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イチジ九

すべからくどうしようもない日常のあれこれ。 ネタバレ盛り沢山ですので注意!

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ハロウィン小話

最近嬉しいことがたて続いて逆にこわい。
なにこれ私しぬの状態の頭で考えたハロウィン小話。ぐだぐだにもほどがあるんだぜ…!

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 はっと気がついたら、そこはどこかの教会のようだった。わたしは跪いた格好で、手を組んでいることからするとお祈りをしていたようだ。

(お祈り?)

 そこでようやく自分の格好に気がついた。いつもの私服姿でも制服姿でもないわたしは、つまるところ「シスター」といわれている人たちの服装になっていた。あれ? と頭の中に疑問符を浮かべつつも、一先ず立ち上がって辺りを伺ってみる。やっぱり周囲は間違いなく教会の建物そのものだけれど、わたしはクリスチャンはない。それならどうしてこんなところに、しかもシスターの格好でいるのだろうかと首を傾げた。と、まるでそのタイミングを見計らったように、後ろから声を掛けられた。

「やあ、もう仕度は済んだかい?」
「ぐずぐずするな」
「紺野先輩に、設楽先輩?」

 お揃いのように神父の格好をした二人の先輩が現れて、わたしは思わず面食らってしまう。ぱちぱちと目を瞬かせて二人を見れば、設楽先輩がいらだたしげに前髪を掻きあげた。ああもう、とついでに声に出して唸ると、わたしの方へ歩み寄っくる。

「おまえが一緒についてくるって言ったんだからな。責任持てよ」
「…すいません、何のお話でしたっけ?」
「はあ? あんなにも駄々をこねておいて忘れたっていうのか?」
「……ごめんなさい」
「まあまあ設楽、落ち着いて」
「落ち着けるわけがないだろう! やっぱりこいつは置いていくべきなんだ」
「でも、彼らの説得には彼女は必要だと思うし」
「彼ら?」

 紺野先輩の言葉に何故か嫌な予感を覚えて、わたしは聞き返す。すると困って苦笑を浮かべる紺野先輩と、更に不機嫌な設楽先輩が同時にこちらを見た。
 あの、と言葉を続けようとしたその時、がしゃあん! と教会の窓ガラスが割れた。突然のことに驚いて目を瞑れば、ふわりと身体が浮くような奇妙な感覚に襲われる。けれどその反面で意識は落とされていくような気がして、心臓がひやりと縮みこんだ。

 こわい!

 咄嗟に何かに捕まるように手を伸ばせば、予想外にその手は掴み返された。
え、と再び驚いてぱちりと目を覚ますと、そこには見慣れたクラスメートと後輩の顔が並んでこちらを見下ろしていた。が、なぜか二人の頭には揃ってぴょこんとかわいらしいふさふさの耳が生えていたけれど。

「…嵐くんに、ニーナ?」
「おう」
「大丈夫?」
「あれ、わたし、先輩たちと一緒にいたはずなんだけど…」
「何いってんの。あんたさっきまで寝てて魘されてたんだぜ?」
「え?」

 そう言われて、わたしは再び目を丸くする。きょろり、と目を回して、そこで気がつく違和感。それが頭と腰の部分からきているのは明白で、わたしはそろりと手を伸ばしてみる。まずは頭からだ。

「わたしにも耳が生えてる…!?」
「? それがどうかしたんか?」
「あんたがかわいい黒猫ちゃんだなんて、今さらだっつーの」
「猫!?」

 ニーナの言葉をオウム返しのように言って、わたしはもう一つの違和感の原因である背後へと振り返る。そこには黒くて長い尻尾がわたしの気持ちを代弁するように、ぴんと立っていた。

「わたしが猫って……ええと、それじゃあ二人は犬なの?」
「俺ら?」
「違うって、オレたちは」

 と、なぜかそこで二人は言葉を切って、視線を合わせる。そうしてにやりと目を細めてわらうと、改めてわたしを見た。続ける。

「嵐さんとオレは」
「オオカミ男だ」
「え」

 二人の手が、まるでスローモンションのようにゆっくりとこちらに伸びてくる。それを他人事のように見つめていれば、再び視界が暗くなった。嵐くんのニーナの姿が掻き消えて、先輩たちのときと同じにように身体が浮いた感覚に襲われる。次いで意識が深く深く落とされていけば、それはいつの間にか本当の落下になっていた。ジェットコースターよりも早く、容赦なく落ちていく身体に驚いて手足をばたつかせる。当然そんなことをしたところで、落ちる身体が止まってくれるはずもない。
 と。

「大丈夫?」
「たく、本当に危なっかしいな。おまえはよ」

 三度聞き慣れた声をきいて、わたしはそろりと目を開けた。二度あることは三度あるという諺が脳裏を過ぎり、それなりの覚悟を決めて開けた視界の先には、やっぱり幼馴染の兄弟がこちらを見つめていた。ついでに言うならば服装も真っ黒なタキシードのようなもので、ご丁寧に服と同じ真っ黒なマントをはためかせている。少しだけ尖った耳に、ちらりと覗く八重歯からしてすでに予想は確信に変わっていた。

