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イチジ九

すべからくどうしようもない日常のあれこれ。 ネタバレ盛り沢山ですので注意!

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西ロマ(APH)




「もう子供じゃない」

 いつも通りのおやすみのキスを頬にしようと思った矢先、スペインから見ればまだまだ子供なロマーノがそんなことを言ってきた。
 思わず動きを止めてまじまじと相手を見やると、ロマーノはその視線に居心地の悪さを感じたように一度視線を逸らし、けれど意を決したようにしっかりとスペインを見る。というか、睨む。

「…ええと、ロマーノ? なんか変なもん食うたか?」
「おまえと同じもん食ってんだからそんなわけねーだろ!」
「せやよな…じゃあ眠いんやな、早うおやすみ」
「おまえ、人の話聞いてねーだろ!」

 ぽんぽん、とロマーノの肩を叩いて眠るよう促せば、がしっと襟首を掴まれてしまう。そのまま押し倒す勢いでロマーノが体重を掛けてくるものだから、突然のことに構えていなかったスペインはあっさりと背中からベッドに沈んだ。その際にベッドの縁へ強かに頭をぶつけたけれど、痛みを訴えるより先にロマーノがスペインの腹の上へと馬乗りになってきたため、うっと呻くような声を上げた。しかしそんなスペインにもお構いなしに彼は不機嫌な表情とオーラを発したまま、ずい、と彼に顔を近づけてきた。と、そこで改めてロマーノの頬がうっすらと赤くなっているのに気がついて。「ロマーノ?」と呼びかければ、ぴく、と細い肩が揺れる。そして、

「…だから! オレはもう子供じゃねーんだから、ほっぺたにおやすみのキスとかじゃなくてだな…その!」
「うん?」
「だあああ! おまえは本当に鈍感!!」

 そう叫びながら、ロマーノは倒れる勢いを利用してスペインの唇に自分のそれを重ねた。が、勢いをつけすぎたあまりに、ガツ! と思い切りお互いの歯と歯が当たってしまい、重なった唇の間から、それぞれにくぐもった声が漏れた。けれど、ロマーノがしっかりとスペインの襟首を掴んで離さなかったため、その態勢は継続される。
 じんじんとぶつかった歯から伝わる鈍い痛みが少し治まってきたところで、スペインはそろりと目を開いては、相手の様子を伺い見る。
 今、自分がロマーノとキスをしているのだという自覚はあったが、どちらかというと子供同士がおふざけで唇を合わせているような認識だった。オーストリアから渡された時よりも確実に成長しているとはいっても、やはり今の彼はまだまだ子供なのだ。
 スペインはすぐ目の前にあるロマーノの、きつく閉じられた目と眉間にしっかりと寄った皺に思わず噴出してしまいそうになるも、自分の襟首を掴む手と、身体の上に乗っている身体から微かに震えている振動に気がつけば、一瞬呼吸が止まった。
 ロマーノがもっとちいさな頃から絶えずケンカを繰り返してはきたけれど、最近ではもはやスキンシップと愛情表現の一部なのだと受け止めていた。だからこそ、嫌がらせにしてもこんなことをするような相手ではないのはよくわかっているつもりだ。
 ならば、なぜ?
 疑問符ばかりがぐるぐると回り、さっぱり答えが出ないでいるところで、ふいに唇が離された。至近距離にあるロマーノの顔は先ほどより赤く染まり、ついでに機嫌の悪さも増したのは気のせいではないだろう。

「…おまえ、まだわからないって顔してんな」
「え、あー…ははは」
「本当、鈍感」

 呟いて、身体を起こせば改めてスペインを見下ろすロマーノ。そして、

「…なんでこんな奴が好きなんだ…」
「え」

 独り言のようなその言葉は、けれどしっかりとスペインの耳に届いていた。スペインは考えるより先に反射的に身体の方が先に動いていた。すぐさま身を起こしてロマーノの腕を掴んでは、訊く。

「今、何て言うた?」
「何も言ってない」
「嘘や」
「嘘じゃない!」
「ロマーノ」
「うるさい」

 ぷい、と顔を背け、スペインの腕を振り放そうとするのを許さず、スペインはもう一度「ロマーノ」と相手の名前を呼ぶ。しかしまたもや「うるさい!」と言いう彼には構わず、今度はスペインからロマーノを引き寄せた。ぽす、と未だ腕の中に収まるサイズの身体を抱きしめて、相手の耳許へと唇を寄せる。そうして、「もう一回」と囁くと、ううう、と唸る声が返ってきた。この子供相手の持久戦には慣れたことだし、辛抱強く待つかと構えたところで予想外な反応が返ってきた。

「……すき、だ」

 しがみつくように背中に腕が回されると同時、先ほどよりしっかりとした言葉で告げられた。

「ホンマ?」
「…こんな嘘、吐くかよ」
「じゃあホンマなんやね」
「しつこい」
「だって嬉しいんやもん」
「……そーかよ」

 いって、顔を隠すように額を肩口に埋めるロマーノは近年の中で一番かわいいんじゃないかと、スペインは確信に近いものを感じていた。
 だが、

「あー、こういうのがあれか。実の子供にようやく懐かれた父親の気分ってやつやんなあ」
「…は?」
「あ、せや、ロマーノ。唇へのちゅーは好きな人としかしたらあかんで?」
「……おまえ…」
「うん?」

 にこにこにこにこ。
 オーストリアからロマーノを預かった日から今日までの出来事を走馬灯のように思い返し、屈託のない笑顔を浮かべるスペインに対して大人しくなったはずの子供から再び不機嫌なオーラが点る。
 しかしそれには気がつかずに昔話を語るスペインに目を細め、今度は近年では一番機嫌の悪い顔で彼を見据えるロマーノ。口を開く。

「やっぱりわかってねえじゃねえか! このバカーッ!!」
「いたあ!? ロマーノ痛い! 耳かじったらあかあああああああん!!!!」

 真夜中に悲痛なスペインの叫び声が響くも、助けにくる人の気配はなかった。




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あのフランス兄ちゃんにあそこまでされて気付かないんだから、スペインの鈍感さは並じゃないと思うんだ…
ちょうがんばれロマーノ。

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