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イチジ九

すべからくどうしようもない日常のあれこれ。 ネタバレ盛り沢山ですので注意!

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季節外れにもほどがある佐伯×デイジーネタ

「あかりさんって、好きな人いないの?」
 唐突に、友人の密はそんな話を切り出した。あかりの机を挟んで向かい合うようにして座る彼女は、すっかり食べ終わったお弁当をしまいながら、いつもと変わらぬおっとりとした口調で言う。そのあまりにもいつも通りすぎる口調に、あかりは何を言われているのかわからなかった。数秒の間を置いて、それでもどう反応していいのかわからずに「え?」とだけ切り返す。すると密はそんなあかりの反応がお気に召さなかったのか、きれいな眉をちょっとだけ吊り上げた。
「たまにはあかりさんからそういう話聞きたいなーって思ったんだけど」
「え、えっと、その、唐突だね?」
「そんなことないでしょ。だってもうすぐバレンタインだし」
 言う密の指摘に、あかりはようやく合点がいった。バレンタイン。昨今では男子が女子にチョコレートを贈ったりするようになったものの、それでも主役は女子に偏るイベントだ。ショッピングモールのテナントなど、バレンタイン戦争とばかりにさまざまなチョコレートが並べられている。
元々甘いものは大好きなので、色々な種類のチョコレートは眺めているだけでも楽しい。
 けれど、それを誰か――好きな人にあげるなど、考えてもみなかった。
 そもそも好きな人と言われても、イマイチぴんとくる相手がいない。なんとなく脳裏を過った相手は、好きな人というよりはケンカ友達だ。もしくはお父さんだ。仮にも「はね学のプリンス」をお父さん呼ばわりしてるなど、彼を慕う女子に聞かれたらなんて言われるかを想像して、思わず首を竦めた。けれどそのお父さんこと佐伯瑛は、プリンスと呼ばれるだけにモテているのは嫌というほど知っている。あかりからすれば、なぜ彼があんなにも人気があるのか理解出来ない。彼の容姿がかっこいいことは認めよう。しかしあの屈折した性格を思い出して、あかりは顔を顰めた。
「顔」
「あ」
 端的に指摘されて、あかりははっと我に返る。いけないいけない。つい日頃繰り出されるチョップへの恨みつらみまでも思い出してしまっていた。
 あかりは両手で頬を包むように触れて顔の表情を解そうところで、廊下から「佐伯くーん!」と複数の女子の声が上がった。咄嗟に反応してそちらを見やれば、ちょうど出入り口にいたらしい彼が女子に捕まったところだった。なんてことない見慣れた風景だというのに、なんとなく心の中にもやもやとした気持ちが広がっていく。
「……別に」
(わたしがあげなくても)
 後半の言葉は、心の中だけで呟く。自分があげなくても、他の子からもらえるのはすでに分かりきっている。それなら最初からあげなければ傷つくこともないと考えて、はたりと思考を止めた。傷つくってなに?
と自問自答しようとして、目の前に座る友人が何やら楽しそうに笑っていることに気がついた。
 密の表情に、あかりは居心地の悪さを感じて視線を逸らす。
「別に、わたしはバレンタインとかはいいかな! お父さんにあげるくらいだし!」
「ふーん」
「…なんですか」
「私はバレンタインに手作りするつもりんだけど、あかりさんも一緒に作らない?」
「今の流れでなんでそうなるの!」
「別に大したことじゃないでしょ? 作ったチョコレートは自分で食べたっていんだし。私と交換するっていうのもありよね」
 楽しそうに続ける密に、あかりはそれ以上二の句が言えなかった。おそらくこれ以上会話を続ければ、墓穴を掘るのは目に見えている。否、すでにもう掘っている気がしないでもないが、敢えてその一歩手前で踏みとどまってくれている友人に感謝しつつ、あかりはそそくさとお弁当を片づけ始めた。
 バレンタインまであと少し。
 密からの申し出を断る理由もなく、あかりは「お父さん」へのチョコレートをどうしようかと、ほんの少しだけ気持ちを弾ませたのだった。

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天使バンビの琉夏スチルが衝撃的だった

ようやく天使バンビの琉夏限定スチルを見たんですが、その衝撃に頭ぱーんして書きなぐったのにどうしてこうなった小話。
まだ天使バンビ琉夏スチル見てないよ!という方はまわれ右で!


