書きかけ消化キャンペーン。笑
書いてる時は米英!のつもりでしたが、結果的に英米な気もしなくもないというパルプンテ。
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「あ」
と、声が聞こえたのと、
パキン。
と軽い音が聞こえたのは同時だった。
それから「あー!」と非難めいたアメリカの声が続く。――否、非難めいた、ではなく本当に非難されていた。それというのも、イギリスの足下にはアメリカが使っているメガネが残骸となっているのだから。慌てて足を退けてみても先ほどの音と、何より踏みつけた感触でまず無事ではないということはイギリスも気がついていた。それでも一応地面に屈んで、落ちたメガネを拾い上げる。
「……ええと」
両手で持ってまじまじと見れば見るほど、イギリスは嫌な汗が背中を流れるのがわかる。フレームは完全にひしゃげてしまい、右のレンズは外れて半分に割れてしまっているし、左のレンズは割れはしていないもののヒビが入っていた。
どうしよう。
頭の中に浮かぶ言葉はその単語のみ。どうしようどうしようどうしよう! 何度も呪文のように繰り返してみたところで、その単語は魔法のようにメガネを元通りにしてくれるはずはなかった。ただ壊れてしまった現実をイギリスに突きつけるだけだ。
「その…悪い」
気まずい空気が部屋を満たす中、イギリスは何とかそれだけを絞り出すように呟いた。が、視線はこわくて俯いたまま。どうしよう。また、呟く。
すると、ひょい、と掌から壊れたメガネが本来の持ち主の手に渡った。
「あーあ。俺、メガネないと不便なんだけど」
「…う」
「仕事とかもあるんだけどな」
「…ううう」
だらだらだらだら。
全身から嫌な汗が流れて、どんどん自分が小さくなっていくかのような錯覚を覚える。いっそ本当に小さくなって、そのまま消えてしまいたいくらい気まずい。どうしよう。また呟いて、イギリスは何かを振り切るように顔を上げた。更にその勢いに乗せてもう一度謝罪の言葉を口にしようとしたが、それが発せられることはなかた。正確には「すまない」の「す」までは言ったのだが、その後はぷつりと息が止まったかのように途絶えて、沈黙が落ちる。ぱちぱち、と自分の瞼が二回瞬きをするのを自覚して、イギリスは無意識に息を吐き出した。ついでに、すまない、というはずだった言葉を別の音に変えて。
「はああああああああああ??」
「なんだいイギリス、そんなマヌケな顔して」
「いや、おま、だってそれ、え、えええええええ?」
思わずアメリカの手にある壊れた眼鏡と、その顔に新しく装着されている眼鏡を何往復もして見比べてしまう。そんなイギリスの様子に耐えられないかのように、アメリカは盛大に笑い出した。
「まるで子供向けのおもちゃみたいなんだぞ!」
「いやだっておま、ていうか、それなんだよ!」
「スペアーに決まってるだろう」
「スペアー…」
「そう」
スペアー。あっけらかんと。それでいてあっさりと返された答えに、イギリスは無意味にその言葉を反復する。その間にもアメリカはイギリスから背を向け、「Bye!」と短く宣言して去っていく。すぐに後ろから慌てたイギリスの制止の声に従うはずもなく走っていけば、ドイツに廊下を走るなと怒られた。けれども今のアメリカにはその声は届かない。堪えきれない笑みが顔に浮かび、アメリカは壊れた眼鏡を見て先ほどのイギリスを思い出す。
(本当はもう少しからかってやろうと思ったけど)
(あんな顔されたら、できないじゃないか!)
そういう言葉とは裏腹に、珍しいものが見られたとアメリカの笑みは深まっていく。
もっともっとオレのことで、イギリスの頭の中がいっぱいになればいいのに!
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