いつもいつもいつもいつも。
フランスが作る料理に対して、イギリスは毎回不満に思うことがある。
あいつが作る料理はうまい。それは認める。というか、認めざるを得ない。しかし、それが納得がいかない。面白くない。いつだったか、フランスに言われた通りのレシピで作った料理があったのだが、それだってどうしてかおいしくないとアメリカに言われたことがあった。いきなりフランスに食べさせる勇気がなかったので、嫌がるアメリカに無理矢理食べさせたのだが、はっきりと物を言う彼なだけに言葉のナイフがぐっさりと胸に突き刺さってしまい、しっかりと落ち込んだことは記憶に新しい。
それからは余計なことをしようとはせず、フランスの作るものを大人しく食べることに徹した。稀に茶化したように彼が「今日は坊ちゃんが作ってみる?」だなんて言ってくるのを睨みで黙らせ、肩を竦めるフランスから顔を逸らしてため息を吐いた。
(なんだかなー)
食後のお茶を口に運びながら、イギリスはぼやく。食後のお茶だけは彼の担当だった。
「お気に召さないことでも?」
「あ?」
「今日、ずっと何か言いたそうな顔してる」
「んな…っ!」
ずばり確信を言い当てられ、がちゃん! と乱暴にカップをソーサーに置いてしまったことに再び慌てる。今日のティーカップはお気に入りのものだ。イギリスはカップとソーサーに傷がないことを確かめてから、フランスの視線に気がついてわざとらしい咳払いをする。んん、と喉を鳴らし、泳いでしまう視線をフランスの手元に落ち着かせる。男のくせにきれいな指先をみて、いいな、とこっそり羨ましがった。自分もあんな手をしていたら、もう少し器用になれたのだろうか。
「イギリス?」
「え? あ、…別に! なんでもねーよ!」
「何でもなくないでしょーが。ほーら恥ずかしがらずにお兄さんに話してごらん」
「うるせえな! 何でもねえってば!」
「イギリス」
つと。
唐突にふざけた調子のフランスの声音が変わる。どき、とその変化に反応して、心臓が大きく跳ねた。やばい。その声はやばいっていうか、卑怯だ。イギリスは内心に走る動揺に比例して、逸る鼓動を落ち着かせようとぐ、と手を握る。ついでにフランスを睨みつけてやるが、逆にそれがまずかった。テーブルに頬杖をついて、緩く眼を細めたフランスがこちらを見つめていた。その眼に映る感情にまたもや心臓が、頭が揺れる。
「…卑怯だ」
「うん?」
「だから! 何でも器用なおまえが卑怯なんだよ!」
八つ当たりのように(否、実際八つ当たりだが)いって、イギリスは今のオレすげえかっこ悪い! と頭を抱えた。
「俺からすれば、十分おまえにも羨ましいところがあるけどね」
「はァ!? どこが!」
「例えば、この紅茶とか」
「紅茶…?」
「そ。食後におまえの紅茶が飲めるのとそうでないのとだと、気分が違うんだぜ」
「…そう、なのか?」
「そうそう」
「……なんか、うまく誤魔化そうとしてる気が」
「誤魔化してなんかいないって」
フランスは残りの紅茶を飲み干すと、ゆっくりとした動作でカップを置いた。そうして、立ち上がってイギリスの隣にまで歩みより、言う。
「後は羨ましいとは違うけど、おまえがいてくれるのが一番の理由かな」
「…ばかじゃねえの」
「お褒めに預かりまして」
「褒めてねえ」
フランスの言葉につっけんどんに言い返し、イギリスは口元が緩むのを防ぐためにカップを唇に押し当てた。かつ、と縁が歯に当たる音が聞こえ、やっぱり不公平だと独りごちる。
けれど頭を撫でるフランスの手を、振り払うことはできなかった、
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みかさとの電話で、ご飯はフランスが作るけど食後のお茶はイギリスが淹れるんだぜ!でもえてたはずなのにおかしなことになりました。笑
でも仏英がすきです
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