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イチジ九

すべからくどうしようもない日常のあれこれ。 ネタバレ盛り沢山ですので注意!

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年下バンビ小話(琥一)

高校生な琥一と中学生なバンビ。
琥一がバンビを妹と異性の境目で揺れ動く様が大変好物です。
琉夏の場合はその辺の禁忌的な部分楽しんじゃうからね!否、そんな彼が好きですけれども。というか桜井兄弟が大好きなんですけれども。
そろそろ発売して一年が経つというのにどうしてこんなにも彼らが好きすぎて生きるのが辛いのかと小一時間。色々他ジャンルに浮気はしてますがね!ごめん浮気性なんだでも好き!(……)

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 コンコン、と控えめなノックを二回鳴らすものの、中からの応答はなし。美奈子はもう二回ほどノックを鳴らし、ついでに中にいるであろう人物の名前を呼びかける。コウちゃん、と幼いころから変わらない呼び方で呼ぶも、やっぱり返事は返ってこない。
 仕方がないのでドアノブに手を掛けて、そっと引いて開けてみる。と、部屋の中はカーテンが引かれているために薄暗く、美奈子の開いたドアから差し込むような光が唯一の光源だ。その薄暗い部屋を見やれば、ベッドの上に人一人分の山が出来ていた。当然それはこの部屋の主である桜井琥一のものだ。美奈子はそっと足音を忍ばせて室内に入る。後手でドアを締めると、入ってきたよりも慎重に足音を殺し、そろそろとベッドへと近寄った。
 ちょうど琥一はこちら側に顔を向ける体勢で寝ており、美奈子は足音と一緒に息も殺しているので室内には彼の寝息が妙に耳に付いた。そっと彼の枕元にしゃがみ込んで見れば、高校入学以来ばっちりと固めるようになってしまった前髪が乱れている様がなんだか幼く見えた。思わずにやけてしまう顔に気が付いて、美奈子は慌てて表情を引き締めた。美奈子と琥一しかいない部屋で、しかも片方は寝ている状態なのだから第三者の目を気にする必要はないのだが、これは最近の彼女のクセのようなものだった。
 たった三歳差の年齢差で、子供扱いをされないためだ。
 子供の頃は年上の彼を、それこそ本当の兄のように慕ってついて回っていた。コウちゃんコウちゃんとどこにでもついて行こうとする美奈子を、琥一は最終的にはしょうがねえなと苦笑を浮かべて一緒に遊んでくれていた。
 けれど、いつの日か琥一へ抱く感情が恋に変わってからは、美奈子の方が一歩引くようになっていた。
 今日だって、こんな風に彼の部屋を訪れるのは実は久しぶりなのだ。というか、そもそも彼がこの部屋に帰ってくることも久しぶりなのだが。
 高校に進学した彼は、弟と一緒に実家を離れてしまった。琥一は数ヶ月に一度くらいのペースで実家に顔を出してはいるようだが、当然今までとは比べものにならないほど会う機会は格段に減ってしまった。琉夏の方が実家に戻っている回数は少ないはずなのに、何故か街中で遭遇する確立が高いから不思議だ。彼の場合は愛車のSR400の後ろに乗せた美奈子の反応を見るのが楽しいからであろうことは、最近判明したことだけれど。
 なので、今日はたまたま琥一の両親に彼が帰宅してることを知らされて、今に至るのである。
(コウちゃん)
 眠っている琥一に向けて、美奈子は琥一に呼びかける。先程のノックの音でも起きない熟睡ぶりなので、当然念じている呼びかけに起きる気配は見られない。 美奈子はもう少しだけ琥一の方へと近寄ってみる。ほんの数メートル先にある琥一の顔を見て、きゅうと心臓が縮こまる。どきどきどき、とちょっとだけ心拍数が早くなったのを自覚する。
(すき)
