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イチジ九

すべからくどうしようもない日常のあれこれ。 ネタバレ盛り沢山ですので注意!

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荒ハム小話

唐突に湧き上がる荒ハムブームでござるの巻(`・ω・´)


-------------------

「アギダイン!」
 鋭く声を発したのと同時、目の前に炎が舞い上がって敵――シャドウが消滅した。用心深く注意を伺うも、追撃のシャドウの存在は感じられない。
「…よし」
 律子は手にしていた召還機をホルスターに仕舞い、薙刀を構え直して探索を開始した。


 いつものように訪れた影時間に、S.E.E.Sのメンバーはタルタロスへとやってきていた。一体どれほどの階層があるのかは不明だが、各フロアにはそれぞれエリアの区切りがあるのに気が付いた。なので新しいエリアに入ったときはある程度シャドウのレベルを把握したあとは、メンバーを散開させてフロアの探索を行っている。まとまって戦った方がもちろん戦闘は早く済むが、自分たちに課せられた時間には制限がある。だから個人撃退ができると判断がついたときは、一刻も早くタルタロスを攻略することを最優先事項としている。そもそも自分たちが所属する「S.E.E.S」はそのための組織なのだから。
 律子は十字路に道が分かれている場所にきて、一度足を止める。とんとん、とローファーのつま先で地面を叩き、どの道を選ぼうか思案したところで、

 ちゃり…

 微かに、鎖を引きずるような音がした。それと同時に、ぞわりと言いしれぬ悪寒が背筋を這い上がる。
『死神型シャドウ出現! 皆、気をつけて!』
 律子が悪寒を感じたすぐ後に、風花の悲鳴のような声が響いた。やはり、と律子の予想が確信に変わり、周囲を伺う。すると、十字路の右側で影が動いた。すぐさまそちらへと視線を向けて構えれば、死神がこちらへと向かっているところだった。
「うわ」
 短く囁いて、律子はすぐに走り出す。がむしゃらに通路を通り過ぎてくと、ふいに角から現れたものへと正面衝突しそうになり、殆ど反射でホルスターから召還機を抜き取り、こめかみに押し当てる。と、
「荒垣先輩!」
「…中原か」
 相手も同じように、召還機を構えていた。S.E.E.Sのメンバーの一人でもある荒垣も律子を認めて、召還機を降ろす。
「奴は」
「多分、わたしの後ろを追いかけてきてるかも…って、きた!」
 ちらりと後方を振り返ったところで、真っ直ぐにこちらへ向かってきている死神の姿が見えた。
「階段はこっちだ!」
「はい!」
 言う荒垣の言葉に従い、律子は彼の後ろを追いかける。背後からのプレッシャーからか、背筋に嫌な汗が流れる。
「早く来い!」
 普段の態度からは想像もできないほど素早い足取りの荒垣に何とか追いつき、律子は階段を駆け上る。後ろは振り返らない。正確には振り返っている余裕はないが。
 階段の半ばで待っていてくれた荒垣に追いつくと、二人一緒に残りの階段を駆け上った。
 と、
「――え?」
 ぐにゃり、と視界が歪んだ。そうして、足下にあったはずの地面が消える感覚。まずい、と咄嗟に律子は思った。タルタロスを探索してるときに、これも稀にある現象だ。皆と一緒に上層階を登っている途中で、何の力が作用しているのか、次のフロアではメンバーと離ればなれになってしまう。
 死神と遭遇するのも、これが初めてではない。その度にフロアを変えることによってやつを振り切ることができていたが、そのときはメンバーの全員は一緒だった。
 けれど、もしも。
 もしも今回はフロアを変えても死神が消えていなかったら?
 その先で一人でいたらと想像がついて、律子は咄嗟に荒垣へと手を伸ばした。すると、どうやら荒垣も律子と同じことを考えたらしい。お互いが相手へと手を伸ばし、荒垣が律子の手首を掴んだ。力任せに引っ張られて、荒垣の腕の中に抱き竦められる。律子も荒垣の背中へと腕を回し、離れないように腕に力を込めた。
「……」
「……」
「……」
「……」
 どれくらいそうしていただろうか。
 つと、自分の足が地面に触れているのに気が付いた。そうして周囲の気配を察すれば、死神シャドウの気配はないように思う。
「……あの、荒垣先輩」
 律子が控えめに声を掛けてみると、そこで荒垣も我に返ったらしい。いつもよりも渋い表情を浮かべて、律子を抱きしめていた手を離した。
(あ…)
 離れていく荒垣の体温が、さみしいと思った。ら、咄嗟に彼の服の裾を掴んで引っ張ってしまっていた。
「……なんだ」
「えっと、ありがとうございました」
「俺は何もしてねえだろ」
「死神シャドウから助けてくれたじゃないですか」
「あんなのは助けた内に入らねえ」
「それでも嬉しかったから、ありがとうございます」
「……っち」
 荒垣は小さく舌打ちをして、帽子をさらに目深に被るように引き寄せる。
「行くぞ」
「はい」
 促す荒垣に、律子は薙刀を持ち直す。軽い足取りで荒垣の後ろを追いかければ、少し離れた場所から順平の声が二人を呼んだ。



「お二人さーん! 無事だったか!」
「律子ー! よかった心配したー!」
「ゆかりー! 無事で良かったー!!」
「え、律子さん、オレっちのこと無視ですか?」
「あ、順平も無事でよかった」
「おまけみたいにいうな!」
「ごめんごめん、わざとだから」
「泣くぞ!」
「うむ、許可する」
「りっちゃん!」
「……おまえら、いい加減にしとけ」

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