「何が気に入らない」
「気に入らないとかそういう問題じゃありません」
二人はにらみ合うように向かい合って、殆どケンカ腰な雰囲気を漂わせていた。
周囲はそんな東金とかなでのやり取りを遠巻きに見守っており、唯一口を出せるであろう神南管弦楽部副部長の土岐を見やる。が、視線を向けられているにも関わらず、当人は割れ関せずとばかりに紅茶を堪能している。
「俺が好きなら、当然俺の傍にいるべきだろう」
「だからって星奏学園の皆を放っていけるわけないじゃないですか」
「おまえはもっと優れた場所で、自分の音楽を磨きたくないのか」
「その誘いは魅力的ですけど、それだけの理由で神戸には行けません」
「しょうがない、拉致るか」
「嫌いになりますよ?」
「……ッチ」
「千明の負けやろ、諦めや」
ようやく二人の押し問答に一応の区切りが着いたタイミングで、土岐はとうやく口を挟んだ。ティーカップをソーサーに置き、どこか楽しそうな表情で東金とかなでを見比べた。
「さすがの千明も、小日向ちゃんの「嫌い」発言には形無しやな」
「やかましいわ」
思わず地元のイントネーションで返してしまい、しまったと顔を歪めてみても後の祭りである。目の前の幼なじみは先程とは違って、笑いを堪えるように口元を手で抑えていた。が、肩が小刻みに震えている時点で堪え切れていないのは明白だ。そもそも、隠すつもりはないだろうけれど。
「どんだけ余裕ないねん…ッ」
「蓬生!」
「小日向ちゃん気ぃつけや、いつ何時本当にさらわれるかわからんで」
「大丈夫ですよ」
ね? とかなでが東金を見返せば、東金の表情はますますバツの悪いものになっていく。そうしてそっぽを向むいてしまうのものだから、蓬生はついに堪えきれずに笑いだしてしまった。
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とかこういう感じの東金さんがみたいです誰かー!
かなでちゃんに夢中すぎてついつい関西弁になってしまう東金さんが好きです
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