忍者ブログ

イチジ九

すべからくどうしようもない日常のあれこれ。 ネタバレ盛り沢山ですので注意!

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

コメント

現在、新しいコメントを受け付けない設定になっています。

年上バンビ小話

ついったでちょろっと話題に上がって書くつもりはなかったんですが琉夏琥一設楽の幼馴染が妄想したら楽しすぎたのでそこだけ。

年上には年上の楽しさがあると思うんだ。

------------------------

 ざわざわといつにも増して学校全体が騒がしいのは、今日が入学式だからである。先月に三年生を送り出してからの約一ヶ月分の寂しさを埋めるように、真新しい声がそこここで聞こえる。高校二年生の美奈子は新入生ではないが、新しいクラスメイトが揃う教室を見渡す。見慣れた顔もあれば、当然知らない顔もある。一先ず目の前に座る背中にぽん、と触れた。次いで、「セイちゃん」と声を掛ければ不機嫌な表情で相手が振り返り、容赦なくこちらを睨みつける。

「セイちゃんって呼ぶな」
「いいじゃない。幼馴染なんだし」
「良くない。俺がいやだっていってるんだから、やめろ」
「うーん」
「悩むな」

 間髪入れずにつっこまれてしまうも、それでも曖昧に笑って誤魔化した。セイちゃん――設楽聖司は彼女の幼馴染で、二年生になって同じクラスになった。半分以上が見知らぬ人ばかりのクラスでは、旧知の人間がいるのは心強い。例えとそれが、若干わがままなところがある幼馴染だとしても。

「ね、ルカちゃんとコウちゃんも入学式にきてるでしょ?」
「さあな。というか、あいつら揃ってここに受かったことが未だに信じられない」
「もう、そういうこといわないの。二人とも頑張ってたんだから」
「はいはい」

 こちらの言葉を半分聞き流すようにして、設楽は正面を向こうとしたその身体が固まった。視線は美奈子から少しずれて、教室の出入り口の方を向いている。つられてそちらへ視線を辿れば、同じタイミングで教室の中がざわついた。

「あ、いた」
「おうセイちゃん、美奈子」

 いって、教室の出入り口には見慣れた顔が二つ並んでいた。平均身長より高めの二人の男子は真新しい制服姿のはずなのに、すでに着崩して着用していた。ご丁寧に上履きの踵も踏んで履いているのだが、問題はそれよりももっと別のところにあった。一つ年下な二人の幼馴染の内の片方の人物の髪の色が、見事に金色に染まっているのだ。

「コウちゃん、に、ルカちゃん?」

 今さっき噂していた二人の登場に色々な意味で面食らいながらも、美奈子は席から立ち上げる。二人が立つ出入り口へと駆け寄ると、教室のざわめきは一際大きくなったように思う。

「二人ともっていうか、ルカちゃんその頭で入学式でたの?」
「うん。かっこいい?」
「かっこいいとかそういう問題じゃ…」
「あれ、だめ?」
「だから言ったじゃねえか」
「コウちゃんもピアスだめだよ! ルカちゃんもだけど!」
「メンドクセーなあ」

 琥一は呻くようにいって、美奈子の指摘に顔を顰めて視線を逸らす。
 その隣では琉夏が飄々とした顔のまま、小首を傾げて美奈子へと顔を近づけた。

「細かいことはいいからさ、今日は美奈子ちゃんたちも帰るんだろ? 一緒に帰ろうぜ」
「それはいいけど」
「あと、セイちゃんも一緒な」
「俺は一人で帰る!」

 少し離れたところから、ぴしゃりと否定の言葉が飛んできた。振り返って声の主の様子を伺えば、本日最高潮らしい不機嫌さを発していた。ああああ、こうなると後々大変なのにと内心でため息を吐くが、目の前の二人はにやにやと楽しそうに笑っているのをみて、こっちはこっちでこうなると止まらないのも重々わかりすぎてしまうのがかなしいかな、幼馴染ゆえだ。

「だめだってセイちゃん、俺ら高校生デビューしたんだからちょっと付き合ってよ」
「そうそう、じゃねえと後悔すんぞ」
「こら、二人とも!」

 あまりにも物騒なセリフをあっさりという二人を一先ず一喝して、美奈子は肩を竦めるしかなかった。

拍手[6回]

PR

コメント

お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字

カレンダー

04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31

P3P

ザックス身体測定

プロフィール

HN:
なづきえむ
性別:
女性
職業:
萌のジプシー
趣味:
駄文錬成

バーコード

ブログ内検索