていた。とはいえ、劇的な変化があるはずもなく、そこはいつも通りのはばたき市の風景が広がっていた。だが、ふいに車が赤信号で停車した際に何気なく視線を前方へと移動させたことで、あることに気が付いた。
 信号の手前にあるのは、何の変哲もないコンビニだ。問題はそのコンビニではなく、そのコンビニの前にたむろするはばたき学生にあった。男子二名の女子一名、合計三名のその後ろ姿に、設楽は嫌というほど見覚えがあった。特に男子二人の内の片割れが金髪な時点でどこの誰なのかというのは確定したようなものだ。そう考え付いたところへ、まるで狙ったかのように女子生徒がこちらに振り向いてきた。ばっちり、目が合ってしまう。
「あ! 設楽先輩!」
 ほんの数メートルしかない距離だ。相手の声は設楽の元まで届いて、ついでにいえば男子二人――設楽にとっては悪魔のような年下の幼馴染もこちらを見据えて――笑った。
 前方の信号は未だ赤。しかも間の悪いことにここの信号は切り替わりが遅い。つまり先ほど赤になったばかりなので、まだまだ青にはならないということだ。
「セイちゃん、ちょっと降りてこいよ」
 はばたき学園で噂の桜井兄弟の弟の方が、人好きのする笑顔で設楽を呼ぶ。いつもの設楽ならば適当にあしらって無視を決め込むことにするのだが、何分今回は相手が悪い。それほどまでに彼らに刷り込まれたトラウマが、ちくちくと設楽の心の古傷を刺激するのである。
 なので設楽は早々に諦めて運転手に指示を出し、コンビニの駐車場へと車を移動させる。運転手がドアを開ける前に琉夏がドアを開けたかと思えば、琥一が引きずり出すように設楽の腕を掴んだ。
「おいこらやめろ離せ」
「ちょうどいいところにきたぜ、セイちゃんよ」
「はあ? なんだ藪から棒に」
「俺たちちょっと小腹を満たそうとしてたんだけど、セイちゃんも一緒にどう?」
「もう、二人とも! 先輩に乱暴なことしない!」
 右に琥一、左に琉夏と腕を取られ、捕縛された宇宙人よろしくコンビニの前まで強制的に連れてこられたところに、ここでの唯一の良心であろう少女の一括が飛んできた。その言葉に左右にいる兄弟が一瞬怯んだ様子を見せるも、それは文字通り一瞬であった。先に復活した弟が、少女――美奈子に向かって口を開く。
「でも美奈子、4人になったからこれで食べれる範囲は増えたよ?」
「そ、それだとわたしが食いしん坊みたいじゃない」
「あ? 何いってんだ今更」
「コウちゃん!」
 何気なくいった琥一の言葉に、美奈子は強い口調で窘める。ついでにぷいっと顔を背けてしまうと、そんな彼女を横目に琉夏が「コウ、怒らせんなよ」とからかい成分を多分に含ませた弟のつっこみが入った。
「…で、結局何がしたいんだ、おまえらは」
「皆で肉まん食って帰ろうってことになったんだけど、結構新製品が出てさ。どれ食うか困ってたんだ」
「はあ? そんなのどうでもいいだろ」
「よくない。全然よくない。セイちゃんはわかってないな、丸々一個買って外れだったら嫌だろ」
「妥当なのを買えば済む話だ」
「それだとつまんない。新商品にも当たりはあるはずだし」
「くだらない…」
「よしルカ、一番地雷っぽいの買ってこいや。聖司に食わせる」
「ラジャー!」
「勝手に決めるな! 美奈子、琉夏のバカを止めろ!」
「……止められるなら、こんなことになってません」

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