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イチジ九

すべからくどうしようもない日常のあれこれ。 ネタバレ盛り沢山ですので注意!

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A.P.H.(日本とアメリカ)


 ――勘違いをしていた。


 何百年に及ぶ鎖国に終幕を降ろすきっかけとなったのは、唐突にやってきた黒船の来訪だ。数百年と天との岩戸のように固く閉ざされていた我が国だったけれど、一度開いてしまえばあとは簡単。瞬く間に世界は開け、国は変革を始め、たくさんの知識を得ようと躍起になった。着物から洋服へ変わるように日用品から食文化と幅広く欧米の文化が世の中に溢れ、まるで自分が強くなったかのような、そんな勘違いをしていた。驕りが自滅へと導くことなんて、今までの歴史からわかっていたはずなのに、そこまで考えが追いつかないほどのぼせていたのだろう。一気に開けた世界は魅力的すぎて、冷静な判断を鈍らせていた。
 このまま世界のすべてが自分のものになればいいと思うのは、国として生まれた所以。強くあろうとするのは当然のことだとしても、なぜ。こうして武器を持ち、戦うことしか術はなかったのだろうと考えるのは、自身の敗戦が確信に変わったところでようやく気がつかされたから。
 もっと他に道があったはずではないか、と。遅すぎる後悔に飲み込まれそうになる。

「…日本」

 目の前に立つ、若くして大国と成ったアメリカがまっすぐにこちらを見据える。
 いつもはひまわりのような笑顔で笑いかけてくれるのに、今はそんな表情が伺えるはずもない。
 刺すほどの冷たい視線を受け、日本は知らずに奥歯を噛み締めた。

「チェックメイトだ」

 静に。けれど冷淡な声が響く。
 嗚呼、わかっている。わかっていた。どれほどの覚悟や様々なものを投げ出しても、とうの昔にこの国の敗戦は決まっていたのだと。
 それでも日本はアメリカから地面へと目線を落とす。真っ白だったはずの軍服はすっかり薄汚れてしまい、それがまた惨めな気持ちに拍車を掛ける。

「アメリカさん」
「日本。これ以上の戦いは無理だと、賢い君ならわかっているだろう」
「でも、私は」
「日本」

 びくり。肩が跳ねて身を強張らせれば、じゃり、とアメリカが地面をする音がやけに耳につく。ふっと自分に影が落とされ、俯いた視線先に相手のつま先が見えた。それでもなお、日本が顔を上げずにいれば、アメリカが短く息を吐いたのがわかる。そして、

「オレに、奥の手を出させないでくれ」

 そのどこまでも底冷えするような声音に、日本はただ、頷くしかなかった。 



--------------


いや米日ではなくあくまで日本&米のつもりなんだけど、な!
最後の最後でなんであんなどS仕様になったんだアメリカ…

しかしAPHネタはデリケート過ぎて難しい…!!

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