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イチジ九

すべからくどうしようもない日常のあれこれ。 ネタバレ盛り沢山ですので注意!

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デートイベント小ネタ【天童】

「あ」
「お」
 まさに「ばったり」という表現がぴったり当てはまるように、二人は真正面からお互いの姿を確認した。
 今日ははばたき学園と羽ヶ崎学園の合同課外授業という名目で、はばたき市最大のアトラクションである遊園地へときていた。課外授業先が遊園地、あまつ私服での参加という時点で、殆どの生徒が全力で遊ぶ気でいるのは明白だった。当然美奈子も皆と同じように私服で来てはいたが、遊園地よりも他に気になることがあった。それは羽ヶ崎学園の生徒の中にいるであろう「彼」のことだ。相手の性格から考えて、サボる可能性はとてつもなく高い。しかもはば学だけではなく、はね学の生徒もいるのだ。そこに一般の来場者のことを考えたら、彼を見つけるのははっきりいって無理だろうと思っていた。けれど頭の片隅で「ひょっとしたら」と思う気持ちが引っ掛かっていて、同じような背格好の相手を見つけるとついつい目で追い掛けてしまっていた。
 そうしてもう何度目かわからない落胆した気持ちになっていたところへ、思い描いていた相手――天童壬が現れた。
「参加してたんだ」
「まあな」
 相変わらずの派手な私服に金髪という出で立ちな天童に、妙な安心感を覚える。それと同時に、彼と会えたことに「うれしい」と素直に思う自分がいて。けれど緩む頬を自覚して、慌てて顔を引き締めた。落ち着け落ち着けと内心で言い聞かせると、ふいに上着のポケットに入れておいた携帯電話が着信を知らせた。慌てて取り出してみれば、ディスプレイには奈津美の名前が表示されていた。美奈子は慌てて天童から背を向けると、通話ボタンを押して携帯電話を耳に当てる。
「も、もしもし?」
『ちょっと、あんたどこまでジュース買いに行ってんの? 先に乗り物乗っちゃうよ?』
「あ、あー、と。ちょっと、…はね学の友達と偶然会ってさ。だから奈津美たちは先に行ってていいよ。あとで合流するから」
『そう? じゃああとでね』
「うん、あとで」
 そう言って、美奈子は携帯電話の通話終了ボタンを押した。ら、ずし、と右肩口に重心が掛かったと思えば、天童は耳元で囁くように言う。
「はね学の友達って、オレ?」
「そう、だけど……て、近い!」
「うわ、ツレねーの」
 ぐいっと天童の身体を押せば、予想よりあっさりと彼は引いてみせた。背の高い天童を睨みつけるように見やるも、相手はそんなことに動じることなく――むしろ、楽しそうに笑っている。
「そんじゃ、行くか」
「…どこに?」
「だから、デート」
「え、ちょ、え?」
「だって、はね学の友達とデートするってことになったんだろ?」
「ちが…いや、違わないけど、いやでもそうじゃなくて!」
「ほら、行こうぜ」
「ま、まってまって! 天童くんだって友達がいるでしょ!」
「あー、なんかアイツらはナンパに燃えてるからいいんだよ」
「そ、そうなの?」
「そーなの」
 にっこりと笑顔で言う天童に、うっと美奈子は言葉に詰まる。天童のこういう顔はずるいと、美奈子は常々思わされてきた。いつもこのパターンから、なんだかんだで彼のペースに押し切られてしまうのだ。今回もそんな雰囲気がすでにしているものの、奈津美たちを放っておくこともできない。どうしようかと考えを巡らせていると、まるで見透かしたように天童は肩を竦めて見せた。
「乗り物一回で手を打つからさ、いいだろ?」
「……う、うん」
 戸惑ったように美奈子が頷けば、天童は当然のように手を繋いできた。驚いて顔を上げると、天童は気にした風でもなく前を見ている。そんな平然とした態度に、まるで自分だけがどきどきしてるみたいで美奈子はほんの少しだけ釈然としたない気持ちになった。こうして天童と会えたことも、乗り物一つ分だけの間でも一緒に居られることが嬉しいと思っているのは自分だけのようで。寂しいような悔しいような気持ちで、美奈子は足元に視線を落とす。
「なあ、何乗る?」
「えっと……」

→「観覧車、かな」
→「お化け屋敷とか?」
→「メリーゴーランドがいいな!」

さあどれ!笑


→「観覧車、かな」
「観覧車でいいのか?」
「うん。ゆっくりできるし」
「二人っきりになれるし?」
「そ、そうは言ってない!」
「はいはい」
「もう!」

→「お化け屋敷、とか?」
「へえ、意外」
「え? だめ?」
「だめじゃねえけど。でも、女子ってこういうの苦手なんじゃねえの?」
「得意ではないけど、こわいもの見たさっていうか…ほら、天童くんいるし!」
「割と下心あるんだな」
「違うよ!」
「よし、今日はいくらでも抱きついていいぜ?」
「絶対しない!」

→「メリーゴーランドがいいな」
「無理」
「やだ」
「考えても見ろって。俺とおまえが二人でカボチャの馬車に乗るとかねえだろ?」
「あるある」
「ねえって」
「じゃあ馬の方でもいいよ」
「それもねえって」
「えー」
「じゃあ俺、外で手を振る係りな」
「それじゃ意味ないよ!」

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全然いちゃつかなくて困ったので終了。

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