 やっぱり心の中だけで呟いてみれば、はたしてその想いが伝わったかのように琥一がわずかに呻いた。その声に心臓が大きく跳ね、美奈子は身体を反らして腰を浮かせた。さっきはかわらしいほどの速さの鼓動が、あっという間に大騒ぎを始める。そのまま琥一の様子を見守っていれば、彼はまたもや身じろいで見せた。起きる? と咄嗟に構えていれば、本当に閉じていた目がうっすらと開き始めた。が、しかしまだまだ瞼は重いらしく、ほんの隙間程度までしか開かない。それでもその目が美奈子の姿を捉えて、起き抜けの擦れた声で持って彼女の名前を呼んだ。
「…美奈子?」
「う、うん」
「…んだ、オマエ」
「ごめん、コウちゃんが帰ってきてるって聞いて、その」
 何か言い訳を口にしようとしてしどろもどろになってると、何故か琥一の手が伸びてきた。不思議に思ってその手を見つめていれば、その手はふいに美奈子の肩を掴む。
「え?」
 と、間の抜けた声を上げたのも束の間。中途半端な体勢になっていたことが災いして、美奈子は琥一のベッドの中へと引きずり込まれた。彼の体温で温まっている布団の中は心地良く、けれどそれよりも何よりも抱き寄せられているために琥一自身の体温を直に感じてしまうことになった。子供のころはともかく、成長してからはこんな風に抱きつくことも抱きつかれることは当然ながらない。琥一の身長が190センチに届くほどになっているのはわかってはいたが、こうやって抱きすくめられると改めて彼が男の人なのだと、まざまざと実感させられてしまう。まるでまったく知らない人のようで、けれど間近には見慣れた琥一の顔があるのだからますます美奈子の頭は混乱してしまう。そして心臓はどきどきなどという効果音ではすまいほどの大荒れっぷりを発揮している。内側からどんどんと思い切り叩かれてるようで、このままでは爆発してしまいそうなほど。というか、爆発する。間違いなく爆発する無理! と美奈子の中のメーターが色々と吹っ切れた。吹っ切れた瞬間に「コウち
ゃん!」と大声で相手の名前を呼ばわる。ついでに抱きしめられた腕の中でもがいて見せると、琥一が煩わしそうな顔をして見せた。が、至近距離で美奈子と視線がぶつかると、数秒の間を取ってからバネのように身体が後方へと下がった。ら、ごん、とそれなりに鈍く大きな音が上がった。壁に頭をぶつけたらしい。
「だ、大丈夫…?」
「……つか、オマエ、なんで」
 痛みよりも混乱の方が勝っているらしい。
「あの、おばさんがコウちゃんが帰ってきてるっていうから、その、会いたくて」
 美奈子も美奈子でそれなりに混乱は継続中だ。さらっと自分が爆弾発言を言ってることには気が付かない。
「えっと、とりあえず朝ご飯作ってくるね!」
 何とかそれだけを言って、美奈子は琥一のベッドの上から逃げ出した。足音も騒がしく階段を駆け下りていき、誰もいないリビングに辿り着いたところでようやく息を吐き出した。ぜえはあと肩で息をして、未だ煩く鼓動を繰り返す心臓を落ち着かせるように胸の上に手を置く。ばくばくと手のひらから伝わる心臓の音に、美奈子は体中の体温が上昇していくのがわかる。抱きしめられた琥一の腕の感触と、彼の体温があまりにも生々しすぎて、まだ中学生の美奈子には色々と刺激が強すぎた。
「…どうしよう」
 言うその言葉はどこに掛かっているのか、美奈子自身にもよくわかっていなかった。


 嵐のように美奈子が去っていき、一人自室に取り残された琥一は険しい表情をしていた。ようやく冷静が追いついてきたのだが、それはそれで琥一を悩ませてもいた。それというのも美奈子が飛び出す直前、寝ぼけて抱きしめてしまったがゆえに若干乱れた服装を思い出して、下半身に違和感を覚えてしまったからだ。
「……くそッ」
 声に出して悪態を吐いて見るものの、意識してしまった生理現象は簡単に収まってはくれない。当然こんな状態で階下に降りていけるはずもなく、琥一は眉間に寄せたシワをますます深くすることになる。
「…あいつは妹だろうが」
 言う独り言が何の効果も効力もないことは、自分自身が一番よくわかっていた。

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