ようやくデイジーの了承を得られました。でも俺たちの戦いはこれからだぜ!
本番までの道のりが遠い…そしてびっくりするほど文章が不調すぎる
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「ほら」
二人分のコーヒーを淹れたマグカップをテーブルの上に置く。すると、未だに仏頂面のままあかりがマグカップに手を伸ばして口をつけた。
「機嫌直せって、なあ」
「…お父さんのバカ」
「悪かった。だから仲直りしよう」
言って瑛が顔を寄せれば、あかりは未だ拗ねたような表情を見せるものの、口元にくっつけたままのマグカップをテーブルの上に置いた。拗ねている余韻でちょっとだけ突き出された唇へと軽く触れてやれば、もう、と不平を零す唇へもう一度口づける。今度は先ほどよく長く重ね合わせ、あかりの柔らかい唇の感触を堪能するように彼女の下唇を甘く食んでやる。そうして啄むようなキスを繰り返し、ちゅっちゅと上がるリップ音に比例するように、お互いの呼吸が乱れていく。
と、
「てる、くん」
唇をほとんどくっつけた状態のまま、あかりが口を開いた。言う。
「今日ね」
「…ん?」
「瑛くんと最近会えてないなって思ったら、どうしても会いたくなっちゃって。……だから、急に来てごめんね」
同じ大学に通っているとはいっても、学科が違えば中々会うことは難しい。高校生のときは同じクラスでバイト先も同じだった。いまにして思えばなんて恵まれた環境だったのだろうと思う。
けれど、あの時は彼氏彼女の関係ではなかった。あくまでもオトモダチ。だから今と昔、どちらが良いかと問われれば断然今に決まっていた。会えない時間よりも触れ合える時間は確実に増えたのだから。
そして、あかりのこんな言葉を聞けるのも恋人という関係になったからに他ならない。
「…あかり」
「て、んっ!」
瑛はあかりの口咥内へと舌を差し込むと、先ほどとは打って変わって激しく口づけた。急激な変化についていけないあかりが苦しげな声を零すけれど、瑛は顔の角度を変えてなおもキスを深くするように彼女の舌と自分の舌を絡めていく。舌裏の根っこの部分から歯列をなぞるように舌を動かし、甘くあかりの舌を噛んだ。
「……なあ」
「な、に?」
お互いの呼吸もままならない状態で、佐伯は囁くように言う。
「今日さ、泊まっていけよ」
「え?」
「明日、予定ないなら…だけど」
「…特に予定、は、ないけど」
「じゃあ、」
「で、でも」
「でも?」
「着替えとか、もってきてないし」
「俺の貸してやるよ」
「あと、化粧品とか」
「コンビニがあるだろ」
「あ、そっか。……そっか」
二度、あかりは自身に確認を取るように頷く。
そこで、どちらともなく言葉が止まるり、沈黙が部屋に落ちた。壁に掛けられた時計の秒針の音だけがやけに耳につく。
だが、きっちり一秒ごとに針を進めいていく音を何とはなしに認識しつつも、それはどこか他人事でもあった。腕の中にあるあかりの体温と感触に全神経が集中されている。そうして、ほんの少し彼女が身じろいだ。思わず腕に力を込めてしまうと、えっと、と控えめなあかりの声が発せられた。
「……その、それじゃあ、泊まらせてもらおうかな」
「…うん」
彼女の言葉に頷いた瑛は、頬を寄せて耳に口づける。と、慌てたようにあかりが彼の胸を押した。
「あの、じゃあお母さんに電話するから!」
「……ああ、そうだな」
言って、瑛はようやくあかりを解放した。一瞬目が合って、どちらともなく視線を逸らす。あかりはそのままバッグへと手を伸ばし、その中に入れっぱなしであった携帯電話を取り出した。瑛に背中を向けるようにして電話を始める彼女の背中を眺めながら、じわじわと自分の中で何とも言えない感情が湧き上がってくる。
あかりが、泊まる。
自分の、この部屋に。
それが何を意味するのか、彼女もわからないはずがない。だからこそ、泊まっていけといった瑛の言葉に戸惑いを見せたのだ。
すると、少し離れて彼女しているあかりの携帯電話からテンション高い友人の声が漏れ聞こえてきた。おそらく相手ははるひだろう。戸惑いと申し訳ないのとが半々な気持ちの込められたごめんねを何度も繰り返すあかりに、「気にせんでええよ!」と気楽にいう友人の声と共に電話は切られた。ついで、そのまま彼女は実家へと電話掛けた。もしもし、という声の中に今度は緊張が加わるも、どうにか平静を保とうとしているのがよくわかる。
「…うん、うん。明日には帰るから、うん、大丈夫。はい、わかった、じゃあ」
どうやらお泊りの許可は下りたらしい。耳から携帯電話が離し、それが畳まれたのを見計らったタイミングでもって、瑛は後ろからあかりの背に手を伸ばして抱きしめた。
「瑛、く」
驚いて振り向くあかりの唇を再びキスで塞いでやる。先ほどのように舌を絡めるような激しいキスではなく、唇をくっつけるだけのものだ。けれど瑛は抱きしめている手の片方を、彼女の左胸の上に置く。途端、彼女の鼓動が一段落速くなったのがダイレクトに伝わる。
「あ、の!」
ぐいっと両手で突っ張るように瑛の胸を押し、わずかにできた唇の隙間からあかりは声を上げる。なに、と短く問えば、あかりの顔はますます赤くなっていく。上下左右に数回視線を泳がせたあと、意を決したように瑛を見て、訊いてきた。
「お風呂とか! 入るもんじゃないのかな!」
「いいよ、後で」
「え、でも」
「じゃあ一緒に入る?」
「それは無理!」
「じゃあいいだろ」
「瑛くんっ」
「あかり」
なおもまだ言い募ろうとする彼女の名前を、瑛は呼ぶ。するとびくっと身体が震えて、身体を縮こませようとする。そんな相手の表情を覗き込むようにしてみれば、今にも泣きそうな目と目が合った。
「…やっぱりいやか?」
「……いやとかじゃなくて、恥ずかしい、の」
最後の方は殆ど聞こえないほどの音量で、彼女は言う。言った後にさらに恥ずかしくなったのか、ぎゅっと目を瞑ってしまった。
「おまえ、かわいすぎだろ」
「えっ?」
思わず、というようにあかりは彼の言葉に反応して目を開いた。けれど至近距離で瑛と視線がぶつかったため、再び身体を強張らせる。だが、今度は目を閉じなかった。あかりの左胸の上には依然として瑛の右手が置かれている。どっどっどっ、と彼女の鼓動が手のひらから伝わってくる。
「俺さ、おまえが好きだよ。だから、したい。でも嫌がることはしたくないから、本当に嫌ならこれ以上なにもしない」
「……わたしだって、瑛くんのこと好きだもん」
ほんの少しだけ唇を突出しながら、あかり。瑛は触れ合わせるようなキスをしてから確認するように「いいのか?」と聞いた。うん、と同意の返事は小さかったけれど、確かに彼女は頷いて見せた。瑛は今度はしっかりと唇を重ねて、左胸に置いた手のひらを動かし始める。やわやわとゆっくりと胸を揉んでいく。
[4回]
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