卒業式で太郎のフラグを折って改めて後日太郎とのフラグ発生、親友佐伯ぎりぎり!な話を勢いだけで書いていこうの会。
でも最終的には佐伯落ちです\(^o^)/
問題は私がいかに冷静に太郎を書けるかに掛かってる\(^o^)/
佐伯より私の方がぎりぎりしてるわ・・・
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学園内の中庭であかりは一人、立ち尽くしていた。
今日は卒業式というのもあって、笑い声や泣き声、別れの言葉などがそこここで交わされている。
さっきまで、あかりもその一員のはずだった。
二年生のあかりは見送る立場で、だからこそ三年生の――密かに恋心を抱いて真嶋太郎の元へと向かった。今までは学校内で顔を合わせることが出来たが、卒業してしまってはそれはできなくなる。彼の連絡先を聞くにはこれが最後のチャンスだ、と、あかりは彼の姿を探して回った。そうして、数人の女生徒に囲まれた彼の姿を見つけて、声を掛けて――今に至る。
(……どうして)
内心で、独りごちる。
そうして思い出すのは、つい数分前の彼との会話だ。
「まさか、本気で僕のことを好きになったとか?」
冷たい笑みと一緒に吐き出された言葉に、あかりは何も言えなくなった。そうこうしてる間にも彼はまた違う女生徒に呼ばれて、何事もなかったかのようにあかりの横を通り過ぎ様、ぽん、と彼女の肩に触れた。
「なんだか誤解させて悪かったね」
待って、と。
追いすがることは出来なかった。
声を出すことはおろか、振り返ることも出来ない。
まるで、その場に縫い付けられたように動けなくて、周囲を取り巻くものが一枚壁を隔たれた向こう側で起きてるように見えて。
どうして、とただその言葉ばかりを繰り返していれば、ふいに誰かがあかりの腕に触れてきた。その感触でようやく我に返ったあかりは、弾かれたように反応して、顔を上げた。太郎が戻ってきてくれたのかという期待の先にいたのは彼ではなく、佐伯だった。
「っ、…て、るくん」
太郎君、と喉まで出かかった名前を飲み込み、彼を呼ぶ。すると、何故か佐伯の目が細められた。眉間に皺を寄せたりなんてして、王子がそんな顔をしちゃだめだよと、いつもならすぐに言ってるはずのからかいの言葉が出てこない。
「…ちょっと、こっち」
低い声で言って、佐伯はあかりの腕を掴んだまま校舎裏へと歩かせられた。
「おまえさ」
校舎裏の中でも常に日陰となっていて、殆ど人気のない場所にやってきた。今日も今日とてそこに先客がいるはずでもなく、佐伯とあかりの二人きりになる。
「何があった」
「別に、なにも」
「嘘つけ。そんな泣きそうな顔してよく言うよ」
「泣きそうなんて」
ないよ、とあかりが続けようとしたところで、頬に熱が流れた。驚いて両手で頬に触れれば、そこは濡れていた。
「あれ、なんで? …や、違うのこれはさ」
「ばか」
短く言って、佐伯のチョップがあかりの額に落ちる。けれどそれは全然痛くなかった。むしろ痛くないからこそ、それがスイッチになってしまった。ぼろぼろぼろ、と勢いをつけた涙が溢れて、あかりは顔を覆った。口からはみっともない泣き声も溢れるけれど、気にする余裕などない。わあわあと子供のように泣きじゃくると、ぐっと肩を抱かれる。
「俺の肩は高いからな」
そんな憎まれ口が叩くも、それ以上は何も言わなかった。気休めや慰めの言葉すら一言もなかったけれど、あかりが泣き止むまでずっと呆れることなく付き合ってくれた。
[3回]
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