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「いた」
 ひょいと覗きこんだ屋上の給水塔の裏。そこに我が物顔で呑気に眠る幼馴染を見つけて、美奈子は足音を忍ばせるでもなく彼の元へと歩み寄る。しかし相手はまったく起きる気配も見せずに、まるで猫のように眠ったままだ。美奈子は琉夏の傍にしゃがみ込むと、琉夏くん、と名前を呼ぶ。それでも琉夏は起きる様子はない。今度は彼の腕に触れて、揺すってみる。それでもやっぱり彼は目覚めることなく、すうすうと寝息を立てていた。
「……もう」
 困って、美奈子は眉を寄せる。ちらりと腕時計の時間を確かめれば、もうすぐ休み時間は終わってしまう。はやく起こさなければと思うものの、こうまでぐっすり眠っているところを起こすのは、なんだか罪悪感を覚えてしまうという理不尽さにヤキモキする。そういえばとここ最近のアルバイト先での琉夏を思い出す。いつもよりシフトが多めに入っていたし、時間も長く働いていたように思う。
 この間だって、と。
 先日理事長宅の薔薇園での出来事を思い出した。怪我をした指先は、絆創膏を貼るまでもないくらいに治っていた。けれど、あのときの琉夏の唇の感触も思い出してしまい、カッと頬に熱が集まる。美奈子は指先に触れて、あの時の琉夏の言葉が脳裏を過る。
「お姫様のキスで、カエルから王子に戻れるんだ」
 おどけたように、けれどどこか真剣に言う琉夏。
 冗談だとわかっているはずなのに、美奈子は琉夏の唇から目が離せなかった。薄く開いたその唇が、まるで誘っているように見えて、思わず顔を近づけていく。金色の髪が数本頬に掛かっていて、その様が妙に色っぽく見えた。美奈子はその髪を指先で払うと、そのまま耳に触れる。そうして軽く引っ張ると、その耳に向かって言葉を発した。
「起きなさい!」
 やや大きめな声でそう言うと、さすがの琉夏もびくりと身体を震えさせた。閉じていた目が開かれて、至近距離で目と目が合う。
「……ちゅーで起こしてくれるのかと思って期待したのに」
「しません。ほら、起きて」
「ちぇ」
 ぽん、と琉夏の腕を叩いて、美奈子は立ち上がる。くるりと背を向けたあと、自分の頬に触れて軽く引っ張ったあと、さきほどの、ほんの一瞬だけ湧きあがった衝動を消し去るように息を吐き出した。
(……わたし)
 どっどっど、と内心で早く鳴る心臓を落ち着かせるように胸に手を当てれば、背後で琉夏が起き上がる気配がした。
 ぽん、と頭に手が置かれて、
「ちゅーは残念だったけど、いいもの見れた」
「え?」
「白」
「…………えっ!?」
 琉夏の言葉の意味を理解するまでに数秒の時間を要し、けれどわかった途端、ばっとスカートの裾を抑えた。しかし相手はもう見た後で、さらばだ!
なんてわざとらしい言葉を残して逃げて行った。一人残された美奈子は顔を真っ赤にして、結局予鈴ぎりぎりまでそこにいたのだった。

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┌(┌ ^o^)┐ホモォ

友人とうっかり黒子のバスケで盛り上がってしまったので息抜きに黄黒小話。
HOMOとか久しぶりすぎて書き方忘れたレベル。そして毎回一発書きクオリティー。
R18要素はないけれどとりあえず┌(┌ ^o^)┐ホモォなので畳みます。
苦手な方は逃げてー!




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途中まで考えて挫折した瑛主

 羽ヶ崎学園の王子様こと佐伯瑛は、今日も今日とて女子に囲われていた。
 まるで絵に描いたような光景を目の当たりにして、あかりは嘆息を吐く。まったくどうして、あんな屈折王子が人気なのだろうと内心で呟けば、まるでそれが伝わったかのように、数メートル先にいる佐伯がこちらに視線を向けた。それは偶然でも何でもなく、意図的な視線であることにはすぐに気がついてしまい、あかりは改めて息を吐き出す。そうしてすうっと息を吸うと、「佐伯くん!」と大きな声で彼を呼ぶ。すると彼を取り巻く女子たちが一斉にこちらへと振り返った。その勢いに気おされそうになるも、あかりは小走りで彼に駆け寄っていく。
「さっき若王子先生が探してたよ」
「え、若王子先生が? そっか、ありがとう海野さん」
 にこりと佐伯は笑う。なんともわざとらしいやり取りにあかりの方は引きつった笑顔を返せば、佐伯は女生徒たちに適当な言葉を残して校舎の中へと消えていく。佐伯がいなくなればそこに留まる理由はないとばかりに、女生徒たちはあっという間に散り散りに去っていく。一人残されたあかりは三度目のため息を吐いた。と、制服のブレザーに入れておいた携帯電話が振動する。学校内なので音を消していたそれを見やれば、先出し人は佐伯からだった。ただ本文に「サンキュー、助かった」とだけ書かれた素っ気ない文章を見て、なんだか妙におかしくなってしまう。
「お礼はケーキでいいよ、お父さん…っと」
 カチカチと携帯電話のボタンを操作して、あかりはすぐにメールの返信を送る。すると少しの間をおいてメールマークが点灯した。差出人へやはり佐伯からで、「Re:Re:」と続いたタイトルの内容は「本格的にカピバラになってもしらないぞ」であった。
「もう、せっかく助けてあげたのに」
 携帯電話のディスプレイに向かってそう告げれば、怒りの顔文字を入力する。そうして送信ボタンを押そうとして、やめた。メール画面を破棄して、電話帳を開く。その中から佐伯瑛の番号を呼び出し、電話を掛ける。


