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イチジ九

すべからくどうしようもない日常のあれこれ。 ネタバレ盛り沢山ですので注意!

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親友新名小話

「カノジョハトモダチ」と被っているのは否定できないが書きたかったんだ…(´・ω・`)
しかし新名の「簡単だなアンタ」発言にはまじでひよった。なぜこうも黒さを秘めつつもへたれなんだ新名。
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 簡単だな、アンタ。言いくるめたら勝てそう。
 咄嗟に言った本音を冗談で誤魔化して、けれど新名の心中は穏やかではなかった。
(何言ってんだよオレは)
 内心で罵って、歯がみする。
 自分から「親友」というポジションに落ち着いておいて、そんなこと言う資格などありはしないのに。
 あの日告げられた彼女の「好きな人がいる」発言に動揺して、思わず「応援する」などと口走ってしまったときの自分が憎らしい。結局口先だけで、心の中では欠片も応援なんてしていないのだから。
 むしろ、しくじってくれればいいだなんてひどいことを願っていると、彼女が知ったらなんて言うだろう。
 ひどいと泣かれるだろうか。それとも怒るだろうか。ひょっとしたら呆れられるかもしれないと、様々な仮定を思い描く。けれどいっそのこと、そのどれでもいいから嫌われるべきなのかもしれない。嫌いだと告げられて自分の前から去ってくれれば、こんな風に悩むことはなくなるのだ。
 だってこうやって二人きりで出かけたりしたら、どうしたって期待してしまう。
 彼女が笑う度、自分の名前を呼ぶ度に心臓は素直に高く鳴る。無邪気に触れる指先を捕まえて引き寄せて、抱きしめたらどんな反応を返すだろうかと、想像してしまう。ひょっとしたら自分の気持ちに応えてくれるかも、なんて。一割にも満たない可能性にすがろうとする自分は滑稽以外の何ものでもない。
(それでも)
 頭ではわかってはいても、気持ちの方が拒絶する。親友でもいいから彼女の傍に居たくて、でも現状から逃げ出したいとも、思う。
 そんな相反する気持ちに振り回されてばかりで、思わず本音を零してしまうくらいには切羽詰まっている。
(……あーもう)
 毒づいて、けれどやっぱり答えは出せず、ため息だけが吐き出されるのであった。

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