「…二人はヴァンパイア?」
「うん、そうだけど?」

 きょとんとした顔で頷く琉夏を見て、わたしはやっぱりとちいさなため息を吐く。けれどそこではっと我に返り、彼に横抱きにされたままな状態に気がついた。

「る、琉夏くん、降ろして!」
「俺はこのままでもいいけど?」
「よ く あ り ま せ ん !」
「ええー」
「降ろしてやれや」

 すぱん! とコウくんのつっこみの言葉と一緒に手が琉夏くんの頭を張り飛ばした。ヴァンパイアになってもいつもと一緒だなあと妙に感心しながら地面に足をついたわたしは、自分の頭に大きすぎる帽子を被っていることに気がついた。ついでにコウくんから箒を渡された経緯から推測するに、今回のポジションは魔女だろうか。

「早く一人前の魔女になれよ」
「…やっぱり」
「あ?」
「ううん、こっちの話」

 不審な目でわたしを見るコウくんに慌てて手を振り、話題を変えようと試みる。
「えと…そう! わたしここにくるまでに色々あったんだけど、二人は何か知らない?」
「色々って?」
「設楽先輩と紺野先輩は神父さんで、嵐くんとニーナはオオカミ男になっちゃうしで」
「……ちょっと待て」
「え?」
「ルカ」
「ああ、囲まれてるな」

 コウくんが話を遮った途端、二人は真剣な表情で周囲を見渡した。ぐい、と琉夏くんに引き寄せられて、思わず彼を見上げる。琉夏くんは安心させるように笑い返してくれたけれど、それがすぐにまた厳しい顔になるものだから、不安は更に募ってしまう。

「そこにいるのはわかってんだ! 出てきやがれ!」

 声を張り上げて、コウくんが言う。
 数秒の沈黙のあと、姿を現せたのは最初の神父姿の先輩たちと、オオカミ男な嵐くんとニーナだ。
 四人はまさに四面楚歌の状態のように円陣を組み、わたしたちを取り囲んだ。

「この状況なら自分たちが不利だっていうのは、わかるね?」
「大人しく降伏した方が身のためだ」
「そうそう、うちのマネージャーには絶対に怪我なんかさせたくねーし」
「…それでも抵抗する場合は、力ずくでいくしかないけどな」

 それぞれがそれぞれの言葉を発するも、琉夏くんもコウくんもどこ吹く風と言わんばかりに笑っている。そして、

「コウ!」
「おうよ!」
「きゃあ!」

 バサア! と二人がマントをはためかせて、視界が再び黒で覆われる。ついでに再び足が地面から離れ、琉夏くんとコウくんに身体を支えられるような格好でわたしたち三人は空に浮いていた。
 あっという間に遠くなる地上からは、小さくなっていく四人がそれぞれに何か言ってるのはわかったが、はっきりと内容まではわからない。ただ、怒っているのだけはわかったけれど。

「脱出成功」
「だな」
「でもこれって、何も解決しないんじゃあ…」
「じゃあ、連中が諦めるまで逃げればいい」
「悪かねえな」

 そうコウくんが頷けば、二人は揃って笑い始めた。そんな彼らに対して「もう!」と言って一喝したところで、はっとわたしは目を覚ました。
 けれどあまりの目まぐるしい展開の夢にわたしは自分が本当に起きたことに気がつけず、数秒机に突っ伏した体勢のまま固まってしまった。が、ひょい、と見慣れた金髪頭の幼馴染が顔を覗かせてきて、それでようやくグラウンドから上がる運動部の掛け声が耳に入ってきた。

「おはよ」
「…おはよう?」
「おまえ、すごく良く寝てたけど、寝不足?」
「……ではないと思うけど」
「ふうん」

 適当な相槌を返して、琉夏くんは立ち上がる。帰ろう、と促されて、わたしは慌てて立ち上がった。まだどこかふわふわとした感覚が抜け切らないまま、何とか鞄を肩に掛けて琉夏くんの後を追いかける。教室の出入り口で待っていてくれた彼は、わたしが到着した途端、あ、と声を上げた。

「なに?」
「今日ってさ、ハロウィンだろ?」
「そういわれれば…」
「うん、だから、trick or treat」
「え」
「お菓子をくれなきゃ、いたずらしちゃうよ?」
「えええっ?」

 ずい、と琉夏くんが顔を近づけてくるので、わたしは思わず後ずさってしまう。そうして、何かないかと制服のポケットと鞄に手を差し込んでみるものの、確かな手ごたえは返ってこない。

「時間切れ」

 琉夏くんはささやくように言ったと思えば、素早く彼の顔が更に近づいてきて、わたしの頬に唇が押し当てられる。しかしそれはあっという間に離れていき、上機嫌で琉夏くんは笑って、言う。

「いたずらしちゃった」
「……もう!」
「逃げるが勝ちだ! Bダッシュ!」
「こら、待ちなさい!」

 身を翻して逃げる琉夏くんを追いかけて、わたしもオレンジ色に染まりつつある廊下を走る。バタバタと足音高く追いかけっこをしながら、いつの間にかわたしも笑っていたのだった。

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