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さーてこれからどうしようと悩んで悩んで思いつかなくて投げるという体たらく(´・ω・`)

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天童と1主が同じ学校​だったらシリーズ

1主が保健委員とかだったら後々俺得っていう設定。
というか、高校のときって委員会とかあったっけ・・・ラブプラスで図書委員とかあったからそういう方向性にしておこう。

【出会い編】

 廊下を走ってはいけませんのポスターを横目に、美奈子は足早に廊下を進んでいく。うっかり図書室から借りた本の貸し出し期間を間違えていたため、図書委員より返却の催促を受けてしまったのだ。
 しかもよりにもよって昼休みは担任の手伝いで潰れ、放課後は彼女の所属する保健委員会の会議でだいぶ遅くなってしまった。
 美奈子は腕時計で時間を確認して、ようやくたどり着いた図書室の前で息を呼吸を整える。ドアをスライドさせて開けば、中はしん、と静まり返っていた。とっくに下校時間も過ぎていることだし、当然といえば当然。美奈子は手近な椅子に腰かけると、鞄からペンケースを取り出して本の裏に挟まれた図書カードに返却日を記入する。そうして返却のカゴへと本を入れようと席を立とうとしたところで、がたん、と奥で物音がした。
 突然のことに驚いた美奈子はびくっと身体を震わせて、物音がした方へと視線を向ける。しかしそれ以降物音がしないことが逆に不気味で、図書室の奥へと足を向けた。足音を忍ばせながら、一つひとつの棚に視線を巡らせる。そうして、一番奥の手前の場所に、物音の原因を見つけた。窓際に図書室のものであろう椅子が置かれ、それに座ってうとうとと寝入っている男子生徒がいた。
 目立つ金色に染められた髪の彼を、美奈子は知っていた。
 羽ヶ崎学園に入学した当時、遠くで教師と揉めている姿を見かけたことがある。そうしてたまたま中学時代の彼を知っているというクラスメイトが、あれこれと教えてくれたのだ。
(名前は…天童、壬)
 高校生活が始まって一カ月が過ぎた今では、最初の頃よりも有名になっていた。それはやっぱり良い方ではなく、悪い意味で。遠くで天童の姿を見たことはあったが、こうして間近で見るのは初めてだ。
「あの、天童くん?」
 多少躊躇いはあるものの、このままここで眠らせてはいけないと、美奈子は天童の肩を揺すった。見回りの教師か警備員が見つけてくれるとは思うけれど、万が一こんなところに閉じ込められては大変だ。美奈子は遠慮がちに声を掛けると、閉じられた瞼の縁が震えた。そうして薄く目が開いて、数回瞬きをする。
「……あ?」
 寝ぼけて掠れた声を発して、天童は頭を掻きながら周囲を見渡す。一度大きくあくびをすると、目の前の美奈子を確認して僅かに首を傾げた。
「えっと…?」
「もう放課後だから、帰らないと」
「げっ、まじで!?」
 がたん! と勢いよく天童は立ち上がると、制服のポケットに入れておいたらしい携帯電話を取りだした。そうして改めて時間を確認して、またもや「うげ」と呟く。彼は慌ててかけ出そうとして、けれどふいにその動きを止める。美奈子へと振り返り、言う。
「俺、天童壬。あんたは?」
「え? …こ、小波美奈子ですけど」
「小波サンな。起こしてくれてサンキュ! じゃあな」
「う、うん」
 ひらりと手を振りあっという間に去っていく彼を見送り、美奈子は暫く呆然とそこに立ちつくした。
 カキィンと野球部がボールを打つ音で、はっと我に帰る。自分もはやく本を返却して帰らなければ。
 美奈子は借りていた本を返却用のカゴに本を入れた。そうして鞄を肩に掛けて、廊下に出る。自分以外には誰の姿もない廊下を見つめながら、先ほどの天童とのやり取りを思い出す。
(……意外と悪い人じゃない、かも?)
 そんなことを、美奈子は胸中で独りごちた。

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