ラビと琥一の話を書きつつ話が進まないぜうおーっとなったら初ちゅうの話で悶々としてきたのでざくっと一発書き。
もはや初えっちも書くべきかしらとか妄想しつつ需要があるのかと小一時間。
それよりも何よりも文章書けないぜ病をどうにかするべき。
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(琥一とラビ)
「帰るぞ」
教室の入り口から声を掛けられて、わたしは伏せていた顔を上げた。
まだまばらに残っているクラスメイトたちも声の方角へと顔を向けて、男女それぞれの反応が聞こえた。
「ごめん、琥一。もう少し待って」
「あん?」
「今日日直なの。もう少しで日誌が書き終わるから」
そうわたしが説明している途中で、琥一は無遠慮に教室の中に入ってきた。この時点で残っていた生徒は全員退散してしまったので、あっという間に教室に二人きりになる。けれど、わたしは構わずに書き途中の日誌に向き直れば、琥一は前の席の椅子を引いてそこに腰を下ろした。
「ごめんね?」
「別に」
「ん」
口調こそぶっきらぼうではあるけれど、その裏側にある優しさに顔が緩みそうになってしまう。困ったな。最近のわたしはちょっと贅沢し過ぎじゃなかろうかと考えている途中で、日誌を書く手が止まっていることに気がついた。いけないいけない。早く仕上げて帰ろうと、わたしはシャーペンを握り直す。
「おい」
「ん?」
ふいに呼びかけられて、わたしは日誌から琥一へと視線を持ち上げた。すると思ったより近い位置に琥一の顔があって、どきりと心臓が跳ねた。握っていたシャーペンを取り落としそうになるのを堪えて、なに、と問う前に琥一が更に距離を詰める。近づく顔に驚いて咄嗟に顔を避けるように引けば、琥一はわかりやすく眉間にシワを寄せた。舌打ちをしそうになったらしい口元を引き締めて、低い声でわたしの名前を呼ぶ。
「なに、かな?」
「目ェ閉じろ」
「…なんでって、一応確認してもいい?」
「わかってることを訊くんじゃねえよ」
そう琥一は言って、シャーペンを持つわたしの手に自分の手を重ねた。最近になってようやく繋ぐことには慣れてきたはずなのに、こうして改めて触れられるとやっぱりまだ恥ずかしい。そうして心臓の鼓動は早くなるばかりで、それこそ本当にいつなったらこのどきどきはなくなるのだろうと思ってしまう。だって琥一と付き合うことになってもうすぐ一ヶ月が経とうというのに、わたしは未だに彼の一挙一動に振り回されてばかりだ。
まさに今現在もそれは進行中で、心臓が耳にあるんじゃないかというほどにうるさい。
琥一の指先がわたしの頬に触れて、親指の腹が目じりを撫でる。そうして再び琥一が顔を近づけてくるのがわかって、今度は逃げない代わりに、けれどどうしていいのかわからずに固まってしまう。鼻先がくっつきそうなほど近づくと、それでもやっぱり目を閉じれずに相手を見返す。
と、てっきり唇に重ねられると思ったそれが、的を外したように口の端へと押し当てられた。え、と小さく声を漏らせば、琥一は今度こそわたしの唇へとキスをする。少しだけざらつく表面と、しかし想像よりうんと柔らかい感触を受け止めるの精一杯なはずなのに、頭の中は余計なことが取りとめもなく浮かんでは消えていく。
すると何ともタイミング良く(悪く?)、机の上に置いておいた携帯電話が着信を告げた。途端、重ねられた唇が離れていき、思わずさみしいと思ってしまえば改めて顔が熱くなっていく。
「…携帯」
「う、うん…」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……嫌だったか?」
「……」
「……」
「……いやじゃ、ない…デス」
震える携帯電話を手の中で握ったままそういえば、琥一の大きな手がわたしの頭を撫でた。
そうか、と低い声が聞こえてきたのと同時、手の中の携帯電話の振動が止まった。
[14回]
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